74頁
――――――――
姉ちゃんと雪兄に連絡を入れたら、蓮さんと神田さんと雪兄が増援で来てくれることになった。
姉ちゃんには、親父の言いつけを破って出掛けた事を怒られそうになった。多分これは夜にしこたま怒られるんだろうな……。
車は港の方に向かって進んでいる。内藤への身柄の受け渡しをそこにしたか。
あそこには確か使われなくなった倉庫がある。車で入れる大きさがあったはずだから人目を気にせず引き渡すとしたら、そこだな。
どうやって侵入するか、正面切って堂々と侵入したら麗奈を人質に取られる。
やるなら先行して1人が囮になって誰かが麗奈を救出するのがセオリーだけども……この中に潜入が出来そうなほど大人しくしてられそうな人間は……唯だけど、戦闘力の無い唯が見つかればもう1人人質が増えてしまう。
作戦を頭の中で考えていると、沙織さんの手の中で俺のスマホがLINEの通知を知らせる音が鳴った。
「……麗奈さんからになってますねえ〜」
「貸してください」
もしかしたら内藤側から俺への要求かもしれない。沙織さんからスマホを受け取り、LINEのアプリを開いた。
「……っっ」
港の4番倉庫に1人でこい。くれぐれも仲間は連れて来るな、もしこれを違えれば女の命は無い。という陳腐な文言とともに写真が1枚添付されていた。
それを見た俺は怒りに震える事になった。
この野郎。どこまで下衆なんだよ、麗奈がお前らに何をしたって言うんだよ。どうして麗奈がそんな目に会わなきゃいけないんだ。
ずっと俺の傍に居てくれて最近少しだけ変わりつつあった麗奈を……。
殺してやる。刺し違えてでも殺す。絶対殺す。
行き場の無い怒りが俺の脳内を支配し、埋め尽くす。
「……殺してやる」
俺の口から出た言葉は、多分本気の殺意から出た言葉だろう。
「どうだったの?私にも見せてくれるかしら?」「見るな!!!」
俺のスマホを覗こうとした唯に見えないようスマホの画面をロックし、遠ざけた。
こんなもの、女性の唯に見せるわけにはいかない。
……麗奈が泣きながら裸体を晒してる写真なんて。
「……麗奈さんに何かあったのね」
俺の怒号に面を食らっていた唯が察したように口を開いた。
「悪いが今はそれしか言えない。沙織さん、港の4番倉庫だ、麗奈はそこに居る」
言葉を喋ろうとすると口の端が俺の意思に反して震える。
「分かりました。伏見、現場に着き次第4番倉庫よ、外観が脆そうならそのまま突撃しても構いません」
「駄目だ……向こうは俺に1人でこいって釘を刺してきてる。だから最初は俺が一人で行く。どうにかして隙を作るから突入はその後で頼む」
結局、行き当たりばったりな作戦にはなってしまった。
車内を嫌な静寂が包み込む。みんな不安になっているのだろう。
「琥珀さんの突破力に期待してるから、最悪俺がボロボロになっても何とかしてくれますよね」
「あ、ああ、任せろ。麗奈どころか、少年も私が助けてやる!!」
琥珀さんが自分の胸をどんと叩いた。この人なら一騎当千の働きをしてくれるだろう。
「沙織さんと伏見さんも制圧力に期待してる。琥珀さんが取り逃がしたやつは全員捕まえてくれますよね」
「ええ〜、組員にも集合をかけてますのでお任せ下さい〜」
ミラー越しに伏見さんが頷き、沙織さんが振り向いて微笑んだ。
1人も逃がさない。全員纏めて地獄に落とす。絶対に。
「唯はなんだ、怪我しないよう大人しくしててくれ」
「なんでよ。そこは私にも役割を与えてくれるところでは無いのかしら!?」
唯の言葉にみんなが声を上げて吹き出した。
みんなが不安にならないよう空気を作り出すのが俺なんだろ?
しばらくして車は港付近へと辿り着いた。
ここからはスマホに書かれている通り、俺一人で歩いて行かなくてはならない。




