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「それってどういう……!」
動揺する俺の両肩を麗奈が掴んで引き寄せた、麗奈の胸に体が吸い込まれたがくっついた時、俺の視界で夜空に大きな花が咲いて、大きな夏の音にびっくりした麗奈の肩がピクリと跳ねて止まった。
麗奈の吐息が鼻に当たってくすぐったい、無表情でやる気のなさそうな切れ長目のオレンジがかった瞳には俺だけが映っている。
心音は高鳴り、熱が出た時のように顔が熱くなってきた。
いくら俺に妹の面影を重ねてるからってそこまでしなくても。
「チューしないの?」
「やれー、ぶちゅっと行っちゃってください〜」
姉ちゃんと沙織さんが野次馬根性丸出しで酔っ払い親父のように水を差してきた。
「うるせえよ。信じるから、麗奈もキスなんてしなくていいぞ。気持ちは伝わってる」
俺も健全な高校生男児な訳で、柔らかそうな麗奈の唇が惜しかった訳では……ないことも無いけど、その相手は今の俺じゃない、真姫ちゃんか、麗奈が将来を誓った相手だ。
『そう?ならいいけど。それじゃ、花火見に行こっか』
気持ちが伝わってると言ったのになんで不機嫌そうな文章と雰囲気を漂わせてるんだよ。
「でもまだ片付けが終わってないぞ」
麗奈が俺の手を取って強引に歩き出した。
『そんなのは大人に任せておけばいいんだよ(๑ ́ᄇ`๑)』
それもそうか。普段から大人を頼れって言われてることだ、ここは良識ある大人に任せておけばいい。
「伏見。片付けはお願いしますね〜。ほら、菜月さん私たちも行きましょ〜」
「そうね。花火見逃しちゃうわ」
「お、お嬢!わかりやした!伏見にお任せくだせぇ!」
この場で良識のある大人は伏見さんだけだったようだ。
涼夏が場所取りしてるはずの場所を目指すも、人混みを縫って行くには立ち止まってる人が多すぎて、涼夏から聞かされた場所にたどり着けそうにもない。
更に不幸は重なるもので姉ちゃんと沙織さんとも途中でハグれてしまった。
『もう諦めて2人きりで見よっか』
「そうだな、この人混みじゃ探すのも面倒くさいな」
『手を繋いでてよかったねー。ほんと、悠太ともハグれてたら心細くなっちゃうよ(´。・д人)シクシク…』
「だから、この手は離すなよ」
麗奈が1つ頷いて花火を見始めたので、俺も空を見上げる。
空のキャンバスに弾けては消えていき、見るものを楽しませる姿は本当に、儚く散っていく花のようで感動を覚える。
俺一人で見てもこんな事は考えなかっただろう。
涼夏や姉ちゃんと見てもはしゃいでる姿を見て満足していただろう。
何も話さない麗奈と見ているからこそ、花火が綺麗に見えるのかもしれない。
何かを伝えたくて、麗奈の方を見る。視線は真っ直ぐ花火を捉えていた。
ここで何かを言うのも野暮か。
お互い無言のまま花火を見上げ、2人だけの時間が過ぎていく。約束だけの曖昧な関係を残して。
『綺麗だったね』
ひとしきり花火を見終わり、縁もたけなわという事で徐々に人が道から捌けていくのを、眺めながら麗奈が言った。
「あぁ、久しぶりに見たけどやっぱ迫力があるな、ドーンって。近くにいるだけ音もでけえから分かっててもビックリしちゃうよな」
『ふふふ、君も楽しんでくれてるようでお姉さん安心した(o´艸`)』
行きたくなかった理由がトラウマだけだったしな。来た瞬間こそトラブルはあったものの、あの後は特段なんのトラブルも起きなかったから純粋に楽しかったと言える。
「麗奈は、楽しかったか?」
『それを聞くのは野暮ってものだよ少年』
麗奈はスマホに打った文章を見せた後、誰のモノマネをしてるか分かりやすく、両手を腰に当てて仁王立ちをした。
「っくく、琥珀さんの真似かよ」
そういえばあの人は見かけなかったな。誰か他の友達と来てるのだろうか。
2人で笑いあった。片方は無表情だけど。雰囲気だ。




