5日目 チュートリアルボス①
レイン密猟団なる不逞の輩の根拠地を発見すべく、探索する事暫し。
男は道中でペンギンと猫を何匹か捕獲し、ついに天に伸びるいかにも怪しげな塔を発見した。
メカニカルで近代的なデザインのそれを見た男は、自身が担ぐ古びた弓をちらと見て彼我の技術格差を感じる。
──銃の一丁や二丁くらいはもっていそうだな
男はそんな事を考えたが、恐れはない。
チュートリアルボスという性質上、めちゃな強さではない筈だと考えていたからだ。
さらに男には秘策があった。
クルリスだ。
リコリス・リコイルをパク……オマージュしたその技は力感に満ちている。
それに他にも四匹の頼れるパルたちもいる。
ペンギン
ヒギツネ
猫
ゾウ
ゾウは鼻から水をぶっかけてきて体力を回復してくれる特技を持つ。
ヒギツネは純アタッカーだ。
尻尾から狐火を放って敵を焼き殺すのだ。
ちなみにこの狐は拠点内の火気管理責任者でもある。
消えている設置型松明などがあれば走り寄り、点火してくれるのだ。
パルワールドの暗く、そして寒い夜を乗り越える為には明かりはどうしても必要で、その為にこまごまとした拠点内照明の点火を担ってくれるヒギツネは得難い存在だった。
§
男は塔の入口を眼光鋭く睨みつけ、臆すことなく扉を押し開く。
内部はそれなりにひらけた空間だったがしかし、それでも狭く感じる程の強烈な圧迫感が男を襲った。
プレッシャーである。
見れば視線の先にはピカチュ……ではなく、どこか既視感のある巨躯が立っていた。
恐るべき怪物、エレパンダだ。
まずデカい。
グランモスと同じくらい大きいのではないだろうか。
そしてその悪たれた目つきから放たれる視線の鋭さよ!
まるで濡れた妖刀の様の様に男の精神を斬り刻んでくるではないか。
だが何よりも恐るべきは、エレパンダにもパートナーが居た事である。
心を交わしたパートナーとの共闘は、孤闘のそれとは比較にならない戦闘力を叩き出す。
──血を流す量が増えそうだ
男はクールにそう思い、エレパンダの肩に立つ背に乗る小さな人影──……レイン密猟団のボスである「ゾーイ」を睨みつけた。
小生意気な目つきとピンクとプラックのツインテールが特徴的なメスガキで、挑発的な笑みを浮かべて男を見ている。
その如何にも人生を舐めたようなツラが男の癪に障った。
「人生を舐めるなよ、俺のマラを舐めてろ」
──様子を見る為に攻撃を手控えるのは腰抜けのやることだ。俺は初手から殺りにいくぜ
男はそんな事を考え、クルリスにジョイント指示を飛ばした。