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『心底怯えきった感じだったけど何を言ったの?(*゜▽゜*)』
教室を離れてから少しして麗奈がスマホに書いた文字を見せてきた。
「少し脅してやった。俺が言い終わったあとあいつどんな顔してた?」
『すごく動揺してたよ(o´艸`)』
俺はわざと扉を開け放して奴を無視した。冷静さを欠き、追ってきた奴を麗奈から見える位置に誘導する為だ。
奴の反応で裏で手を引いているやつが分かった。内藤ホールディングス社長、俺なんか歯牙にもかけなさそうな程、大きい会社の社長の癖してやる事が小せえ。
しかし、麗奈目当てのクソ野郎の単独犯だと思っていただけに今回の反撃は予想外だな。
嫌だけど、親父に連絡を取る必要がある。
「少年。かっこよかったよ。まるで葉月さんの背中を見てるようだった」
琥珀さんが感心したと続けて、うんうんと唸った。
葉月姉ちゃんと同じ背中、以前なら悪くない響きだけど今は違う。
「嬉しいけどよしてくれ。俺は俺だ。」
「お、おお。そうだね、悪かったよ」
俺の宣言を聞いた麗奈が俺が独り立ちしたと思って離れていって仕舞わないだろうか。
『ふふ(o´艸`)一皮剥けたね。でもずっと傍にいるよ』
そんな心配はなさそうで安心した。
そもそも俺がした約束をまだ果たしてないから絶対離してやんないけど。
「そんじゃ帰るか。なんかゴタゴタして腹減った!琥珀さんも来るか?」
「そうだなー。私もなんだかんだ今日の授業サボってるからお願いしても良いか?」
『悠太のご飯美味しいよ(*•̀ᴗ•́*)و ̑̑帰ろ帰ろー!』
なんの問題も解決してないうちから心の軽くなった俺達はその場の雰囲気やノリに任せ、保健室に戻ることなく学校を後にした。
なんか忘れてる気もしなくもないが、そんな事は、俺にはどうでもよかった。久しぶりに心の中の天気が晴れた気がした。
――――――――――――
夜、俺と麗奈、琥珀さんの3人は暗い夜道を歩いている。
3人とは言ったものの、俺と麗奈は並んでその後ろを少し離れて琥珀さんが隠れるようにして歩いている。愚直に真っ直ぐな人だから隠れているのが敢えて目立っているのだが。
俺の予想が正しければ、内藤から情報を貰ったあのクソ野郎は今、皆が知らない麗奈の事を沢山知り、俺を退学に追いやり、麗奈から弾き剥がせるチャンスに湧き上がり有頂天で麗奈の事ストーカーのようにつけ回しているに違いない。
そこで考えたのが今回の作戦だ、クソ野郎の知らない麗奈の1面を見せてやれば激昴して出てくるだろう。
そこを捕まえてやろうと言う琥珀さんが主導になって考えられた単純な作戦だ。
学校で事を構えられない現段階では報復するにも外でやるしかない。
「麗奈、いざとなったら俺が守るから心配するなよ」
「……ぁぃぁと」
麗奈が俺の耳元に顔を寄せるとか細い声で言った。
夜道で歩きながらスマホを使う訳にも行かないもんな。
麗奈が俺の手を握って来た。祭り以降出掛けの際多くなってきた事だから俺も自然と受け入れ暗い夜道をもっと人気の無い方へと歩いていく。
住宅街を抜け、トラウマのある公園を回り道して、その奥にあるコンビ二を抜けた俺達は細い道にある街頭もあまりない暗がりへと歩を進めた。
ここで俺の勘違いだったらただの歩き損だが、確かに琥珀さん以外の気配はある。そろそろ仕掛けて見るか。
「麗奈。キスしたいんだけど」
俺はふらりと立ち止まり、思い立ったかのように声を上げた。
人前だからと首を横に振る麗奈に、構わず麗奈の両肩に手を添えた。
「いいだろ?少しだけ」
斜め下に視線を外し少しだけ悩んだ後、こくりと頷き頷いた麗奈が、俺が届くように腰を落として瞳を瞑った。
整った麗奈のキス顔に手馴れた演技をしなくてはいけないにも関わらず、ゴクリと息を飲んだ。




