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「この子実は高校生なんですよ〜、」
怒れる俺の代わりに沙織さんが答えた。
「あ……ごめんねぇ。でもほんと可愛い、お姉さん1回おいくらですか?」
「300円です〜うちは重石付けてないから取り放題に近いですよ〜」
あまりそれを主張しすぎると他の店は付けてるって言ってるのと同意義なんだけど、本当なんだから仕方ない。
昔何回やっても取れなくて銃口で小突いて落とそうとしたのが出店のおっちゃんにバレてしこたま怒られたのを思い出す。
あの時だな、バレるズルはしちゃいけないって学んだのは、ズルはバレないようにやる、幼少期の俺は涙目で心に固く誓った。
「ほんと!?じゃあ1回分お願いします!!」
「はい〜毎度あり〜それじゃ由奈ちゃん弾を渡してあげてくださ〜い」
俺に向けて、野暮ったいメガネの奥の瞳をウィンクさせる沙織さん。
この人、俺をバイト要員として良いように使う気だな?
だが、この人にはヤクザの件、静香の件、焼肉屋の件、返しきれない恩が沢山ある。
しかも一つ一つがこの人の人生を決めさせてしまったり多大な金額の金を使わせたりと、迷惑ばかりかけてる癖に何も返せちゃいない。
「どーぞー、ばんばん撃ち落としちゃってください」
「ありがとうっ!君に良いとこ見せるねっなーんて」
冗談を言って自分で笑う女子高生とその後ろに居る女子高生の友達。
「ごめんなさいねえ〜急にバイト扱いして〜」
「別に良いよ。こんなんじゃ返せないほど恩は貰ってるから」
この女子高生達を皮切りに女性客、美人な沙織さん目当ての男性客がズラズラと増え始めた。
憐れ伏見さん、閑古鳥が泣いてた原因はやっぱりあんただったよ。
沙織さんを手伝いながらドンドンと客を捌いていく、時折ナンパ目的で近ずいてきたならず者は沙織さんが適当に話しをぶった切って適当に散らしてくれた。
麗奈と神田さんは店の中で取った景品を持って、ただただ俺が働く姿を楽しそうに眺めていた。
麗奈は話せないから仕方ないにしろ、神田さんは少し手を貸してくれても罰は当たらないと思うんだが。
「沙織さん来ましたよー!!ってあれ?悠くん??」
「あれ?悠太今日は断固として家から出ないって言ってなかった?」
「そうね。私たちがあれだけ誘ったのにこなかったものね」
気まずい。その一言に尽きる。
花火の時間も近くなって来て、ようやく客も捌けた頃、唐突にやって来たのは我が家の隣に住んでいる幼馴染の麻波涼夏とその友人の佐々木美鈴と佐藤唯。
3人ともそれぞれ浴衣に身を包んでいて、これを見れただけでも眼福だ、とクラスにいる男子ならそう思うだろう。
「悠太……さんって誰ですかねぇ、私は由奈……ですけど」
「そういうの良いから」
涼夏に割とマジトーンで返された。怖いよぅ。
「あら、今日は由奈だったのね。私達の誘いを断って麗奈さんと祭りに来た悠太くんでは無いのね。もしそうなら引きちぎる所だったわ」
唯がなにかを握りつぶすジェスチャーを取る。
夏の夜長の蒸し暑さを吹き飛ばすには最適で、悠太の悠太がひゅんひゅんと悲鳴をあげている。
「まあまあ、涼夏、唯、そんなに怒らなくても良いじゃない」
「……美鈴」
なんて良い奴なんだ、こいつから俺を助ける言葉が出る日が来るなんて思わなかったぞ。
「そのお陰で私は沢山涼夏と触れ合えたから居なくてよかったわ」
そうだよな、お前はそうだよな。でも今日は許す。
「仕方ねえだろ。俺が行かなきゃ1人で行くって言うんだから。いざという時危険だろ?」
「ふーん、だから麗奈さんも誘っても来てくれなかったのね」
唯が麗奈に視線を送ると、麗奈が得意げにVサインを唯に向けて見せ、顔の角度を斜め上にして、ドヤ顔をしているが無表情がより一層煽ってる感を際立たせている。




