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「今は大人しくしときます」
「約束よ。くれぐれもね」
わざわざ約束って言葉を強調して来やがったよな今。どこまで俺のこと知ってんだよ。
味方だけど要注意人物かもしれねえな。正直底がしれない。
「俺だって進んで首突っ込みたい訳じゃないっすよ。この街で好き勝手させたくないだけっす。手の届く範囲で」
「力なき正義はいつか潰されるわよ」
「わかってますよ。だから手の届く範囲です。それじゃ、幼なじみ達も心配するんでそろそろ行きます。ご馳走様でした」
「ええ、次はその幼なじみさんも一緒にご飯しましょ!」
切り替えが早いな、俺が話を終わらせて立ち上がったら、真剣だった理事長の顔は元の笑顔に戻った。
「分かりました」
了承して麗奈と共に理事長室を後にし、床に伏したまま、おめおめと泣いている立花先生を跨いで通り過ぎ、職員室を出て麗奈と顔を見合わせる。
俺が無言で頷くと同じタイミングで麗奈も頷いた。
実際に誘拐されたことのある麗奈は、その恐怖を直に味わってる、だからそいつらの不安な気持ち、恐怖が分かるよな。
俺も麗奈を失うかもしれないと言う焦燥感、恐怖を味わっている。
だから俺達がやることはひとつ。
「俺達もこの件を捜査しよう」
『私たちで犯人を見つけよ』
今という言葉は非常に曖昧だ。時には時間を指したり或いは状況を指したりして。
だから理事長室に居た時間を今とするなら理事長室を出てしまえば、もう理事長との約束は果たした。つまりはただの屁理屈だ。
俺の友達は涼夏を筆頭に女子率が高い。その友達に何かあってからじゃ遅い、犯人を捕まえるまで行かなくとも、何かしら手掛かりを掴めれば、それを警察に提供してもいい。
「取り敢えず全校集会と明日のニュース待ちだな」
教室までの道のりを麗奈と歩きながら俺は言った。
『生徒の名前も顔も分からないんじゃ聞き込みのしようも無いからね』
俺の思考をトレースするように麗奈が答えた。
「んー……もどかしい」
『今日発表されて明日辺りニュースになるのかな?だとしたら今日中に何とかしないとね』
「俺もそう思う。ただ、今日何とかするにしても……そうだな。麗奈はどうしたらいいと思う?」
俺が聞くと麗奈は可愛くない首を傾げ、頬に手を当て考える素振りを見せた。
ハッキリ言って策も情報もない。気持ちだけ先走ってる状態だ。
しばらく考えた後、麗奈はスマホに文字を打ち始めた。その手は気持ちを表すように拙い。
『お姉さんが囮になろう』「良い訳ねえだろ」
わざわざお前が進んで怖い思いをする必要はねえよ。
それなら俺が………………はぁ。仕方ねえ。
「俺がやる。涼夏の制服なら着れるだろ」
『どうぞどうぞ、妙案だね(o´艸`)』
…………こいつ、謀ったな?
「お前わざとか?」
『なんの事だか、お姉さんは誘拐された子達を助けたいだけだよ(*°∀°)=』
絶対嘘だ、この状況でも自分の欲望に忠実な奴め。呆れた……と言いたいところだけど、これくらいが丁度いい。
あまり被害者に気持ちを入れ過ぎると視野が狭くなる。
「はぁ」
俺は形だけのため息をついた。
『髪も化粧もしようね(*´ω`*)琥珀に声掛けておく(*°∀°)=』
「精々絶世の美少女にしてくれ……」
俺がげんなりした顔で言うと麗奈は力強く頷いてLINEの画面を開いた。
チラチラと見える画面には『悠太に女装させるから協力して!今日!放課後!』と書かれていて、とてもじゃないが誘拐された子達をいち早く助けたいと言う気持ちは見えない。
だけど俺は麗奈を疑わない。一応、なんだその……この数ヶ月こいつと一緒にいて、こいつの性格は理解しているつもりだ。
麗奈も俺と同じく助けたい筈だ。
『スカート!ニーソ!絶対領域!o(。>ω<。)o︎』
恐らく。多分。もしかしたら。自信がなくなってきたよ。ちくしょう。




