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麗奈と別れ教室に戻ってきた俺は、教室の扉を開くと直ぐにクラスメートの喧騒の中、幼なじみの姿を探す。唯と話しているようだ。
「あっ!悠くんおっかえりー!何を叱られたの?」
俺がゆっくりと歩み寄ると、俺の存在に気がついた涼夏の方から、興味津々に話しかけてきた。
「叱られたなんて決めつけたら可哀想よ涼夏」
唯が涼夏の肩を叩いて嗜める。
「叱られてはないんだよ、忠告はされたけど」
俺が言うと2人は、何を言っているか分からないと言った様子で首を傾げた。
流石にクラス内でこの話は出来ねえよな。騒いでる奴ばかりだから周りに聞こえないとは思うけど……念の為ここでは黙っておこう。
「まぁ、本題はここじゃなんだから後で話すよ」
「ふーん、わかったぁ」
涼夏はふにゃりと可愛らしい笑みを浮かべた。
幼なじみ間で隠し事は無し、と言う制約が俺と涼夏の間にある。
と言うかそんな決まり事を作らなくても、俺の顔色ひとつで、涼夏に見抜かれてばかりの俺は、こいつに隠し事をすること自体が無駄だとさえ感じている。
「もうすぐお昼休みは終わりだけれど、お弁当を食べなくていいのかしら?」
「飯なら理事長と食ってきた……て言うか呼び出したのが理事長だった、呼び出された理由もそれだ」
「……まさかご飯食べるためだけに、校内放送で呼び出したされたの?」
唯は手を顔の前に持っていきあっと驚く。その後ため息混じりに聞いてきた。
「そんな感じ。校内放送は立花先生だけどな」
「あの人何やってんのよ。前の事だってあるから校内放送で呼び出しなんてしたら春日くんが悪目立ちしちゃうじゃない」
「たはは……きっと面倒くさかったって言うんだろうね」
「だからな、仕返しはきちんとしてきたぞ」
仕返しと聞いて2人は目を見開いた。
「なになに?フルボッコ?」
と質問してきた涼夏の顔は意地悪そうにニマニマとしている。
「おう。奴の心をフルボッコにしてきたぜ。」
「ふむ、立花先生をフルボッコ……私も興味あるわね」
このドSどもめ、まああんなダメ先生の事なら聞きたくなるよな。俺も先生が泣かされたとか、失敗したとかって話なら嬉々として聞くね。
慰めたり……とかはしない。多分。
「まああれだ。クラスの女子が言ってた事をな。減給寸前の彼に笑顔で伝えてやった」
自分でやっといてなんだけど、結構えげつないことした気がする。目の前で2人が両極端な反応を示しているからだ。
涼夏はぶわっと目に涙を溜め、唯は満面の笑みを浮かべている。
「ゆ……悠くん……それはいくらなんでも残酷だよぅ……」
「何言ってるの涼夏、あんなダメ教師、どうなってもいいじゃない。何を言ってどんな顔してたのか詳細に聞きたいわ」
唯にドSな一面があったなんて初めて知ったぜ。それとも俺が唯の事を勝手に優しい女の子だと勘違いしていただけで、これも唯の素なのかもしれない。
「なんだ唯……珍しく殺意たけぇな」
俺が言うと唯は自分の豊満な胸に目を落とした。
「あのエロ教師が私の胸ばかり見て喋るものだからつい、ね。涼夏も感じたことくらいあるでしょ?」
唯の胸に目をやり悔しげに口をへの字に曲げ、自分の無い胸に手を当てた涼夏は、パッチリ二重の瞼をぱちぱちと瞬きを繰り返した。
「……う、うん!あるよ!あるある!ヤラシイよねー!」
「嘘ね」「嘘だな」
「なんでよ!!唯のバカ!悠くんもバカ!アホ!マヌケ!」
どちらかと言うと涼夏に、その手の話題を振った唯の方が悪いと思うんだけど。なんで俺の方が悪口の数が多いんだよふざけんな。
「涼夏。図星を突かれたからって騒がないの」
涼夏を慰めるように唯は涼夏に慈愛の眼差しで見つめ、優しく抱き締めた。
豊満な胸に包まれ「離せー!」と暴れる涼夏の言う事を無視して唯は涼夏に「落ち着きなさい」といい聞かせ背中を叩く。




