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留年の話を話題にあげて今日の病院を拒否した時に姉ちゃんは自業自得だと俺の言い訳を切って捨て、学校に行く事を頑なに禁止した。


病院が終わってからの登校もやめ、休んで家で安静にしてるように言われた。


親父が今日学校に乗り込むというのなら当事者の俺が居た方が話も早いし、病院に行かせるにしても事情聴取だけでもしておけば、スムーズに事が進むだろう。


それにも関わらず姉ちゃんは何も明かさなかった。

俺と親父が会うと姉ちゃんに取って何か不都合なことがあるのか?


だとしたら姉ちゃんの心配はなんだろ。そういえば昨日親父と口論になっていたな。


実家に戻って来いとでも言われた?だから姉ちゃんは親父が俺を懐柔する事を心配して会わせないようにしている……それなら話は通るが、俺に隠しておく理由もない。


帰らない、帰れない明確な理由もある。

姉ちゃんはこっちで仕事をしてるから実家から通うには少し距離がある。

俺も姉ちゃんを1人にするくらいならここに残る、麗奈との約束もあるから尚更実家に帰る訳には行かない。


それに自分で追い出しておいて、おいそれと帰ってこいなんて言い出したら殴るまである。

16年、姉ちゃんにとっては23年。親父に見向きもされなかったんだ。

それが昨日突然現れて愛してる。って言われたところで、全てを水に流しはしない。姉ちゃんを苦しめたのは現実の話だから。


親父が誠心誠意、熱い鉄板の上で姉ちゃんに土下座して、姉ちゃんが許すなら帰ることを検討しなくもねえけど。


まあ、そんなくだらない事だったら1人で抱え込むことも無く、姉ちゃんは真っ先に俺に相談してくるだろう。


親父と俺に話をさせないのは単純に親父が嫌いなのかも知れないし、もっと他の理由があってそうしているのかも知れない。

もしくは天然な姉ちゃんの事だから俺の深読みが過ぎたか。


なんにせよ、親父か姉ちゃんと話をしてみないと何もわかんねえ。


実の姉を疑うのは良くない。俺は姉ちゃんを信じて姉ちゃんが何か言って来るのを待とう。

それで姉ちゃんが何か抱え込んでいて悩んでいるのだとしたら俺は死力を尽くす。


もし姉ちゃんが親父のことが嫌いで俺と親父を引き合せるのが嫌なら俺は親父と二度と会わなくてもいい。

親父だって姉ちゃんと俺を本当に愛しているなら姉ちゃんの意思を尊重するだろう。



ソファーから立ち上がりキッチンへと移動すると戸棚を開けた。

「麗奈ー、ココアの粉が無くなってるから買いに行こうぜ」

ソファーで静かに本を読んでいた麗奈に声をかける。


買い物か?買い物なんだな?と言いたげに、読んでいた本を閉じた麗奈は俺の方を向くと、首をコクコクと縦に振った。


ついでに晩飯の買い出しも済ませて今日は晩飯にもよりをかけて姉ちゃんの疲れを少しでも癒すとしよう。


『悠太、何か悩んでる?』

ダイニングのカウンター越しに俺の顔を見た麗奈は、スマホに書いた文章を俺に見せた。

「いんや、大したことじゃないよ。少し姉ちゃんのことを考えてただけ」


少し誤魔化した後、素直に話したのは麗奈の見解も聞いて見たくなったからだ。


『あからさまだったよね。菜月、なんていうか悠太とお父さんを会わせたくなさそうだね』

「……やっぱ麗奈もそう思うか。ただ姉ちゃんが親父の事を嫌ってるだけならいいんだけどな」

『菜月がお父さんのこと嫌いなら今日も一緒には行かないと思うんだよね(;´・ω・)』

姉ちゃんには嫌いな人間はいない。性格が良すぎて人を嫌いになれないんだ。

だから表現するとしたら苦手な人。苦手な人とは話せなくなる節があるから麗奈の言うことも一理ある。


「本当に親父のことが苦手なら昨日の時点で言い合いにもならなそうだもんな」


何で言い合ってたから知らねえけどあの言い合いからは姉ちゃんの意志を感じた。俺を連れて家を出るって親父に啖呵を切った時みたいに強い意志を。


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