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クソや……奴は俺を見ると言いにくそうに口ごもった。

「そこに俺が現れたと?」


「あぁ……ただの嫉妬だって言うのは分かってる……秋山さんが1人で居た頃はたまに見かけるだけで諦めがついた、でも突然春日くんが現れた」


そりゃあ、憧れてた相手に突然男が出来たら嫉妬する事もあるだろう。

俺自身が恋愛感情と言うのを感じたことが無いから客観的意見だけども。


「どうして俺じゃないんだ……って思った。馬鹿だよな、春日くんを蹴落としても秋山さんが俺に振り向いてくれる筈ないのに……でも時間が経つ度に想いは募り募って……そこに数日前内藤の部下?が接触してきた」


「なるほどな」


この場合麗奈から一言言ってもらった方がいいんだろうけど、麗奈は俺の後ろに居るだけでスマホを触ろうともせず、俺の背中に引っ付いてただただ俺達の様子を眺めている。


「2人とも本当にすまない。俺みたいな奴は人を好きになっちゃいけないんだ」


奴はそう言うと、姿勢を正して地面に頭を押し付けて土下座をした。


「馬鹿じゃねえの?」

「えっ」

「人を好きになっちゃいけねえ事なんてねえだろ、ただお前の場合はそれが行き過ぎただけだ。俺は人を好きになった事は多分ねえけど……そこまで一途になれんのは素敵な事だと思うぜ?」

「春日くん……」

「だから好きって感情を相手に押し付けちゃダメだ。それはお前のエゴでしかない。1度好きになったんなら、相手が別の相手を見つけようと相手の幸せを願えよ。ありきたりな言葉だけど……俺から言えるのはそれだけだ」


麗奈と付き合ってる訳じゃねえんだけどな。


「ありがどう……がずがくん!おで!おで!」


顔をぐちゃぐちゃにして泣きだした……涙にも鼻水にも濡れて本当の意味でイケメン顔が台無しだ。


「泣くなよ。めんどくせえ……んじゃあ警察に通報する……のもめんどくせえ、もういいから帰れよ」

ぶっきらぼうに言った。全員が目を丸くして俺を注視している。


気が変わった。どうせ逮捕されたところで、もうこいつは助からない。


「少年!いくらなんでも甘すぎる!!!!」


「んー、いいじゃないすか。もう協力せざるを得ないっすよ。そいつ」


「どういう事?向こうを裏切ったら一家揃って働けなくするって言われてるのに……」


「いんや、この現場を見られているとしたら、土下座までしたんだから警察に行こうが同じっすよ」


クソ野郎がハッとした顔をしてあわあわと口を動かしている。

「そ、それじゃ……俺の家族は……」

仮にこいつが助かる道が残っているならこの現場を観察されていないと言う可能性だけで、俺が思うに現にこの場には俺達以外に人間の気配は感じない。


こんな草だらけの場所で身動き取ろうものなら草を踏んだ音で直ぐにバレる。多分こいつが心配していたことは杞憂に終わると思うのが俺の見解だ。


一応琥珀さんにも聞いてみるか。

「多分気にしなくていいぞ……琥珀さんはここに俺達以外の気配は感じますか?」

「感じないな、そんなの草の音で分かる」


まさか高校生を尾行するのに凄腕のスナイパーを雇ったり、探偵を付けたり映画みたいなことをする筈がない。

「でしょう。だから安心していいと思うぞ。だから今日は帰って寝ろ。後名前教えろ」


そろそろ心の中でクソ野郎と呼ぶのも疲れてきた。


「俺の名前は中田トシキだよ」

「中田ね。中田今日どうやって帰った?」

「それが……下駄箱に行ったら扉がボッコボコでさ……上履きのまま帰ったよ」


「お前俺の靴箱にどんな手紙入れたの?」


「いや……非常に言い難いんだけど……君のお姉さんのこと」

だからあいつすげえ切れてたのね、あいつも葉月姉ちゃんに懐いてたからそれなら納得だ。



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