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深夜だ。秒針の刻む音と皆がスヤスヤと寝息を立てる音のみが俺の耳に届いている。

体はとっくに疲労で限界を迎えているが、俺の目は冴えていた。


抵抗を続けた時に受けた攻撃のせいだろう、痣になった所がジンジンと痛みやがる。


骨が折れてる訳でも無ければ内蔵に深刻なダメージをおったわけでもない。医療関係にそれほど詳しくない素人目で見てもこれはただの打撲だ。


だが、念の為。と怒れる姉ちゃんは言い放ち、明日は学校を休んで病院に行け。と言う命令を俺に下した。

おかげで明日は朝から病院へと向かうことになった。

勿論、お目付け役に任命されたのは麗奈。留年が確定している麗奈はむしろその役を買って出た。

姉ちゃんが俺を心配するのもよく分かる。


俺はあと1日でも休めば留年が確定してるから出来れば休みたくない。

だから病院へ行くのは学校が終わってからにしたい。と姉ちゃんに懇願するも俺の願いは聞き入れられることは無く、姉ちゃんは自業自得だと切り捨てた。


「……はぁ」

あくびに近い溜息が漏れた。


今日会った親父が本物なら、俺が留年したところで文句は言わないだろう。


なんていうか。俺や姉ちゃんの事など見向きもしなかったあの親父が、心の奥底ではあんなに家族のことを考えてるなんて思っても見なかったな。


幼少期に見ていた親父は、唯を庇って俺が事故に会って昏睡状態にだった時に俺の脳が勝手に厳格で冷酷な記憶に脳が勝手に記憶を作り替えたのかってくらい、親父の印象は違った。


あの親父となら少しは仲良く出来るかもしれない。

過保護すぎるのは嫌だけど。

「……ふっ」

母さんの事を灯ちゃんと呼びながらご機嫌で帰ってく親父の顔を思い出したら、1人で思い出し笑いをしてしまった。


「眠れねえな……」


体を起こした。隣では麗奈と唯が寝ている。その奥では姉ちゃんも。

麗奈の髪を軽く撫で、ベッドから立ち上がった。

トイレに行くためだ。


3人を起こさないようにそっと部屋の扉を開けて廊下に出た。廊下の照明をつける。

眩しいな。暗いところから明かりのあるとこに来ると目が眩む……。


トイレを済ませた俺は、眠れない夜を少しでも快適に過ごそうとしてリビングへと降りた。

どうせ学校も休むんだ、無理やり寝なくてもいいだろ。


リビングを素通りし、キッチンの照明をつけて、麗奈と姉ちゃんにいつも作ってやるように、ホットココアを作った。


「あっちっ」

湯気の立つそれを口に運ぶと舌を火傷しそうなくらい熱かった。

少し冷まさないとこのままじゃ飲めねえな。

のそりのそりとリビングへと歩きテーブルにホットココアを置くと、俺はソファーに横になった。


テレビをつけようと手を伸ばしたが、気が乗らなくてやめた。


静かな部屋でたまには1人になるのも悪くない。特にここ最近は慌ただしくて時間の流れが早かった気がする。

まぁ、これで内藤の件も片付いた。こんな馬鹿げた事件もこれっきりだろ。

むしろこれ以上大きな事件が起きられても困る。今回の件も振り返れば振り返るほど俺の手には余る。大手企業の社長を相手取り、命のやり取りすら生まれそうな程の修羅場。

焼肉屋の1件から始まり、偶然にも神田さんと出会った。

親父に協力を煽ったけど、まさか失敗してこっちが痛い目に合うなんて思わないよな。

姉ちゃんの事を掘り返されたのはキツかった。トラウマは再発するし。


でも、涼夏や唯達が居たから何とか持ち直して戦えた。


俺が1人だったら潰れてたかもしれない。底知れぬ恐怖が湧いてきて俺は肩を抱いた。

もう少しで1人に、なりそうだったんだよな……。


もし麗奈と俺を誘拐しようとした実行犯が、あのおっさんじゃなかったら……。

もし内藤の部下がお粗末なお飾りのボディーガードではなく屈強な肉体で訓練を受けた連中だったら。

俺の身体検査をしなかったのも、運が良かった。






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