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「それを世間では依怙贔屓だとか職権濫用だとかって言うんすよ、理事長なんだからその辺は分かりますよね」


「理事長じゃないでしょ。理恵ちゃんって呼びなさい」

うん、前言撤回。この人も立花先生レベルで話通じねえや。

この見た目不相応……また睨まれた。若いノリで話しかけて来るお姉さんこそ、この学校の理事長だ。

年齢「春日くん」……何?失言センサーでも働いてるの?それとも麗奈ばりに俺の考えてる事がわかるのか?

取り敢えず、このお方、理事長の工藤理恵さんについては言えるのは結構なお年を召してられる!それだけ!


「それで理事長、今日はなんでここに呼んだんですか?俺何かしましたっけ」


名前を呼びたくない俺は、初めからやり直し、無かったことにした。


「だから、昼ごはんを一緒に食べましょっ!後私の事は理恵ちゃんって呼んでね」


「……うす。理事長」

「もう……いけず」

訂正と別の案を出していただきたい。切に願う俺の気持ちは理事長には伝わらなかった。

はぁ、と一つため息をつく。

「昼飯はこの際良いっすけど……俺弁当持って来てないっすよ」

「いいのよー!私が3人分用意したから!」

ほら!と言いながら理事長が大きめの風呂敷に包まれた重箱を机の上に置いた。

「3人分?俺しか呼ばれてないはずっすけど」

「だって……君を呼べば麗奈ちゃんも来てくれるでしょ?」


そこまで読んで呼ぶか?普通。まんまと罠にハマったようで釈然としない。

「はぁ……」

もう一度、今度は深い溜息を吐き、来賓用のソファーに黙って腰掛ける。不躾?知るか。

麗奈が横にちょこんと座り、スマホに文字を打って俺に見せてきた。


『お姉さんがキッパリ言ってあげようか?(*•̀ᴗ•́*)و ̑̑』


理事長には校長と生活指導が暴走した時に庇ってもらったし、何より親父の代からお世話になってるみたいだからなあ。



麗奈のスマホを手に取り『今回は目を瞑ろう』と打ち込んで返した。

「今回だけっすよ。もし、次校内放送を使って私用で呼び出したら話を聞かずに帰りますからね」


「歳をとるとねえ、1年生の教室まで歩いていくのが辛いのよぉ。だから立花先生に伝言を頼んだんだけどね、私も校内放送を使うとは思わなかったのー」


おいおいおい。あいつさっき俺を見なかったフリして飯食ってたよな。何かしたのか?って言ってたよな。


あの野郎。自分もめんどくせえからって放送委員に頼んだってところだろ。

「一言言ってくるわ」

麗奈に告げ、力いっぱいソファーから立ち上がると、理事長室の扉をバン!と開けた。立花先生は膝を床についたまま、さめざめと泣き続けている。


俺はそんな先生に近寄り、膝を軽く曲げ、優しく肩に手を添え、笑顔を作った。


「かすがぁ……こんな俺を慰めてくれるのか……?」

立花先生が顔を上げた。

うわぁ、いい歳した大人が涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしてるのは流石にきしょい。

だがきっと今、こいつから見た俺は天使に見えている事だろう。

大丈夫だ先生。今俺が楽にしてやる。


「クラスの女子がな。言ってたんだよ」

「……何を?」


女子と聞いて、涙で濡れた目をキラキラ輝かせながら俺の次の言葉を待つ立花先生。

そうだよな。普通なら次に俺の口から出るのは先生に取って良い物の筈だよな?

「自分達を見る目が厭らしくてキモイ」

「っっっはぁん!!!」


そうは問屋が卸さない。俺は迷わずトドメをさした。

キモイ立花先生は気持ちの悪い喘ぎ声を上げて床に伏した。

ふう、スッキリした、理事長室に戻ろう。


その場に居た教師たちの良くやってくれたと言わんばかりの、ニヤニヤとした表情から放たれるを受けながら理事長室へと戻っていく。

あの時。助けてくれなかった奴らから受ける視線は、とてもじゃないけど気持ちのいいものでは無かった。

だけど、仕方ない。元を正せば俺の素行不良が原因だから。




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