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「悠太くんも腕を上げたわねー。私のお嫁さんになってくれない?」
旦那ではなく、何故嫁になるのか。そしたらなんだ、俺は涼夏の父親になるのか、休日に寝てればどつき起こされ、買い物に付き合わされそうだし、奥さん共々怒らせると怖いし、こんな手のかかりそうな娘は嫌だな。うん。なので俺の答えはこうだ。
「嫌です」
勘違いが生まれないよう単刀直入に言った。それでも蓮さんはハンバーグを食いながらニヤニヤしている。
「私は、欲しいものはどんな手を使っても手に入れるから」
覚悟してなさいと言いたげに手に持った箸の先を俺に向けた。冗談は勘弁してください。
会社社長で、見た目は20代でも通用して、怒らせなきゃ優しくて、引く手数多な筈なのだから俺に求婚して来る意味がわからん。
「お母さん、行儀が悪いよ」
蓮さんは、あら失礼と澄ました表情で言いながら食事に戻った。
2人が食事を終え、皿を片付けると、もう一度テーブルに着くように言われたので座った。ようやく本題に入るようだ。
姉ちゃんが会社用のカバンから小さなキーホルダーみたいなものを5つ取り出して、机の上に置いた。
パッケージには盗難防止用GPS追跡キーホルダーと書かれたそれは、見た目は普通に見たらなんて事はないただの変哲のない、女子高生が見たら「可愛いー!」とか言いそうなただのキーホルダー。
「なっちゃんこれ可愛いね!これなぁに?」
ほらな?
「これはね。読んで字の如く盗難された物を見つけるためのキーホルダーだよ。これを付けておくとね、アプリで現在地を追跡できるのよ」
「ほえー、こんなキーホルダーにそんな機能が……」
「誘拐される事を見通してか?」
「保険よ保険。今週決着をつけに行くにしてもここまで監視されてるなら用心するに越したことはないわよ」
「外出るとずっと見られてるからな……姉ちゃんと蓮さんの方はどうだ?」
「私達は外に出る時は車で移動してるからかも知れないけど気配は感じないかな」
「そうねぇ、菜月ちゃんは気づかなくても、私は気づくだろうから私達の方までは監視してないみたいね」
姉ちゃんは天然入ってるからな、もしかしたら気づかない可能性も大いにある。
でも、一緒に行動してる蓮さんが大丈夫と言うなら大丈夫なのだろう。この人も規格外の強さだし。
そうなると狙いを俺か麗奈のどちらかにしぼってる可能性がでかい。
更に絞って考えると春日家の長男であると思ってほぼほぼ間違いないだろう。
なら、このキーホルダーを1番持ってないといけないのは俺だな。
いや、俺の動向を監視しつつ、麗奈や涼夏を人質に取ってくるなんてこともあるか。
「何にせよ。全員持っておいた方が良さそうだな。スマホのGPSだけだと、取り上げられたら終わりだから良い案だと思うよ」
「えっ。じゃあこれスマホに付けたらダメなの……?可愛いのにー」
涼夏が頬を膨らませて不満を露わにした。
馬鹿発見だ、と茶化して指をさして笑ってやりたい。
だが、普通に生きてたら2重で保険を掛けておく必要なんてない。こいつの感性が普通だ。
「スマホとは別にして見つからない場所に隠しておけよ。それさえ取り上げられなきゃ絶対探し出して助けてやるから」
「う、うん」
何故か涼夏の顔が赤らむ、何か変なこと言ったか?
『ゆーた、お姉さんは?(o´艸`)』
なんだその平仮名ゆーた、今はお父さんごっこしてる雰囲気じゃないけど可愛いじゃないか。
「もちろん麗奈も助けるぞ。当たり前だ」
『(/ω\)』
だから何なんだお前らその反応は。
「ゆ、悠太。お姉ちゃんは?」
菜月姉ちゃんが、おずおず聞きにくそうに聞いてきた。
「言わなくてもわかれよ、助けるよ」
「あ、ありがとう……えへへ」
姉ちゃんも照れくさそうに顔を赤らめた。




