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なんだなんだよなんですか?女性は守りたい生き物だって姉ちゃんから教えられた事はあるけど、周囲の女性は強かすぎる。
肉体的にも強い涼夏は置いといて、麗奈や姉ちゃんも例外では無く、肉体的な強さよりも、精神的な強さが尋常ではないではない。
その女性達が俺に守ると言われ頬を染めるのは些か不思議である。だが俺はこれを口に出しては言わない。デリカシーの無い奴、雪兄と同じ扱いを受けるようになるからだ。
「悠太くん。私も助けてくれる?」
だが、この反応だけは見逃せなかった。
「貴女なら軍隊が来ようと1人で蹴散らして生存できます」
「あら、女性にそういう事を言うのはデリカシーに欠けるわよ?」
俺の周囲の人間で漫画を描くとして作中最強、と言う言葉を使って誰かを選ぶならその称号を手にするのはこの人かうちの母ちゃんの2択だろう。
1つ例をあげるなら、これは小学生の時の話だ。うちの母ちゃんと蓮さん、涼夏と俺でプールに遊びに行った事があった。
当時まだ20代後半だった彼女達は、誰がどう見ても綺麗なお姉ちゃん達が可愛い妹と弟と遊んであげている微笑ましい日常にしか見えなかっただろう。
だがまあ、どこにでもそんな日常をぶち壊す下半身でしか物を考えていない輩と言うのはやってくるわけで、色とりどりの頭髪をした集団が母ちゃんと蓮さんに声をかけた。
結果は断り続けた末、逆上したDQN集団を、プールで、血祭りにあげ、母ちゃん達は仁王立ちで笑っていた。
この2人が揃い踏みしてキレたら手をつけられない迄ある。
「逆に、その、蓮さんは守られたいんすか?俺に」
俺が問いかけると、蓮さんは栗色の長い髪をかきあげて言った。
「んー、女性はいつだって守られたいものよ。灯ちゃんもきっと同じ事を言うわね。だから私のモノにならない?」
貴女が再婚するとしたら、お相手はネイビーシールズ上がりか、うちの母ちゃんくらいにな……親父と離婚して蓮さんとくっついてもらうのもありかもしれない。
むしろそれを推していこう、母親同士の百合は涼夏的にも複雑だとは思う……だが2人の実年齢はさて置き、見た目だけなら菜月姉ちゃんや葉月姉ちゃんにも引けを取らないくらい若い。いける。
「もう、お母さん今日ふざけすぎだよ。もうこれ早く登録して寝ようよ。私達起きて待ってたんだよ?」
実際俺達は余程遅い時間じゃない限りは起きて待ってるから、夜更かししているのは涼夏だけだ。
でも、今の状況を切り抜けるにはお前だけが頼りだ、俺を導いてくれ。
「そうね。じゃあアプリをインストールするんだけど……これ。みんなこのミツケールってアプリをダウンロードして頂戴」
蓮さんの言う通りスマホでアプリを検索して探し、ダウンロードした。
アプリを開くと、同期してください。と表示されていたので取り敢えず自分のキーホルダーを登録してみると、キーホルダーに名前をつけてくださいと表示されている。
なるほど、これで名前を登録すれば、誰がどこにいるか分かるって事か。
「このGPSタグは何人でも登録できるようになってるようになってるの、便利でしょ?悠太の貸してみて」
1人しか登録出来ないんじゃ1人で何個も持つようになるからな、姉ちゃんはともかく蓮さんはそんなヘマはしない。
「はいよ」
姉ちゃんに言われて渡すと姉ちゃんが俺のキーホルダーを登録した。
「見て見て、これで悠太がどこにいるかいつでも分かるの!」
姉ちゃんが見せてきたスマホには、悠太、と書かれたアイコンが表示されている。俺とは別にYKと書かれたアイコンが目に入った。
「このもう1人YKって書いてあんの誰?」
「悠太くん。私にもキーホルダー貸してくれる?」
「あ、はい」
俺の質問を遮るように、蓮さんが言った。




