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カチャッと目の前にお茶が置かれた。

人間、頂いたら直ぐに飲まないと失礼かも、と言う思考が働いてしまうから、理事長の囁かな気遣いには好感が持てる。


「ありがとうございます」

と言いつつ、言われた通り置いたまま冷ます。

理事長はソファーに腰掛け、お茶を一口飲みホッと息を吐いて茶碗を置くと、先程までの温和な表情から一点神妙な面持ちに変わった。


「さて、そろそろ本題に入ろうかしら」

「本題?飯食うことがメインじゃなかったんすか?」

「昼食も勿論だけどあなたに言っておきたい事があるのよ」

「言っておきたいこと??」

「ええ。あなたがここに来てからしたことは全部把握してるの。宝井静香さんを助けにヤクザの組事務所に乗り込んだり。後日宝井静香さんと浅井海くんをヤクザから助け出したり、神田美代子さんを内藤社長から保護したり、先日。誘拐された麗奈ちゃんを助けたり。細かいのを上げればキリがないくらい」


なんでそこまで理事長が知ってるんだ?静香と海の件なら学校を抜け出したからバレててもおかしくはないが立花先生は黙っていてくれた。

他に至っては学校外の話だ、理事長は愚か立花先生も詳細は知らないはず。

と考えると、繋がり的には蓮さんか姉ちゃんあたりが言ったと思うのが妥当だけど、2人にも話してない事はある。

「なんすか?説教ですか?」

「いいえ、別に叱るつもりはないのよ。貴方がした事は無謀と呼ぶに相応しいけど、結果としてあなたは本校の大事な生徒を救ってくれた。感謝しているわ」


「どうも。俺は姉ちゃんの教えに従っただけっすけどね」


「葉月ちゃんの教え……ね。でも、あなたにはあなたの正義があるわよね。その正義。これから話す事件に関しては封印しておいて欲しいのよ」


「……事件?」


「そう、事件。この話はこれからニュースにも全校集会でお知らせもするんだけどね……最近この辺で女子高生が行方不明になってるのよ」


理事長は悔しげに眉を顰めた。つい最近誘拐された事のある麗奈は目を逸らした。

「1人目は先週。他校の生徒なんだけどね。その子は貞操観念の薄い子でね、警察も高校も思春期の家庭の事情で、家出だと思って軽く考えていたのよ」


「それで、2人目が出たと」


「いいえ、3人目よ。2人目が一昨日で3人目が昨日。どちらも真面目な女の子よ」


これを俺が知れば動くと、そう危惧した理事長と理事長に俺の事情を話した人間は思ったわけだ。

確かに高校生が関わって良い事件じゃない、こう言うのは警察の仕事だ。


「警察は犯人の尻尾を掴んでるんですか?」

「残念だけど全然。人気の少ないところでやってるもんだから目撃者もいないのよ」


だとしたら発表するのもリスクじゃねえか?犯人は捕まる可能性を考えて動きづらくなるけど、誘拐された子はどうなる。

殺されて犯人は高跳びする危険性も孕んでるぞ。


「これは大人が解決すべき問題よ。子供には危険すぎる。そもそもあなたのして来た事は高校生がするには荷が重すぎる。今回は警察に大人しくしてて」



「誘拐された3人は見捨てるんすか?警察に任せてって言っても」「これはお願いじゃなくて命令よ」


俺の言葉を遮った理事長の目は、俺に有無を言わせない。そう物語っている。


「誘拐された子も心配だけど、あなたの事も心配なのよ。だから事前に話したの……これだけはわかって欲しい」


心配……か。でも、誘拐された子の家族はもっと不安だし、心配してるんじゃねえの?


「わかった。けど確約はできないっす」


真剣な目で、理事長の目を見つめ返す。


「俺の身近な人が被害に合ったなら俺は動く。犯人を探し出して引き摺り出す。この町で変なことする奴は俺が叩きのめす」


俺の本心を言い切った。


「そう……一応今は大人しくしててくれるってことでいいのよね?」




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