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腰まで伸びた青い髪はツヤツヤして手触りがよく、オレンジがかった黄色い瞳は見ていて吸い込まれそうな程綺麗だ。
身長は160センチを超えていてスラリと伸びた手足、程よく肉づいた腰付き、何の気なしに立っていても、立ち姿は雑誌に出てくるモデルみたいだ。
「約束か。約束なら仕方ないな」
『仕方ない仕方ない(*´ω`*)』
麗奈と俺の言う約束は『お互いの傍にいる』というもの。
家族と、声と表情を失った麗奈と、最愛の姉の1人を失った俺は同じ事件の被害者だ。
とは言え、俺はその時の事件のもう一方の家族の事は麗奈と出会い、本人から聞かされるまで知らなかった。
事件発生後直ぐに家族ごと引っ越したから知らなくても当然と言えば当然だ。それに俺は葉月姉ちゃんが息を引き取る瞬間以外の記憶がごっそり抜け落ちている。医者が言うにはショックから来るものだと言われた。
そして事件の事を麗奈から打ち明けられた当日、あまりにも色のない曇り空を見るような瞳。死んだように生きる麗奈の話を聞いた俺は率直に、いつかこいつの笑った顔、生きる意味を見つけた時の表情を見てみたいと思った。
だから俺は麗奈に、いつか心から笑えるようになるまで傍に居る。そう約束した。
麗奈も俺に、いつかお互いのトラウマが癒えるまで傍に居る。そう約束した。
約束を軽んじた俺に、約束は何がなんでも守る為にある。そう教えてくれたこいつと、俺は今日も傍に居る。
「用事が終わったら一緒に弁当食うか?」
俺が尋ねると麗奈は弁当箱が入った袋を胸の前に持ってきて、頷いた。
昼飯は一緒に食えないって伝えたのに、ここに現れたのだから最初からそのつもりだったのだろう。
俺は持ってきてねえから教室で食うか。
「んじゃ、さっさと終わらせるか」
麗奈が頷くのを待って職員室の扉をノックした。返事はない。
「失礼します」
職員室の扉をスライドさせると中から冷気が漏れ出てきた。
クーラーの涼しさがここまでの暑さを浄化するように体に染み渡る。
教師はいいよな、休憩中はこんな涼しい環境に居られるんだから。
俺達生徒は下敷きなりをうちわ代わりにし、時々窓から入る風欲しさに窓際を取り合いながら暑さに耐えてるというのにこの差はなんだ。地球温暖化は年々進んでるんだから教室にクーラーを付けるくらいしてくれてもいいのに。
中へと足を踏み入れ立花先生の机の方に目を向けると、二日酔いを引きずったままの青い顔でカツ丼を一生懸命かき込んでいる先生と一瞬目が合ったが直ぐに逸らされた。
呑気に飯なんか食いやがって、八つ当たりだけどムカつく。
「立花せんせー!」
学生らしく、大きな声で、ハキハキと、立花先生を呼んだ。
「……うぐっ」
食っていたカツ丼を喉に詰まらせた。いい気味だ、俺から目を逸らすからそうなるんだ。
苦しそうな表情を浮かべ胸をドンドンと叩き、水を飲んで詰まりを解消させ、やっと立ち上がり俺たちのほうへと歩いてきた。
「なんだよ人が飯食ってる時に……邪魔すんなよ」
目の前までやってきて口から放たれたのは、悪態だった。しかも本当に面倒くさそうな顔のオマケ付き。
「呼ばれたのに誰に呼ばれたか分からないんだからしょーがないじゃないっすかぁ」
ジト目で返した。正直先生と生徒らしからぬやり取りだよな、これ。
不良生徒の誤解は解けたものの、周りの先生も俺を見てるし。
「あー、そう言えば放送で呼ばれてたな。なんかしたのか?」
俺が呼ばれた理由立花先生も知らないのか。となると、思い当たる節はあと一人。
「なんもしてないっすよ。立花先生じゃなきゃ理事長じゃないっすかね」
「お前お気に入りだもんな……ご愁傷さま」
ご愁傷さまってなんだよ。確かに理事長は癖は強いけど前校長や前生活指導と違って話の通じるまともな人だ。




