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「コケ脅しだと思うならなんで動揺してんの?覚えてるだろ?俺があんたの息子2人を痛めつけた日に山本組の一人娘が謝りに来なかったか?」


内藤がハッとした表情をした。どうやら忘れていたようだ。


交友関係を調べあげたのに大事な事を忘れてるとか、馬鹿にも程がある。

とはいえ、これだけ言えばどうするべきか分かるだろう。だがコケ脅しというのも半分本当だ。この拳銃は夏祭りに行った時に沙織さんから護身用として渡されたやつだからな。


それでも、ヤクザと繋がりがあると言われれば内藤は俺が持っている拳銃が本物だと信じるしかない。


もう少しだ麗奈。まずはお前だけでも逃がす。


「……ぐぬぬ、だがどうする?私を撃ったところで私の部下がお前たちを生かしては帰さない」


「麗奈を解放しろ。代わりに俺が人質になる。そいつだけは穢さないでくれ……俺の全てなんだ」


俺がそう言うと、麗奈は泣き濡れた顔で、首を横に振った。

勘違いさせたよな。ごめんな。いつも、約束破りかける発言ばかりで、でもこうするしか生存率を上げる方法が思いつかないんだ。

麗奈に微笑みかけ、直ぐに内藤に向き直る。


「麗奈が外に出たのを確認したら俺はこれを捨てる、信じられないなら首にナイフを突き立ててくれててもいい。とにかく今すぐそいつを解放しろ」


まっすぐ内藤だけを見て告げた。

これを拒否すれば話は平行線のまま、内藤の頭が余程悪くなければ麗奈を解放するはずだ。


「どうします?会長……?」

麗奈の首筋にナイフを当てていた男が言った。

親父と取引をするなら俺だけでも充分の筈だ。見た目からして誰よりも自分大好きそうなお前は、命は惜しいだろ。早く俺の提案に乗れよ。


「……離してやれ」


内藤が悔しさを吐き出すように言うと、男は麗奈から手を離した。

代わりに別の男が後ろからやってきて俺の首裏にナイフを当てた。

解放された麗奈は、服を回収することも忘れ、裸足でペタペタと駆け寄ってきた。

もっとも、服は無惨にも裂かれていて着られる状態じゃないけど。


「……ゅーぁに……ょ」


俺の耳元まで顔を寄せ、掠れるような声で麗奈が言った。

逃げようと言いたいのだろう。だが、この距離を離れてしまえば、自分以外の命はどうでもいいこいつは、部下に突撃を命令する事だろう。


内藤から目を離さず、麗奈の涙をパーカーの袖で拭い、言った

「麗奈。今度こそ言うことを聞いてくれ。俺は大丈夫。絶対生きて帰る。だから今回だけは俺を信じて逃げてくれ」

横目で麗奈をチラリと見る。

唇を噛んだまま微動だにせず、俺の顔を見つめている。

今回は嘘じゃねえよ。ていうか、毎回約束を破るつもりもねえよ。俺の事を信じてるならこういうときも素直に言うことを聞いて欲しいものだ。



願いが通じたのか、麗奈が頷いた。

俺の表情を見るだけで、俺の考えてる事を悟る麗奈の事だ。分かった上で頷いてくれたと信じたい。

姉ちゃんに叱られて、麗奈にも怒られたら俺のメンタルはブレイクすること間違いなしだ。


「麗奈、これを羽織っていけ」

肩手でファスナーを降ろし、拳銃を持ち替え、照準は内藤に向けたままパーカーを脱いで麗奈に渡した。


麗奈はそれを、顔に押し付けた。

「匂いを嗅ぐなよ」

安心するのは分かるけど、今ここでやる事じゃない。

麗奈がパーカーの袖に腕を通し、ファスナーを閉めた。

パーカー自体はサイズのデカイものを買ったから、スタイルのいい麗奈の体の太ももまでは隠してくれた。


「また後でな」

片手で麗奈の頭を撫で、背中をトンと叩いて送り出すと、麗奈は出口の方へ走っていった。

背中の方で扉がスライドする音が、2度聞こえた。


これで麗奈の無事は確保された。

部下が潜んでいたとしても、外で騒ぎが起これば音で分かる。だからもう少しこのまま銃口は向けたままにさせてもらおう。


「3分だ。外にお前の部下が潜んでないとも限らない。3分経つまではこのままにさせてもらう」


「……好きにしろ」


どうせ拳銃さえ捨てさせれば俺を好き放題に出来るなんて小悪党下卑た考えを起こしてるであろう内藤はニヤリと笑うと舌なめずりをして言った。


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