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詐欺師レイ、異世界を騙し尽くす  作者: やしゅまる


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第12章 死人に口あり

終焉の谷――この国では、霊媒師が死者の声を聴く。

 そして裁きは、“過去に何をしたか”ではなく、“死者が何を語るか”によって決まる。


 「生者は嘘をつく。だが、死者は真実しか語らない」


 この国の女王であり大霊媒、《黄泉の王女》エリュ・ノアはそう語った。


 「それなら安心ですね」

 レイは平然と微笑む。「僕には、死者に知られて困ることなどありませんから」


 「……そうかしら? 死者の声は、あなたの“本当の名前”も、“過去の罪”も明らかにするわ」


 エリュが指を鳴らすと、白装束の巫女が現れ、水晶をかざした。


 ──現れたのは、レイの前世。

 現代の日本で詐欺を繰り返し、最期には死刑となった“佐久間零さくま・れい”の記録だった。


 裁判記録、取り調べ、涙する被害者たち。


 エリュは言った。「さあ、過去の自分に問うてみなさい。あなたは、救われるべき者なのかと」



 水晶の中から、少年が現れた。レイのかつての被害者。

 彼は言った。


 『あんたは最低だ。家族を、人生を、金を全部壊した。謝っても戻らない。

 でも……だから、俺は変わった。あんたが俺を底に落としたから、俺は這い上がった。

 だから、あんたが今も“人を欺いて”何かを変えてるって聞いて――正直、嬉しいとも思ったよ』


 エリュが驚く。


 「これは……赦しか?」


 レイは静かに言う。「違います。これは“利用”です。

 人は、どんな悲劇にも意味を見出そうとする。だから僕は、その感情すら騙す」


 「なんて人……!」


 「でも、それが希望になるなら――“嘘でも、本物”でしょう?」


 死者の声を“真実”と信じるこの国で、レイはその“真実”すら言葉で凌駕した。

 エリュは膝をつき、そして頭を垂れる。


 「敗北を認めます。あなたの嘘は、死すら欺いた」



 レイは谷を去りながら、そっと独り言を呟く。


 「生者も、死者も、“信じたがる”から騙される。

 だから僕は……これからも、世界を騙し続けよう。

 たとえ最後に自分自身すら欺くことになっても」


 彼の歩みは、誰も知らぬ“第七の国”へと向かう。


 そこは、国家なき世界。詐欺も信仰も契約も通じぬ、“混沌”そのもの。


 だが、レイは笑っていた。


 「混沌? 最高じゃないか。“概念”すら騙せる、理想の舞台だ」

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