17話 ジンソーダ
聖の前に建っているBARは平屋であった。
〝こんなBARあったかな?〟
そのBARのステンドグラスから溢れる光は、妖しさを帯び、聖を呼んでいるかのようであった。
聖は、扉の取手に手を掛けた。
〝後戻りはできない〟
そんな声が、心の中で響く。
聖が中に入ると、BARには、5.6人座れるカウターとテーブル席が二つあった。
おもむろに、カウターに座る。
背中を向けていた女性のバーテンダーが、振り向く。
聖は、その瞬間息を飲む。
〝美里〟
バーテンダーは、「いらっしゃいませ、何にいたします?」と聖に聞く。
聖は、「ああ、ジンソーダを、あの何処かでお会いしませんでしたか?」と注文と同時に恐る恐る聞いた。
「よくある顔ですから、平凡な‥」そう言って、ジンソーダを出した。
聖は、「そうですか‥人違いですね」とジンソーダに手をつけた。
「何かお困り事でもおありかしら‥」
暫くして、バーテンダーは聖に問いかける。
「ああ、何か、自分の記憶に自信がなくて‥夢の中を生きているような‥」
バーテンダーは、その答えに黙って下を向く。
聖は、ジンソーダをもう一杯頼んだ。
バーテンダーは、「はい、ジンソーダと〝貴方の記憶〟」
とジンソーダといつぞやの聖の首から、取れた〝ルビー〟の様な石を出した!
聖は「これは‥」とその〝石〟を手に取り、まじまじと見る。
〝それは、貴方の記憶と能力をコピーした石〟
バーテンダーは、「如何?お客様、その石は、途方もない〝能力〟が手に入りますよ、世界を自らの手の内に入れられるような、全ての欲望を満たす事が出来ると思いますよ‥」そう言って、聖を見つめた。
聖は、「能力?記憶?」と石をカウターに置く。
バーテンダーは、「どうされます?飲み込みますか?それとも炙りますか?それとも
飾っておきますか?凄い能力ですよ」と聖を見つめる。
聖は〝ルビー〟を見つめて考えた。