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4 適材適所の人事決定

 翌日。

 私は司令から呼び出しを受けていた。


「異常生物・奈月一夏との交渉が完了した。我が組織の一員となる事に同意を得られた」

「それはよかったですね」


 嫌な予感がする。


「ただし彼女から条件を突きつけられてな」

「はあ」

「貴官の部隊以外での配属を認めないそうだ」

「…その主張を私が認めません」

「彼女の能力はより攻性の部隊にこそ必要だと私も考えているが、それが条件なのであれば仕方あるまい」

「…」

「異常生物・奈月一夏の扱いを貴官の部隊に一任する。早急に戦力化し更なる組織への貢献を期待する。以上だ」


 司令は私のおざなりな敬礼に文句を言う事は無かったが、思い出したかのようにこちらを呼び止める。


「忘れていた。これは米軍側からの抗議文なのだが…。新人の腕前は確かな物のようだな」

 

 司令が手渡した資料をチラ見して、私はそれに頷く。

 

「やはり今回の人事は間違いではなかったという事だ」

「…」


 司令のしたり顔に嫌気が差し私は無言で退出した。


「はぁ…」


 ため息交じりに司令室から退出した私をジュピターが出迎えた。


「いかがなさいましたか?」

「奈月さんが私の部隊に配属となりました。貴女の同期ですね」

「やはり彼女はそれを条件にしましたか…」

「ジュピターに随分懐いていましたものね」


 本部施設に到着後も奈月一夏はジュピターから離れようとしなかった。

 頭部から3本の角が生えている以外は目鼻立ちが整った年頃の少女が、同じく目鼻立ちが整った年頃の少女にぴったりくっつく様は、大層微笑ましいものであった。


「冗談じゃありません…理由を聞いても『味方だから』以外答えようとしませんし…」

「仲が良いのは大変結構な事ですね」

「…隊長、他人事だと思っていませんか?」


 ジュピターの質問に答える事無く、司令から受け取った資料をジュピターに見せる。


「米軍の妨害に関する抗議文ですか?」

「それはどうでも良いので、損害欄を見てください」

 

 その箇所を指差してジュピターに示す。

 

「軽症者が4名…。重症者、死者は0名…ですか」

「私は無制限発砲を許可しましたが、敢えて死者を出そうとしませんでしたね」

「…申し訳ありません。人を撃つ事に躊躇してしまいました…」


 ジュピターは俯く。


「…私は部隊から外されてしまうのでしょうか?」

「無用な殺生を避けられるのならばそれに越したことはないと私はいいましたよ。私達の仕事は殺すことではありません」

「…」

「異常生物を尋問し、あわよくばこちらに引き込む事が目的です。初出動にしてそれを見事達成するとは、ジュピターは偉いですね」


 彼女の肩をぽんぽんと叩く。

 ジュピターの顔が徐々に明るくなっていくのを確認し、穂波が待つ部隊待機所へと足を向ける。


「その功績を認め、ジュピターには奈月さんの指導役を命じます。大任ですね」

「え…?」


 高笑いして早歩きする私を、ジュピターが急いで追いかけてくる。


「隊長!私には荷が重いです!」

「良い人材が二人もきてくれて私も鼻が高いです!」


 ジュピターの抗議を背中に受けながら、私は今後の部隊について考えた。

 穂波だけでも騒がしいと思っていたが、これから随分と賑やかになりそうだ。


「何すか!私も混ぜてくださいよ!」


 部隊待機所で待つ穂波が、楽しい気配を察してこちらに駆け寄ってくるのであった。

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