79頁
「馬鹿親父……馬鹿だあんたは!不器用にも程があんだろ!ばーか!!」
今なら親父の素直な気持ちを聞ける気がした。
だから俺も思いを素直にぶつける。
俺が素直にならなければ、もう二度と分かり合えない。そんな気がした。
「うるさい!お前こそ素直に甘えてくればいいものをこの意地っ張りが!!!」
俺が幼稚な言葉で罵ると親父も乗ってきた。
俺に甘えて貰うと嬉しいのか?親父は……。
厳し過ぎて甘える暇なんて与えなかった癖に。
「意地っ張りは親父だろーが!!!つーか離せよ!打撲だらけでいてぇんだよ!!!」
「何!?大丈夫か!?じゃない、傷だらけになるまで無理をするお前が悪い!!お前がそんなだから母さんも菜月も心配するんだ!!!……その、お、おれも」
その言い合いは親子喧嘩と言うにはあまりに幼稚だ。
でも、言葉の節々からは親父からの愛を感じられた。
そうか、俺は愛されたかったんだ。
「言い淀んでんじゃねえよ気色悪ぃ」
「父親に向かって気色悪いとはなんだ!!!」
「絶縁した癖に父親面すんじゃねえよ!!」
だけど、親父がどれだけこの場で家族への愛を語ろうと、俺を絶縁したことには変わらない。
……まあ、頭を下げて謝るなら、許してやらないこともない。その時は俺も心配かけたことを謝ろう。
「……そ、そろそろ私を病院に……」
親子喧嘩は突如として終わりを告げた。床に這いつくばった内藤の一声で。
「「うっせえ黙ってろ!!!」」
「うぼぁ!!!」
俺が内藤を蹴りつけると同時に親父も蹴りつけた。
内藤は哀れな悲鳴を上げて力尽きた。
「あのー、親子の感動の場面を邪魔して申し訳ないんですけど〜、悪党の皆さんを捕縛させてください〜」
内藤を尻目に言い合いを続けようと意気込む俺達親子の間に、沙織さんが割って入った。
「今はこいつを叱りつけないと気がすまない。もう少し待っていてくれないか?」
親父のワガママに沙織さんの眉が一瞬ピクリと反応していた。
親父、頼むからこれ以上沙織さんには逆らうなよ。女性だからって舐めてると痛い目にあうぞ。
「ふふふ、悠太くんとお話出来て嬉しいのはわかりますけど悠太くんにはお父様より優先すべき人が居ますので〜、ねっ、麗奈ちゃん」
沙織さんも初対面だから我慢したのだろう。
いつもの温和な笑顔で流すと麗奈を呼び寄せた。
麗奈はこちらに駆け寄ると親父から俺を引き剥がして抱きしめてきた。
頭に手を添え、自分の胸にそっと押し当てるようにして。
心臓の音がトクン、トクンと一定のリズムで刻まれていてる。
アドレナリンの過剰分泌により、気の張っていた俺には心地いい。
麗奈に謝ろうと思い口を開こうとしたところ、麗奈は俺を抱きながらスマホに文章を打ちこんで親父に見せつけた。
『悠太は私の( ๑º言º)』
「なっ!」
何を言うのかと思えば、俺の主張権だった。
心無しか麗奈の眉が中心にいくにつれて、下がっている気がしないでもない。
「悠太は俺の息子だ!お前みたいな何処の馬の骨とも分からんやつにはやらん!!」
「もうこちらで進めさせていただきますね〜、それでは皆さん連れてってください〜。抵抗はしないでくださいね〜、痛いですよ〜」
息子の同居人相手に、娘を取られそうな父親みたいな発言をする親父。
そんな俺達に沙織さんは肩を竦めると組員達に指示を出して内藤及び部下たちの連行を始めた。
『絶縁したんだから他人。それに私の方が悠太のことを幸せに出来る(o´艸`)』
「絶縁は解除だ!だから悠太は俺のだ!」
おい、小娘に少し煽られたくらいで絶縁を解除するなよ。
『そんなに大事な息子だったら二度と絶縁宣言なんてしないでね。貴方は悠太にとってたった1人の父親で、悠太にとって貴方はたった1人の息子だから』




