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「毎時間見に来てるのか?」
麗奈が手と首をぶんぶんと振って否定しているが、嘘ついてますと目が物語っている。
「いや、別にいいんだけど、外で見てるくらいなら入ってくれば?」
麗奈なりに心配で俺の様子を見に来てくれていたんだろう。
『君がお姉さんに会いに教室を出て来てくれてもいいよ(/ω\)』
「まあ、約束だからなぁ。そうするか」
ここまで足繁く通ってくれているなら、相手をしないのも可哀想だ。そもそもここまで来ていたなら声をかけてくれればいいのに。
『約束。だもんね(*•̀ᴗ•́*)و ̑̑』
俺たち2人の間ならこの言葉だけで色々と成立しそうだな。
「取り敢えずトイレ行ってくる。麗奈も授業が始まる前に戻れよ?」
麗奈の横を通り過ぎようとしたら腕を掴まれて止められた。
『お姉さんもついて行くよ』
そうなるよね。でもここは学校だ、神聖な学び舎で性癖をさらけ出させる訳にはいかない。
「学校ではダメだ」
一言、キツめの声色で言った。
『約束だから(o´艸`)』
便利な言葉だよな、約束って。
この言葉だけで麗奈の性癖ですら解決させちゃうんだもん……。
羞恥に耐え、麗奈に見られながらトイレを済ませ、手を洗ってトイレを後にした。
誰かいるかも知れないと言う理由で普通の男子トイレを使う訳にも行かず、敢えて誰もいない特別教室がある遠くのトイレまで行くはめになった。解せぬ。
15分あった休憩も後6分程に差し迫っており、足早に教室に向かって歩いている途中だ。
「間に合わなかったらお前の所為だからな。ただでさえ校長に目をつけられてるのに……」
『(๑><๑)♡テヘペロリンチョ♡』
「無表情でそれをやってもシュールなだけだぞ……」
可愛い事には可愛いんだけど、次は確かあの憎き生活指導の先生の授業だから絶対遅れる訳には行かないのだ。
『悠太。今日帰りにアイス食べに行こ。お姉さんが奢る』
もしかしてもしかすると反省した、のだろうか。
「あぁ、行くか。でも今日は唯がうちに来るって行ってたから唯も連れてくぞ」
『唯ちゃんの分もお姉さんが出すから任せて、お姉さんちゃんとお小遣い貯めてるから(*•̀ᴗ•́*)و ̑̑』
単に物欲が無いから貯まってただけだと思ってた。
「麗奈は欲しいものとかないのか?」
『君に着せるお揃いの服が欲しい(o´艸`)』
「何?男装でもすんの?」
俺は女装をするなんて言ってないもんね。
『お姉さんに男装似合う?(;´・ω・)』
麗奈が男装……長い髪は服で隠して、胸は……うん。
「似合う。1回くらいしてみてもいいんじゃないか?」
『君が女装してくれるならいいよ(/ω\)』
それじゃお揃いにならないでしょうが。
「やだよ。お揃いで出掛けるんだろ?」
『むう。いけず(`‐ω‐´)それじゃ、また後でね( º言º)』
学年が違うので階段で別れる事になった。
お前が言った時点で俺の女装は確定してるんだからそんなに怒らなくてもいいじゃん……。
1人で、トボトボ教室に帰っていく俺だった。
廊下の喧騒を抜け、教室へと入り自分の席に着く。
「悠くんトイレ長かったね」
席に着くなり涼夏に声をかけられた。美鈴も一緒に居て談笑していたようだ。
まさか幼馴染の優しさを断って席を立ち、不可抗力とは言え麗奈を連れてトイレに言ってたとは言えないな……。
「大だったんでしょ。詮索しないで上げなさいな」
美鈴が助け舟を出してくれた。下品だけど助かる。
少し急ぎ足で普通に教室の中へ入って来た癖に、急に腹を抑え痛がる演技をしながら言った。
「おう、ちょっと腹痛でな。言うのも恥ずかしいから黙ってたんだけど……」
「なにか拾い食いでもしたの……?」
「するわけねえだろ。何なら昨日の夜から一緒に居ただろ」
「何それ!?昨日涼夏と夜を共にしたの!?羨ましいんだけど!ふざけんな!」




