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例えこの場で、事件の犯人が捕まるまで夏休みは出歩かないように注意喚起を促そうが、体力が有り余った生徒達は言う事を聞かない。
それどころか自分は大丈夫。まさか自分がそんなことに巻き込まれる訳が無い。と多少の危機感を持つこともなく出歩くだろう。
そう考えると犯人探しをするとしても夕方まで拘束される補講は痛いな……。
「皆さんお静かにお願いします」
進行役の先生の声がスピーカーを通して拡散され、体育館内は静寂を取り戻した。
「理事長先生を見るの入学式以来ね。全校集会とかでもあまり出てこないもの」
隣の美鈴が教えてくれた。だからみんな聞き分けよく静かにしてるのか。
「先程も言った通り、理事長先生から皆さんへ緊急のお話があります」
進行役の先生が言うと、理事長が壇上に向け歩き出した。
トン、トン、と壇上に上がる理事長の足音だけが響き渡る。理事長の顔は、理事長室で見た時と同じ真剣そのものだ。
壇上に上がりきり中心までやってくると、進行役の先生に軽く礼をしてマイクを受け取った。
「今日から夏休みに入る皆さんには少し、酷な話かもしれませんが、皆さんの身の安全にも関わる話なので真剣に聞いてください」
昼休みに聞いた話し方からは想像できねえな。
「昨日本校の生徒が、行方不明になりました。1年の石田由美さんなのですが……実は本校以外にもここ3日で立て続け3人が行方不明になっています」
行方不明。と聞いてさっきまでの喧騒が嘘のように、体育館中が重々しい空気によって満たされた。
被害者の名前、どこかで聞いた事がある気がする。
涼夏からか?ヤバい……思い出せない。
「昨晩。石田さんのご両親と警察の方々を交えてお話ししあった結果、ニュースで大々的に取り上げて、警察の方でも捜査してもらえる事になりました」
そこでお願いなのですが、と理事長は付け加え。ぐるっと体育館内の生徒たちを見渡した。
「我々教師も聞き取り、見回り等、警察の方々への捜査に全面的に協力して、事件解決へと取り組みますので、皆さんも夏休みと言うことで出歩きたくなる気持ちもあるとは思いますが。次の被害者を出さないよう出歩くのを控えてください」
それで言うと、俺と麗奈は強制的に出歩くことになるんだけど良いんだろうか。
いやむしろ、心配してるだけ、学校に縛り付けて置いた方が理事長的にも安心なのかもしれない。
こうなると決まっていた補講でさえ、理事長と俺の事情を理事長にリークした人間の陰謀に感じてしまう。
勿論そんな訳が無いのは分かっているつもりだ、事件が始まったのは3日前が始めて、補講自体は5月には決まっていた。
「我が校始まって以来の大きな事件です。事件早期解決の為にも我が校教師、生徒一丸となって協力してください。万が一、何か知っている生徒がいたら担任の先生方を通して情報提供をお願いします。それから、くれぐれも、解決に乗り出そうとして自ら危険な真似をしないようにお願いします」
最後の一言は、ピンポイントに俺を見ながら言った。
言われなくても分かってるよ、て言うか俺も明日から補講で捜査に出ることすら出来ねえ。
とはいえ、犯行は夕方以降の犯行。補講が何時までか知らないけど、終わってからでも充分時間はある。
でもそうなるとわざわざみんなを夕方に呼び出して捜査するのもリスクだ。解散した後になんて事があったら目も当てられない。
この件は俺と麗奈、琥珀さんで動くとしよう。
「これで私からの話は以上になります。重ねて言いますが、くれぐれも出歩かないようにしてください。それでは楽しい夏休みをお過ごしください」
理事長が話を終わらせ、壇上から降りて体育館から出ていった。
夏休みを楽しめって、テンプレだけどこの状況でそれを言ったところで皮肉でしかないだろ。
理事長が出てってから数十秒、話し始めるやつは愚か、みんな黙ったまま、怯えて顔を引きつらせてやる奴もいる。




