27話 ベール
PSOW 地下基地
一台の輸送車が、轟音をあげ地下駐車場に到着する。
中から、森村楓、宮里地紋が飛び降りる。
周りから、スタッフが近寄る。
「やりましたね!〝GBD〟は成功ですね!」と話しかける。
森村楓は、感情を剥き出しにして、「どこが成功?〝L〟はどうだって良いって言うこと!」と捨て台詞を吐いて、自らのバイクへ向かい、ヘルメットを被る。
宮里地紋〝E〟は、慌てて楓の側により、腕を掴む。
「楓ちゃん?気持ちは分かるが、あの〝少女〟ただもんじゃない!〝L〟も取り返したいのは、俺も同じだ、でも今じゃない‥」と肩を優しく掴んだ。
楓は、ヘルメットのまま、バイクに崩れ、嗚咽を漏らし泣いた。
「だって〝L〟が‥匠さんが‥」
地下、医療施設
ベッドに三条聖は、点滴を打たれて寝ていた。
そばに〝M〟がいる。
〝アトハ、カレシダイ〟
Mは、いつかの白水のメッセージを思い出していた。
「聖‥長かったね‥私ね‥」そこまで話すと、聖はパッと瞳を開き、Mの腕を掴む!
その瞳は、赤く染まり、顔は引き攣っている。
「聖!私よ!分かる⁈」と両手で聖の手を握る!
その手は徐々に黒く染まる!
ベッドも黒く染まり始め、今にも崩れ落ちそうになる。
4年前 静岡 海岸沿いの教会
沢山の人に新婦が囲まれている。
そこには、笑顔で満ち溢れた空間があり、皆、微笑んでいる。
そこに、一台のタクシーが到着する。
白のタキシードに身を包んだ三条聖は、慌てた様子で階段を上がり、人混みをかき分ける。
ようやく、ウエディングドレスを纏った新婦にたどりつく。
「お待たせ!ごめんよ!」と聖は、話しかける。
新婦は、「いつの〝お待たせ〟?今までの?それとも今日の?」とベールを自ら持ち上げる。
聖は、「両方だな、ごめんよ美里、いや、三条美里だな今日から!」と美里を見つめる。
聖は、ベールに包まれた美里と今自ら〝破壊〟している美里が重なる。
美里は涙を流して、「貴方の好きにして‥」と両手はすでに黒く染まっている。
ベッドに横たわる聖は咄嗟に手を離した。