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俺が聞くと、手を口元に持っていきふっと柔らかな笑みを浮かべた。

昔何かの本で読んだことがある、動作のひとつひとつが相手の警戒心を解くものだ。


「いやぁね、この人のお陰よ」


ケラケラと笑いながら小笠原先生が指差したのは、言うなよって言いたげな顔をして手を降っている立花先生だ。


「毎日聞かされてるのよ。春日君たちがどうのーって。それこそ耳にタコが出来るくらい。お陰で顔も知らなかったのによく貴方達のこともよーく知ってるわよ」


それなら一応最低ライン信用出来るに値する……のかな?


「昨日あった事なんすけど……」


2人の教師は時折相槌を打ちながら俺の話しを真剣な眼差しで聞いてくれた。




「どう見ても黒ね。校長も。生徒指導も。その生徒もね」

「だけどその証拠がないと……春日。嵌められたな」

そう言いつつも膝におかれた手が震えている。

この人、生徒の事に熱い先生なんだから普段からちゃんとしてればいいのに。


「悠太が言うクソ野郎が情報をSNSに書き込んだ証拠も、クソ野郎と教師が繋がってる証拠も、リーク者がいるのかも、全部そのクソ野郎に繋がってるんだから、そいつに吐かせればいい」


琥珀さんは強制的に吐かせろと言いたいのだろう。

だけどそんな事ができるのは、映画の主人公だけだ、現実問題この状況で俺が手を出そうものなら退学をくらうだけ……それこそアイツらの思い通りになってしまう。


「片山さん、それは過激すぎよ」

「だけどそんな卑怯なやつ許しておけないでしょ!」

「琥珀さん。俺もそれには反対です」


小笠原先生が琥珀さんに窘めるが、流石正義感の塊である琥珀さんが言うことを聞くわけが無い。


「ようは少年の立場が悪くならなければいいんだろう?私に任せろ」

ボリュームのあるご自分の胸を叩いて琥珀さんが言った。


「それでも。琥珀さんに何かあったら麗奈も俺も悲しみます」


「少年は私の事信用してくれないのか?」


「信用出来る出来ないじゃなくて万が一ってこともあるでしょうが」


「大丈夫だ。私に失敗はない。暴力も振るわないから退学の心配もない。だから私に任せてくれ」


深紅の熱気に満ちた瞳が俺の瞳を捉えて離さない。

俺も物事を起こすとき、割と自信家なところはあるが、この人はその上を行く自信家だ。


「この際だ。任せてみたらどうだ?片山も暴力は振るわないって言ってるんだから危ない事はしないんだろ?」


「流石立花先生!話がわかる!」


何を血迷ったんだ……ほら立花先生がそんなこと言うから琥珀さんももうやる気満々じゃん……。

小笠原先生も概ね俺と同じ事を思っているようで、大きなため息を吐いている。


「麗奈はどうなんだ?」

俺の隣で大人しく座っていた麗奈に話を振る。

困った時は麗奈に振るに限る、この暴走機関車を操縦出来るのは麗奈だけだ。きっと、止めてくれるだろう。


『お姉さんは君が止めても琥珀と動くよ。私の色を奪うなら私はそれを全力で守る』


麗奈までそう言うんじゃ俺には止めようが無い。乗った列車は地獄行きか、天国行きか。それよりも。


「麗奈の色?」


俺が問いかけると麗奈が無表情のまま硬直した。

少ししてスマホをタップし始めるが、操作する指は画面の上をゆらゆらと漂っていて動揺を隠せていない。


『君は、お姉さんの世界に色をくれたから』


麗奈は打ち切った文章を戸惑いながらも見せてきた。俺はその文書に思わず目を見開く。


麗奈も俺と同じ……。

戻りかけた色が鮮明により鮮やかになった気がした。


『だから、私は悠太が止めてもやる。私の悠太を傷つけた事を一生後悔させる』


その文章を俺に見せて、麗奈は俺の手を握った。

『いつも傍に居てくれてありがとう。約束する。私はこれからも悠太の傍に居たいから危ないことは絶対にしない。琥珀にもさせない。だから安心して』


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