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その奥では、姉ちゃんと親父が口論をしていて、雪兄と蓮さんがそれを宥めている。


「悠太くーん」

始めに気がついた沙織さんが声を上げた。

呼ばれた方へ歩きだそうとすると、親父と姉ちゃんの首がぶんとこちらを向き、同時に駆け寄ってきた。


なんだなんだ?そんな怖い顔で俺を見るなよ。何か悪いことした気になっちゃうだろ。心当たりしかねえよ。

「悠太ちょっと聞いてよ!!お父さんが!!!」「悠太聞いてくれ菜月が!!」


ガっと俺の肩を掴んでを声が張り上げた2人の後ろでは、沙織さんの目尻が上がりだしている。

怒りゲージ80%と言ったところだろうか。


「……親子喧嘩は後にしろよ」


あれ?夏なのにやけに肌寒く感じるような。そう思わせるほど、低い声だ。声の主は沙織さん。

聞こえたのは多分伏見さんとおっさん連中……と俺。


原因の2人は俺に声を掛けたにも関わらず2人でどちらが先に話すか、を巡り言い合いを始めた。

うん、放っておこう。沙織さんの話を聞くのが先決だ。


「沙織さんごめんな。俺の……お、親が」

言いなれない言葉だ。どうしても恥ずかしさが先行してしまう。


「未来のお父様ですから〜余り手荒な事はしたくないのですけどね〜。次邪魔されたら。いいですか〜?」


肘を前に伸ばし、人差し指と親指を伸ばし、手でピストルを作るとクイッと上にあげた。


沙織さんがそれをやると本気で親父の額に風穴が空きそうで、冗談に聞こえないんだよな……。

親父を心配してる訳じゃない、沙織さんが捕まるのが嫌なだけだ。


「駄目っすよ。あれを殺して沙織さんがお勤めするのは心が痛い」

「あら〜、お父様より私の心配をしてくれるんですか〜」


そりゃー戦友と言っても過言じゃない沙織さんと、今日急にツンデレをかましてきた親父じゃあ沙織さんが勝つに決まってる。

それよりも、人の優先順位で喜ぶほど沙織さんって乙女だったんだな、機嫌が戻ったようで安心だ。


「沙織さんが居なくなったら……寂しいからな」


姉ちゃんや、麗奈やみんなが。

「んふふ〜悠太くんは良い子ですねえ〜。ほんと、食べちゃいたくなります」


危険な雰囲気を感じた俺は1歩下がった。

二言目が無ければおっとりした優しいお姉さんなのに、何故こうも二言目でいつもぶち壊すのか。


「俺は食いもんじゃねえよ……んで、こいつらはどうするんだ?」


こいつら、と言っても俺が気になってるのは内藤と、紳士だったおっさんだけ。後は前回同様ベーリング海で蟹取りをしてもらおうがどうでもいい。


「それがですね〜まだ決まってないんですよ〜部下の方達にはベーリング海のツアーをプレゼントしようと思ったのですがね……」


そこで一旦言葉を切った沙織さんは続きを言いにくそうに目を伏せた。


「悠太の兄貴、こいつら内藤のお零れにあやかって美代子さんや他の女性を集団で辱めてた最低のクソ野郎で、お嬢も処分に困っていたところなんですよ」


沙織さんの言葉を待っていると、伏見さんが説明してくれた。

なるほどなるほど、通りで沙織さんが口を閉ざすわけだ。同じ女性としては拒否反応が出る話しだもんな。


そんな集団がいる会社へ、俺の変わりに謝罪へ出向いてくれた沙織さん。


よく、そんな所へ謝罪に出向いて無事に帰ってこれた。と思ってもいるのだろう。

金を積んで事なきを得たとは言え、1歩間違えば沙織さんも同じ目に合ってたかもしれない。

じゃあ、こいつらがやる事は1個しかないよな。


「もういいや。おっさん以外お前ら全員切腹しろよ。な?スパッと。腹切って詫びろ。それで許される訳じゃねえけど、生かして置く必要もないだろ。伏見さん、短刀持ってないっすか?」


あまりにも淡々と俺から告げられた自らの処遇を聞いた内藤含め部下一同。










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