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親父からの連絡が来ないまま、日にちだけが過ぎていった。
進展のなさに少しのもどかしさを覚えつつ、学校では忘れるよう努力をしている。
校内から聞こえる周りの喧騒がいつもは気にならないのに今は煩わしく聞こえる。
今は昼休み、クラスメイト達は仲のいい同士机をくっつけて弁当をつついている頃だろう。
俺も目の前にある用事を早く終わらせて、蓮さん特製の弁当を食いてえ。
「それで、急に呼び出してなんだ?」
そんなわけで俺は飯も食わず、ある男子生徒に呼び出されている。
名前も知らん。
いきなり教室に来て「春日悠太って奴ちょっと来い」って頭の悪さ丸出しで呼び出されたからちょっぴり機嫌が悪いのはそのせいだ。ついでにこの暑さも、これは八つ当たりだが。
身長は俺より高く170くらい、顔は黙っていればイケメンと呼ばれる部類には入るだろう。
名前は知らないが同級生で目的すら聞いてねえから、構わずタメ口を使わせてもらう。
「単刀直入に言う。あの人に近づくな」
まあ、ずっと一緒に居たからな。しかもあんな美人。
いつかはこう言う輩が出てくるとは思っていた。
「あの人って?」
分かってはいるが、一応念の為尋ねてみたり。
「秋山麗奈さんの事だよ。なんでお前みたいな男女があの人のとなぐふぁっ!!!」
ハッ、つい知らねえ奴から男女って言われて手が出てしまった。
しかも腹パン一撃で気絶しちゃうとかやっぱ最近の若者は鍛え方が足りてない。
くだらない内容だったし、さっさと教室に戻るか。
熱中症になったら大問題になるだろうな。
俺は名前も知らない憐れなやつを日陰にそっと寝かせ、弁当を食べるべく教室へと歩を進める。
「待て!逃さんぞ!」
なるほど、回復は早いのか、ゴキブリみてえだな。
それよりも逃さないと言うならお前は既に一回俺に負けてるんだけどな。
「くだらねえ話に付き合ってる暇はねえんだよ。腹減ったし飯くらい食わせろ」
「俺の話がくだらないだと!?」
「充分くだらねえだろ。いきなり名前も知らない奴に呼び出されて?何を言ってくるかと思えば麗奈に近づくな?外野が何言ってんの?」
俺にとってはそんな話しクソほどどうでもいい、俺と麗奈がどんな理由で一緒に居ようが、事情も知らない奴に口を出される筋合いはない。
「お前はあの人の隣に立つには相応しくないって言っている!」
「どう言った点で?俺にはわかんねーから説明してくれるか?」
主語のない言葉ほどどうでもいいものはない、なぜ分かってくれないのか。
「お前みたいに人の助けを借りないと学校にも来れないような奴はあの人のお荷物になるだけだ」
そこまで俺のトラウマの噂が広がってるのか。
でも、俺がここに1人で来てる時点で、男性恐怖症に関しては良くなって行ってる事は少し考えてみたら分かると思うんだけどな。
「お前は俺にどうしてほしいんだ?」
「あの人から離れろ。お前はあの人を不幸にする」
「単純に離れて?それでお前はどうするんだ?」
「俺があの人の癒しになろう、そしていつか笑顔を取り戻させて見せるんだ、俺の手で」
俺を蹴落としてお近づきになりたいだけかよ。
ちょっとは理性的に会話ができるようになったと思ったが残念だ。
「なるほどな、お前の言いたい事はわかった、それで、お前が麗奈に執着する理由はなんだ?麗奈の顔か?」
ここまで俺をイラつかせて理由が顔だけなんて言ってきた日には2度と歯向かう気も起きないようにしてやる。
そんな俺の気配を察したのか、奴は一歩怯んだ。
「顔も美人だが、妹さんを亡くされて尚一人で生きていこうと言うあの人の強さ。そして何人も寄せ付けない高嶺の花。俺は彼女のそんな所に憧れているんだ!」
なんだ、大したエピソードも無くただ表面上の麗奈が好きなだけか。
「諦めろ。お前が見てる麗奈はお前の幻想だ」
残酷だけど真実を思ったまま告げてやる。
これで諦めてくれるとは到底思えないけど。




