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「どれも選べない……ひひひ、一つ目をえ、らんでも……いいか?」
内藤にも相当脅されているのか、口を閉ざして押し黙った。
「お前が言わなかった所で、使い捨てされるのがオチだと思うけどいいのか?」
ダメ押しだ、これで何も言わなきゃ通報して終わりだ。
しばらく黙り込み、やがて重い口を開いた。
「お前と秋山さんを引き離す事に協力してやる代わりに断ったり裏切ったりしたら家族を巻き込んで全員働けなくしてやるって言われたんだ……」
「内藤は俺と麗奈を名指しだったのか?」
「……言えない。どこで見てるか分からない」
埒が明かねえな。すんなり終わらせてやるか。
「そうか……取り敢えず今から警察に通報するから、警察で全てを包み隠さず話せ、SNSに書き込んだのもお前だろ?」
クソ野郎が頷いた。
これで俺の事を勘違いしたやつがどうこう言ってくる心配も無くなるだろう。
「俺を刺そうとした事は言わなくていい。そうだな、殴った事にしようか。停学くらいで済むだろ……んで停学中にSNSで書いた事を訂正しろ」
アザを作っとかないとなあ。意を決して自分で自分の顔面を殴りつけた……痛え。
「何故だ!罪は罪として償わないと行けないだろ!」
琥珀さんがいきり立って声を上げた。
「俺や麗奈のストーカーをしていた事は許せねえけどさ、脅されて引くに引けなかったんだろ?」
最初は徹底的にやるつもりだった。
「でも、俺達に手を出そうもんなら琥珀さんが出てくるって分かってるだろ?俺もお前に負ける程弱くはねえ。だから今回はいいだろ」
「少年が良いって言うならいいけど……優しすぎるぞ」
「琥珀さんがした事を警察に説明するのもめんどくせえ。今学校に話が言ったら非常にマズイことになる」
俺からすればSNSで拡散された麗奈と俺の噂が訂正されればそれでいい。
だが罰は必要だ、だからこいつには停学で済む程度の罰を与える事にした。
「か、春日くん……俺、警察で全部自白するよ!内藤の事も校長達のことも……春日くん、秋山さんも……すみませんでした」
違う違う、そこで罪悪感に駆られて自白された方が面倒だって言ってんだよ。
それに警察で内藤の事を話したところで取り合ってくれる訳がねえ、結局金でもみ消されて終わりだ。
「内藤の事は俺が何とかするからやめておけ。早まるとやられるぞ。謝罪は受け取っておくから悪い事は言わねえ。それをするくらいなら俺達に協力してくれ」
麗奈も隣で頷いている。
「そんな大それたこと……出来るのかい?」
まるで信じられない物を見るような目で見てくるクソ野郎。当然だ、と腕を組んで自信ありげに頷いている琥珀さん。無表情の麗奈。
三者三様のリアクションをとるなか「できる出来ないじゃない。やるんだ、俺達の仲間が傷つけられた。タダじゃ置かねえ」俺は言い切った。近くで聞いているなら宣戦布告だ。
俺を敵に回したことを後悔させてやる。こうと決めた俺はしつこいぞ。
「こ、こんな事をしでかした俺を……仲間だって言ってくれるのかい……?」
「いや、それは無理」
良いように勘違いすんじゃねえ、そんなんだからストーカーになるんだろうが。
俺が言う傷つけられた仲間は焼肉屋に居た当事者と神田さんだけだ。こいつは違う断じてない。誰が好き好んで自分を殺そうとした相手を仲間に引き入れてやるか。
「そ、そうだよな……すまない。思い上がった」
クソ野郎ががっくりと肩を落として謝ってきた。
「お前そんなに素直なら、なんで今回の話に乗った?」
どうにも腑に落ちない、正気にもどった今会話をしてみれば見るほど昨日のような話を聞かないクソ野郎といった印象が薄れていく。
「出来心……だったんだ。秋山さんに憧れてたのは昨日言ったよな。でも秋山さんは男性恐怖症で男子生徒とは話しをする事も近づくこともないって噂を聞いた……なのに」




