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「……ないな」
『ね?悠太も素直に慣れないところがあって、たまに言葉に棘があったりするでしょ?お父さんと比べると全然優しいけど。だからね。さっきの期待してなかったって言ったのも、菜月が大怪我をしないように辞めさせるための口実だったんじゃないかな』
そう言われると親父のあの偉そうな物言いも合点が行く。
だけど、それとこれとは話は別。仮に麗奈の言う通りだったとしても俺は姉ちゃんを傷つけ続けた親父を許さない。
「麗奈の言い分は分かった、でも、親父が姉ちゃんを泣かせたのは事実だから、許す気は無い」
『良いんだよ。悠太が許せるまでは許さなくて。きっと許せる日が来るよ。悠太は菜月に似て優しいから。葉月に似て自分に厳しいけど(o´艸`)』
知ったように言う麗奈に、俺もふっと笑みがこぼれた。
麗奈には葉月姉ちゃんの教えのこと話してあるから、厳しい人ってイメージだけが先行しているのだろう。
「葉月姉ちゃんも優しいんだぞ?」
『だろうね(o´艸`)君は私を葉月に重ねるくらい葉月のこと大好きだもんね』
「重ねてねえよ。それを言ったら麗奈だって俺を真姫ちゃんに重ねてるだろ」
麗奈と葉月姉ちゃんを重ねた事なんてない。そもそも2人は性格も何もかもが違いすぎる。
それに、麗奈と葉月姉ちゃんを重ねるのは麗奈にも葉月姉ちゃんにも失礼だ。
あれ、俺が麗奈に対して思った事は……。
『気づいた?私も、真姫と悠太を重ねた事ないよ(o´艸`)』
俺の言葉を引き出すためにワザと放った言葉だったようだ。
『私は悠太だから色々したくなるんだよ。悠太は私が悠太に真姫を重ねて妹扱いしてると思ってたみたいだけど。違う?』
「悪い、そう思ってた」
『私は悠太だから世話を焼くし、胸を貸す、傍にいる、真姫に似てるからじゃない』
「ごめんな」
『そんなに落ち込まなくても怒ってないよ?(*'▽'*)♪』
聞きたい。妹と俺を重ねて無いとするなら何故、麗奈は俺の傍にいる?約束だから?先に麗奈と約束をしたのは俺だから違う。
初めて出来た男友達だから?それなら胸を貸すのは違う。
聞きたい。麗奈の口から。でも聞いてどうする。
俺は麗奈に何を求めている?友達?家族?恋人?俺が麗奈に抱いてる感情はなんなんだ。
そもそも今更になって何故こんなことを考えるんだ俺は。
「麗奈は、麗奈が俺にした約束を果たしたら俺の前からいなくなるのか……?」
麗奈が言ったことの返答になっていないのは分かっている。でも、この不安で不透明な気持ちを麗奈にぶつけず拭い去るにはこう質問するしかなかった。
『なんで?話が飛躍し過ぎてるよ(;´・ω・)お姉さんそんな話ししてないよ(´ε`;)』
「なんか、今日は調子狂うな。昔のこと思い出したからかな……悪い。少し寝てくる」
立ち上がろうとする俺の手を麗奈が引っ張った。
バランスを崩して、麗奈の膝の上に頭を乗せる形で倒れた。
『寝るならここで寝ていいよ(o´艸`)』
少し1人になりたくて言ったが伝わらなかったようだ。
引っ張った手を離してくれないから起き上がることも出来ない。
『悠太が考えてることは手に取るように分かるけど。取り敢えずお姉さんはどこにも行かないよ。君の隣がお姉さんの居場所でしょ?(/ω\)』
「約束が無くなってもか?」
『約束が全てじゃ無いよ、悠太が望むならって言えたらかっこいいけど。お姉さんが悠太の傍に居たいかな。寧ろ居て欲しい』
俺の不安全てを取り除こうと言葉を選んでくれてるんだろうな。いや、きっと麗奈も本心を話してくれている筈だ。
「ありがとう麗奈」
『いいよ。悠太は私の大事な家族だからね(o´艸`)安心できた?』
「うん」
『じゃあ、このままお姉さんの膝で寝ちゃお、君はずーっと気を張ってたから少し疲れてる(*-ω-)ヾ(・ω・*)ナデナデ』
麗奈の手が俺の眼前に来たので目を瞑った。
そして、頭を撫でられる心地いい感触を感じながら、意識を手放そうと微睡みに沈んでいく。
麗奈、いつもありがとう。




