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3頁


間もなくして、麗奈が階段を上がる音が聞こえると、真っ直ぐ俺の自室へとやってきた。

男が浴衣を着る事自体は、普通にある。だからこれは、女装じゃない……。


「着付けなんて出来ないから着せてくれ」

麗奈に浴衣を押し付けて、服を脱ぎ始める。

……今更恥ずかしくもなんともねえ。


パンイチの状態になると、麗奈の手から浴衣を取って羽織る。

「後は頼んだ」

とだけ告げて腕を広げると、麗奈が帯を巻いてくれるのを待つ。

だが麗奈は帯を巻くどころか、スマホをいじり始めた。


『浴衣は下着を履かないんだよ(//∇//)』


「あー、今からでも普段着に着替えようかなー」

『嘘嘘(゜o゜;;冗談だよ』


どんだけ俺に浴衣を着せたかったんだよ。こいつは。


「なら早くしてくれ」

こくりと頷いてようやく着付けが始まり、慣れた手つきで、帯を巻いてくれた。


『次はお化粧とヘアメイクだね(*´ω`*)』

「そのままでもいいだろ」


『でも、その着付け方、女性用にしてあるから、そのまま行くと変だよ?( ・∇・)』


ギリっと唇を噛む。流石に人が大勢集まる場所で、自分が春日悠太だと、バレる格好では歩きたくない。

クラスメイトにバレた日には、女装して出かけるのが趣味の変態野郎、などとレッテル貼りをされ、俺は晴れて一族の面汚しだ。


「ちくしょう……メイクも頼んだ……」



――――――――――――――


メイクも終わり、家を出ようとしたところで、姉ちゃん達より一足先に、仕事から帰宅した神田さんと鉢合わせをした。

浴衣姿の俺たちに興奮気味の神田さんをそのまま拉致ってパーティに加え、祭りに行くことに。


この人は変態だが身体能力が高いから、ボディーガードとして優秀だ。


バスに揺られ、電車に揺られ、たどり着いたのは、隣町の駅のホーム。

ホームは祭り行きの人でごった返していて、ここから手をつないで歩かないと、すぐに逸れてしまいそうなので、麗奈と手を繋いで歩く。

後ろを歩く神田さんがで、羨ましそうな見ていたが、無視した。

餌を与えると調子に乗るからだ。


駅の改札を抜け、街の方へと歩を進め、広がる街並みを見ると、直ぐに第五十一回七夕祭りと、デカデカ書かれた垂れ幕が垂れ下がっている。


「ふー、移動だけで少し疲れたな」

垂れ幕を前にして、内心を吐露する。

これだけ人が多い場所に来るのは、久しぶりで俺は既に気疲れしてしまっている。


「そうねえ。私もお祭りに来るのは、子供の時以来だから、入る前から気疲れしちゃうかも」


神田さんも同意見のようで、家を出た時のような元気に溢れた表情は、消え去っている。


『でも、きっと楽しいよ(*´꒳`*)まずは腹ごしらえだね!祭りといったら焼きそば!焼きそばを食べようよ!』


焼きそばねえ……そういえば雪兄がこの祭りで焼きそばの屋台を出すって、言ってた気がするな。

祭りのゴムみたいな、焼きそばも嫌いではない。あれはあれで味があってよろしい。


それでも美味いものがあるなら、そっちを選ぶ。どうせなら美味い方を食いたくなるってもんだ。


「雪兄の屋台を探すか」


『この人混みの中で?(゜o゜;;』


麗奈の言う通りだ。人。人。見渡す限りの人、この状況じゃ、例え看板は見えても、立ってる人を確認して回るのは、骨が折れそうだ。


「……そうだ!」

スマホを取り出してラインの画面を開いて雪兄の名前を探し、トーク画面を開く。そして『位置情報を送ってくれ』と送信した。


「位置情報をくれって送ったから、忙しくなかったらすぐに帰ってくるだろ。少しだけ待機だな」

すぐに携帯が震えた。返事が返ってきたみたいだ。


『祭りに来たのか!( ・∇・)ここにいるぞ!』

と言う一文と共に、位置情報のついたメッセージが、画面に表示された。



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― 新着の感想 ―
[一言] 麗奈と悠太のやり取りが微笑ましいです。悠太もただの女装マンではないですねー、率先して手を引くあたりに男の子を感じました(`・ω・´)ゞ 麗奈の絵文字にその本心がヒシヒシと感じるのも素敵です。…
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