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「お祭り来るのに久しぶりだねー」
伏見さんが買ってきたりんご飴をデザートに舐めながら姉ちゃんが言う。
花火の時間までもう少しあるから、沙織さんの店仕舞いを手伝っている。俺たちと花火を見るために今日は早めに閉めるようだ。
涼夏達にはボディーガード神田さんをお願いして、花火を見る為の場所取りをしてもらっている。
「そうだな」
テントの紐を解きながら片手間で姉ちゃんの話に付き合っている。
「これからは毎年こようね……でも、そうだなー、悠太に恋人が出来たら一緒に来てくれなくなっちゃうのかなー!」
ニヤニヤ顔の姉ちゃんが言った。
そんな事気にしなくても俺に今は恋人を作る気が無いことくらいきっと姉ちゃんも分かっているはずなのに。
『菜月、私に任せて、悠太に変な虫が付かないよつに私が見張っておくから(*•̀ᴗ•́*)و ̑̑』
そりゃあ頼りになるな。でも学校でも言い寄られた事なんてないから無駄だぞ。
俺の事よりも先に姉ちゃんが恋人を作って欲しいと思う今日この頃。
「姉ちゃんはいい人居ないのかよ、会社とか」
続けて雪兄とかって言いかけるがやめておこう。こう言うのは外野が口に出して意識させると気まずくなって離れていく気がする。
「居ないよ。それに今は考えられないかなー。弟が可愛すぎて他の男性に目がいかないというか。ふふふ、案外売れ残っちゃうかもね」
自虐気味に言ってけたけたと笑う。
「じゃあ、売れ残り同士があの家で仲良くやってくか。これからも」
「そんなこと言ってたら唯ちゃんと涼夏に怒られちゃうぞー」
「私にも、ですね〜」
残った射的の景品を片付けていた沙織さんが恋人候補に名乗りを上げてきた。
好きって感情を素直に表現してくれるのは、嬉しくないこともないけど、ちょっと恥ずかしい。
それと同時に自分に今その感情が抜けているだけあって真剣な彼女達に答えて上げられないのがもどかしい。
振ってしまうのは簡単だけど、どいつもこいつも待つ、と言ってくれているのだからそれに甘えてしまう気持ちが勝ってしまう。
「今は答えられなくてごめん」
「そんな気を負う必要は無いですよ。私達はまだ出会ったばかりなんですから〜ゆっくり心の傷を癒して、それから考えましょ」
そんな甘えっぱなしのままじゃいけないとは思ってるんだけどな。待たせている間に嫌われちゃったりして。
『大丈夫だよ。どんな事になってもお姉さんが傍に居るから』
そんな俺の気持ちを汲み取ったのか、麗奈が優しく言葉をかけてくれる。
それと同時に、麗奈はどうして俺に対してこんなに優しくしてくれるのかが気になる。
もしかして、亡くなった妹の真姫ちゃんの影を俺に重ねているのだろうか。
「ありがとう」
それでも麗奈がくれる言葉は俺の卑屈になりそうな心に安心感をくれる、だからその気持ちに答えるようポツリ呟いた。
『任せて。秋山麗奈は約束を破らない、君はお姉さんが守る(*•̀ᴗ•́*)و ̑̑』
「普通逆だろ、俺が守るほうじゃないのか」
まるでアニメのカッコつけたキャラみたいなセリフにクツクツと笑いが込み上げて、堪らず吹き出してしまった。
『笑った。君がこの街を平和にしたいように、お姉さんは君の心の平和を守るとするよ(*´ω`*)』
かっこつけが気に入ったのかな。やたら口説きにかかってくる。
「じゃあ俺の事は任せたぞ。これからも無茶はやらかすかもしれないけど、約束だけは守る。そうお前と約束したからな」
そう、俺達は不器用な約束によってお互いの傍にいる事を誓った。
麗奈もいつかは恋人を作ったり、独り立ちをしたり、この関係がいつまでも続くとは俺も思ってないけど、何らかの形で続けて行けたらと思う。
『だから傍に居るって、信じられないならここで証明してあげようか?(≧▽≦)』




