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隣に座った麗奈に引き寄せられ、膝枕をされ頭を撫でられながら、まったりとした時間を過ごしていると、着信を知らせる通知音がスマホから鳴った。
「だれだ?」
このまま無視して少し眠りたいくらいには、心地の良い眠気が俺を襲っているが、電話を掛けてきた相手が気になるので、眠たさを押してスマホを手に取った。
スマホに表示されている名前は『クソ親父』だ。
「親父か!!」
俺が急に上半身を起こしたものだから麗奈がびっくりして胸に手を当てているが、俺の内心はそれどころではなかった。
「悪いな麗奈!……出るか」
通話ボタンをタップして通話に出る。電話口では少しのノイズと、遠くで母さんの電話を代われという声が聞こえてくる。
『どうした、着信があったから掛け直してやったんだが』
その一言だけでどうしてそんなに上から発言をできるのだろうか。俺は親父の部下の失態のおかげで危険に晒されてるというに。
恨み言のひとつくらい言ってやりたいけど、言って協力を打ち切られたら今の無力な俺ではどうする事も出来ない。
「忙しいとこ悪いな。こないだあんたの部下が内藤ホールディングスに探りを入れてる事がバレたって言ってたよな?」
『ああ、まさかそんなミスをするとは思えないが、まあ人間のやる事だ、ミスもある』
俺たちの成長期の時に是非とも聞きたかった言葉だね。ちくしょう。
どうせ、だからどうした?と突っぱねられるんだ、単刀直入に本題だけ伝えて電話を切るか。
「お陰で今俺が狙われてる」
『どういう事だ?お前は無事なのか?』
明らかに声のトーンに心配が混ざっている。
だが、なんでこいつが俺のことを心配するんだ……?正直気色悪いぞ。
「大丈夫だけど……俺の心配をするなんてどういう風の吹き回しだよ」
『特に特別な感情はない。内藤ホールディングスを潰すのに、お前が居ないんじゃ意味が無いからな。飽くまでお前はただの駒だ』
ほんっっっっとうに!ムカつくやつだなあ!!!
「へいへい、それで進展の方はあったのか?」
これでないとか抜かしたら9月に会った時にぶん殴ってやる。
『やっと情報を纏め終わった所だ、来週俺もそちらへ行く。お前のような若輩者が1人で行ったところで門前払いが関の山だ』
「けっ、一言多いんだよ。来週の何曜日だ?予定は空けておくけど出来れば土日にしてくれ。後一日でも休めば留年どころか退学なんだよ」
俺が言い終わると、親父のため息と共に電話口から聞こえていた周りの音が一切聞こえなくなった。
おかしい、スマホの音量を下げたわけでもないし、耳からスマホを離してみると画面が着いたから電池切れでもない。電波もちゃんと4本立っている。
『それで?退学ってどういう事だ?また何かやらかしたのか?』
どうやらマイクをミュートしていたようだ、恐らく俺の悪口でも言っていたのだろう。この親父ならマイクミュートなんてせず直接言いそうなものだが……。
「いや、それが校長と教頭に内藤の息がかかってるみたいでな……」『…………ほう』
電話口で聞こえた親父の一言は底冷えするくらい低いものだった。
この一言だけで包み隠さず言え。と言われてる気分になった。
「葉月姉ちゃんの事や俺の周りの事を調べあげてそれを1人の生徒を脅して広めさせたんだよ。いきなりの事だったからびっくりしたぜ」
『沸点の低くて頭の悪いお前のことだ。怒鳴り散らして事が大きくなったってところか』
「1人で納得しないでくれよ、こちとらトラウマを抉られたんだ……反抗もしてねえのに理不尽な条件を突きつけられたんだぞ?」
『全く情けない。そんなんでよく人助けをしようなんて大口叩けるな……まぁいい。お前の所在まで漏れてるなら俺が行くまで大人しくしておけ。菜月にも言っておくがくれぐれも外に出るなよ』




