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「早く、これで……そうですねえ〜あの人形の頭を撃ち抜いてください」
「いやいやいや、これ、本物だよな!!!」
グイグイと体に押し付けられたそれを押し返して拒否する。
こんな往来の場で拳銃をぶっぱなそうものなら直ぐに警察がくるだろ!
「大丈夫ですよ〜、周りも騒がしいですし。1発撃ったところでクラッカーか何かと間違われるだけですよ〜」
それでも人形の頭が吹き飛べば誰かが気づくだろう。
「いやいやいや、誰かしら見てるでしょ!俺が捕まったら大問題なんだよ!」
学校は退学、最悪は家に連れ戻されて軟禁される間である。そんなん姉ちゃんに申し訳が立たねえ!!
「まぁ、これはただのモデルガンなんですけどねぇ〜ビビりすぎですよ〜」
「……これは没収しておく」
沙織さんからモデルガンを取上げ浴衣の中に隠した。
「モデルガンを改造した本物と謙遜ない殺傷力のある玩具なんですけどねえ〜」
隠したモデルガンを沙織さんに押し付けた、こんなもん1秒でも持っていたくない。
「まあそれも嘘なんですけどねえ〜。これでもこけ脅しくらいにはなるから悠太くんにあげますよ〜」
本当万が一を考えての事なんだろうけど、嘘か本当か分からないから持ちたくないと言うのが本音だ。
そもそも俺達は何処にでもいる普通の高校生だからこんな物は持つ必要がない……とは最近言い切れないのが腑に落ちない。
対内藤社長戦で役立つかもしれない。一応受け取っておくか。
「ありがたくもらっておくよ。それじゃ射的用のライフルをくれ」
「え〜試し打ちしなくていいんですか〜?自分の相棒になる物なんだから威力も知っておいた方がいいと思いますけど〜」
「だからこれはモデルガンだよな?音だけだよな!?」
「ふふっそれは引き金を引いてみてのお楽しみですよ〜。ちなみにクーリングオフは受け付けておりませんので〜」
へらへらと笑う神田さん、ほらこの人に会うと時間を使うだろ?しかも精神をだいぶ削られる。だから避けて通りたかったのに捕まる始末、運が悪かったと諦めるしか無い。
「考えてる事が顔に出てるのはわかりやすくていい反面、こういう時不便ですよねえ〜、景品の横に並んでもらえますか?本物か試してやるよ」
沙織さんがメガネを取った、美人の睨み顔は綺麗で、それでいて怖い。
「すみませんでした……マジ急いで帰らないと仕事帰りの姉ちゃんを出迎えられないんで……」
「なら菜月さんも呼んだらいいんですよ〜花火の時間までもう少しありますし〜」
確かこの祭りの打ち上げ花火の時間は20時半からだっけ、今が19時前だから、姉ちゃんが今から来ても間に合うか。
「でも仕事で疲れた姉ちゃんを呼び出すのもなぁ……」
尻込みする俺を放って沙織さんはポケットからスマホを取り出すと、どこかに電話をかけ始めた。
「こんばんは〜菜月さん。お仕事どうですか〜?…………今終わったところ、そうですかそうですか」
姉ちゃん今仕事終わったところか、今日も大変だったんだな。
「悠太くんが話したがってるので、ええ、今代わりますね〜」
俺の姉ちゃんを労る気持ちも露知らずはい、と笑顔の沙織さんがスマホを渡してきた。
自分で誘えって事だよな、言い出しっぺは沙織さんなんだけど……。
「悠太?どうしたの〜?お祭り行かないって行ってたけど結局行ったんだね。麗奈ちゃんにでも誘われた?ふふっ」
スマホから聞こえる姉ちゃんの声はとても優しい。
「あぁ、麗奈が行かなきゃ1人で行くって言うから仕方なくな」
「ふふっ、悠太は麗奈ちゃんには甘いもんね。それでどうしたの?迎えに来て欲しいの?」
「いや、急いで帰りたいとこなんだけど意外に時間を忘れて楽しんじゃってな。本当は姉ちゃんを家で出迎えようと思ってたんだけど」




