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美鈴が胸ぐらを掴んで持ち上げてきた。

気持ちは分かるけど沸点低すぎだろ。この分だとそのうち涼夏って単語が出た時点でキレるようになりそうだ。

「落ち着け美鈴、麗奈も居た。なんなら途中まで神田さんも居た」

 事実を伝えて美鈴の手をタップする。身長差があるから足が浮いてて苦しいんだよね。


「許すわけないでしょ!私の涼夏と夜も朝も楽しくご飯を食べて!このまま行けばお昼もコンプリートね!!」

美鈴の怒りは冷める事を知らず、むしろ増しているようだ。

涼夏と2人きりじゃなければ許されると思ってたけど違うのか。


「ひ、昼は席を外すから許してくれ……」


俺にできる最大限の譲歩だ。これで許してくれなきゃ、詰みだ。

「悠くんどっか行っちゃうの……?」

「涼夏を悲しませるんじゃないわよー!!!」


涼夏の悲しむ姿を見た美鈴は更に俺をぶんぶんと振り回してきた。

俺にどうしろって言うんだ。と言うか俺悪い事した?多分してないと思うけど。


――――――――――――

放課後の帰り道を麗奈と唯と3人で歩いている。

正確には帰り道ではない、寄り道する気満々で向かう先はこの間行ったアイス屋だ。

俺は男装と女装について話し合っている2人の後ろを歩いている。

今日も今日とて内藤からの監視の目を警戒しつつ歩いているのだが、今日は、気配を感じない。

もう情報を集め終わり俺や親父の人生を潰す程の弱みを見つけたか、俺達に人質としての価値はないと判断したのか。親父が来るまでまだ2日ある。

どちらにしろ油断はできない。


「ねえ、悠太くんはどちらの服が好きかしら?」


唯が見せてきたスマホには、黒いレギンスに大きめのパーカーを羽織ったスポーティーな女性と、ジーンズにポロシャツと言うシンプルだけど清潔感漂うボーイッシュな女性だった。


「最初のやつだな、それが似合うとおもうぞ」


麗奈がモデル体型だから着るならどちらも似合うけど、シャツにジーンズじゃいつもと変わらん、ジャージがジーンズに変わっただけだ。


「ですって、麗奈さんどうします?」

『悠太がその服が良いならそれを尊重しよ(o´艸`)』

「ですね。ふふっ、私も買って3人でお揃いもいいかもしれないわね」

『それもいいね(*°∀°)=唯もお姉さんの妹になっちゃう?』

「私一人っ子だから嬉しいですっ」


まるで俺を含めたような言い方をしてるけど、唯、涼夏、麗奈の3人でお揃いって事だよな?もしかしなくても俺は含まれてないよね。


「ん……今日服買いに行くのか?」


「そうだけど。悠太くんもしかして予定があるの?」

「予定は無いけどあまり外を出歩くなって親父に言われててな」

『今日は見られてる感じしないから大丈夫じゃない?あまりコン詰めすぎると悠太疲れちゃうよ』

「けどなあ……」


麗奈の言ってることは分かる。むしろ俺は麗奈の精神状況の方が心配だ。

俺は麗奈が癒してくれているからギリギリ平然を保っていられるが麗奈はどうなのだろうか。

それが今日のアイス食べに行こう。に繋がるのかもしれない。


もしかしたら今日教室に来たのだって……。


『だめ……?』

「……はぁ、しょうがねえな。行くか。けど遅くならないように帰るぞ」


麗奈がこくりと頷いた。麗奈と唯とアイス屋に向かい、麗奈がチョコアイス、唯はストロベリーアイス、俺はチョコミントを買って外に出た。

アイスを食べ終わった俺達はその足でデパートへ向かった。


いつもの服屋さんに入ると、いつもの店員さんを連れ立って服を選び、その中には当然の様に俺の服も混ざっていたりした。

文句を言ってもまあ、麗奈のワガママによって突き通された。

そんなわけで俺は今自分で選んだ服を着せられている。一応、顔を見られたくないからスポーツキャップも買って顔が見えにくいようにはしている。

お揃いを選んだから麗奈も、唯も同じ服だ。






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