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7日目 リベンジ①

 ◆


 視界が暗転し、意識が無限に広がる暗黒の中へと霧散していく。パルワールドに於いて死とは一種の状態異常に過ぎないが、死なずに済むなら死にたくはない……というのが男の思いであった。


 そしてパルワールドではないどこかの世界で男は恋人と数日間デートをし、英気を養い──……ふたたび戻ってくる。


 ──奴はタフすぎる。もう少しまともな武器が必要だな


 男はそんな事を思って古びた弓をその場に投げ捨て、三連弓の開発に取り掛かる。


 この弓は一度の射撃で三本もの矢を放ち、しかし消耗は一本だけで済むという魔法の弓だ。威力は単純にこれまでの三倍。


 拠点の猫に弓を作らせ、自身は周辺で木を伐採したり、あるいは採掘をしたりして資源の貯め込む。


 木を一本切り倒す毎に、岩を一つブチ砕く毎に男の肉体に経験値が刻まれていく。


 日常の何気ない作業一つからでも学びはある。


 そんな日々を積み重ねる事で、より強くなれる。


 より良い結果とは日々の積み重ねの結実だ。


 何でもそう、パルワールドでも男女関係でもそうである。


 男はふとパルワールドではないどこかの世界の記憶を思い起こした


 ──付き合って、来月で3年。交際期間を含めれば5年超か


 男の脳裏に結婚の二文字がチラつき、煙草の本数をもう少し減らすことを決意した。


 ──禁煙は難しいかもしれないが、なに、いざとなったらケーキでも買って機嫌を取ればいい……


 ◆


 ややあって猫から三連弓が完成したと報告が上がり、男はその見事な出来栄えに破顔した。


 試しに拠点周辺をお散歩している羊を射殺。


 矢はあやまたず羊の正中線──……額、口内、胴体を射貫き、かわいい羊は断末魔を挙げる暇もなく息絶えた。


「素晴らしい威力だ!」


 男は喝采し、しかしそれでも一抹の不安が消えない。


 チュートリアルボスのタフさ、パルワールドに於ける体力回復手段の乏しさを考えると、もう一手欲しい所ではあった。


 そこで男が目を付けたのはネムラムの首輪だ。


 ネムラムは主に夜出現するパルだ。全体的に暗い色合いで、背に流した紫色のもこもことした髪の毛が良い。何が良いかって、もこ髪の裏がきらきらと、まるで夜空の様に輝いているのだ。


 この可愛らしくもミステリアスなパルに、専用の首輪をつける。


 するとどうなるかといえば、常に傍に控えるようになり、こちらの攻撃と連動して手助けをしてくれるのである。


 通常手持ちパルはボールから出さないといっしょに戦ってくれないのだが、ネムラムの首輪があればボールから出さないでもいっしょに戦ってくれる。


 そして男は暫し奮闘し……


 なんと、ネムラム隊4体を編成する事に成功した。


 ボールからクルリスを出し、控えのネムラム4体は首輪の効果で常に召喚されている状態。


 いっそ5体全部ネムラムでいいんじゃないかという思いもあったのだが、クルリス・リコイルの火力と、なによりもクルリスの可愛らしさを考えるとやはりこの形がベストであろう。


 男は必勝を確信し、ふたたびレイン密猟団の本拠地へと向かった。2対2では勝てなかった。ならば6対2ならばどうか?


 答えはすぐに出るだろう。


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