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「あいつらのとこには行かせねえよ」

突然の急襲に呆気に取られた男達に言い捨て、走り、足を横に振り抜いた。

頭を蹴った鈍い音と一緒に1人の意識を完全に刈り取ると直ぐに距離をとる。


「てめぇ!何しやがる!!」

「っち!邪魔だな、どけろ」

意識が無くなり、ただの重りとなった男の体をゴミでもどかすかのようにして、投げ捨てると2人は立ち上がった。

見た感じ、1人は特に体を鍛えたりしているわけではなさそうだ。これなら俺でも勝てる。


こいつらは恐らく1番のターゲットが目の前に居る事に気づいていない。


「大人が3人で女の子狙うってどういう了見だ?」

「お前に関係ないだろ!こっちは1人見失って急いでんだよ!そこを退け!」


幸運にもこのパーカーとスポーツキャップが変装になってたって事か。麗奈にも被せて置けばよかった……やらかした。

男の1人が俺に手を伸ばしてきた。

俺を突き飛ばそうと躍り出た男の手を身を捩り、間一髪で避けると、男の袖を掴み勢いを殺さぬよう引っ張る。

男の体に勢いが増したところで頭を掴み、ガードレールに叩きつけた。

これで2人目。口ほどにもない。


「おい。お嬢ちゃん……お前何かやってるだろ」


こいつだけは骨が折れそうな予感がする。この3人の中ではリーダー格なのだろう。

俺の間合いの外で拳を構え、ジリジリとすり足で距離を縮めてくる。


俺の戦闘は速さを生かした先手必勝、体重と力が無いから重たい一撃を放つには助走か、カウンターが必要になる。受けに回られると非常に厄介だ。


「つうか。俺、男だからお嬢ちゃんじゃねえよ」


仕方がない、動揺を誘ってみるか。

1歩下がりスポーツキャップを取って顔を晒す。お前らの探していた春日悠太はここに居るぞ。


「なるほど、お前が春日悠太か、女装して油断させるなんて報告書にあった通りだな」


ちくしょう。目線を逸らさないどころか、全く動揺しない。下調べもちゃんとしてる見たいだし、冷静なやつだ。


「なあ、いくら貰って雇われてるんだ?」

「お前の話は聞かん。俺の仕事はお前と秋山麗奈を連れていく、それだけだ」


懐柔も無理そうだ。それなら。


スポーツキャップを男に投げ、視界を塞ぐ。


「くらえぇ!」


ダンっと1歩踏み込み、男に向かって右足で前蹴りの構えを見せる。男はキャップを避けず、俺の蹴りを防御すら必要とせず、拳を振り上げた。

「そんな攻撃食らうかよ!」


前に出した右足を右に逸らして軌道を男から外す、男の拳も俺から逸れたが、間髪入れずに追撃の拳を放とうとしている。

俺は男の横を全力で駆け抜けた。

「卑怯な!!」


「馬鹿が!お前なんか相手にするかよ!」

男の方を振り返ると、中指を立て、言った。

時間稼ぎは充分した。唯と麗奈も少しは遠くまで逃げれただろ。


男が俺を追う素振りを見せた。

その奥で唯の抵抗を振り切ったであろう麗奈が、こちらに走ってくるのが視界の端に映った。更にその後ろを唯が走ってくる。


足音で気づいたのだろう。男が麗奈の方を振り向いた。

「待て!!麗奈!」

「折角逃げられたのに、自分から出てきてくれるとは。今日の俺は運がいい見たいだな」

麗奈がぎこちなく拳を放った。

男は麗奈の拳を素手で掴むと麗奈に危害を加えようと拳を引いた。

俺も麗奈を助けようと走り出すが、間に合わず……麗奈の腹に、男の拳が突き刺さった。


「…………かはっ……」

膝をついて腹を押さえ、息ができずもがき苦しむ麗奈を男が道の端に蹴って退けた。


ちくしょう。ちくしょうちくしょう!!

地面を蹴り男に向かって拳を突き出す。男は避けること無く俺の拳を顔面で受けると、俺の腕を掴んで、乱暴に投げた。


「っきゃ」

投げられた先には唯が立っていた。唯と衝突すると彼女は小さく悲鳴をあげ、俺は唯をクッションにした形で地面に叩きつけられた。


「唯。大丈夫か!?」

俺の下敷きとなった唯に声をかける。

「ええ……けれど足を挫いてしまって」

「俺が何とかするから唯は大人しくしてろ」

「悠太くん!!麗奈さんが!!」

唯に言われ、麗奈の方を視線を向けると、リーダー格の男が麗奈を殴りつけようと拳を振り上げていた。



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