表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

6日目 チュートリアルボス②

 クルリスが跳躍し、男の頭の上に乗る。


 そしてどこから取り出してきたのか、サブマシンガンを構えてエレパンダに狙いをつけた。


 クルリスには小学校低学年程度の知能があるため、銃器を扱う事も可能だ。


 かつてカンボジアに存在していた悪名高い武装組織、クメール・ルージュの少年兵の最低年齢はなんと5歳だったと言うではないか。


 しかしクメール・ルージュの少年兵とクルリスとの間には大きな差異がある。


 それは殺意のクオリティである。


 汚い大人たちのクソの様な意図で作り上げられた歪な殺意ではなく、生来有する「モンスター」としての殺戮本能がクルリスには備わっているのだ。


 男が弓を構え、放つ。


 同時にクルリスがサブマシンガンのトリガーを引いた。


 たちまち宙空に目くるめく銃花が咲き乱れ、エレパンダは僅かにたじろいだ様子を見せた。


 そして男が放った矢は一直線にゾーイに向かっている。


 男はエレパンダをどうこうしようと言うよりは、ハナからゾーイを殺すつもりだったのだ。


 なぜならば "チュートリアルクエストの内容はレイン密猟団のボスを倒せ" である。


 そのボスはゾーイだ。


 エレパンダではない。


 そしてエレパンダは巨躯を誇る強力なパルモンだが、ゾーイは少なくとも外見上はただのメスガキだ。


 殺しやすいのはどちらかなど考えるまでもなかった。


 だがゾーイも命のやり取りは初めてではないようで、すかさずエレパンダの頭部を叩く。


 するとエレパンダの両眼が大きく見開かれ、ばちりと音がするやいなや全身から瞬間的に放電した。


 生臭いような、酸っぱいような、そんな匂いが漂う。


 俗に言う空気が焦げる匂いというやつだ。


 空気中に含まれる匂いの元が、放電現象によって酸素と反応し、悪臭を放っているのである。


 男は舌打ちし、チュートリアルボスにそんな技を持たせるんじゃねえよと毒づいた。


 雷の技を操るボスなんていうのは、もう少しゲームが進んでから出てくるものだろうという思いが男にはある。


 今度はゾーイ&エレパンダのターンだった。


 エレパンダがやや前傾姿勢気味に構えた。


 モンハンによって鍛えられている男はその構えが突進の事前行動であると瞬時に悟り、真横へ転がり込むようにして回避を打つ。


 瞬間、エレパンダは男の予想通りに先程まで男が居た場所へ飛び掛かって、更に電気を纏った爪で引き裂いてきた。


 突撃と斬撃と雷撃を一度にやってくる荒業に、男は自身の背に氷柱を挿しこまれたかのような思いを覚える。


 だが大きな攻撃の後には大きな隙が出来るものだ。


 男は反撃を加えるべく、弓に矢を番えたが……


 エレパンダの攻撃はまだ終わってはいなかった。


 向きを変え、ふたたび男に飛び掛かる。


 突進を受けた男は全身を大ハンマーで打ったたかれたかのような衝撃を受け、更に続く電爪の斬撃も受けてしまった。


 激痛が男を襲うが、しかし男の目に恐怖の色はない。


 というかこの世界では死んだってすぐ生き返れるのだから、死の恐怖なんてものは存在しないのだ。


 男は歯を食いしばって今度こそは反撃を、と弓を構えようとするが……


 なんと、エレパンダの攻撃はまだまだ終わっていなかったのだ。


 エレパンダは両腕を掲げ、勢いよく爪を床に突き刺す。


 すると床がぱり、ぱり、と音を立てるではないか。


 そして次の瞬間、男の意識は暗転した。


 死んだのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ルビコンニアンヘリとどっちが厄介かな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ