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「あれも不測の事態だったからなあ」

帰り道を狙って襲ってくること自体は予測は出来ていたが、まさか親父が来る前日に、だなんて思っても見なかった。


「麗奈さんに手を上げるなんてほんと許せないよねえ」


「あぁ、本当に」


あの時ばかりは本気で人を殺そうかと思った。

麗奈の心に傷を負わせやがって……本当に許せねえ。

内藤襲撃の件以降、麗奈は傍に居る時は俺からくっついて離れなくなり風呂まで着いてこようとする始末。


なんて言うか、麗奈の事をす、好き……って自覚してから今まで簡単に躱すことが出来た誘惑を断るのにも、しどろもどろになっちまう……。


婚前前の男女が一緒に風呂なんか入っていいわけねえだろ!この前なんか風呂場の扉を強行突破しようとしてきた。扉越しのシルエットを見ただけでもドキドキしちまうっての、鍵は大事。


「悠くん怒ったりニヤニヤしたり。変なのー」


どうやら思ったことが顔に出ていたようだ。

シリアスな話してたのに、麗奈の事を考えた途端脱線するのは何故なんだろうか。


「ごめんごめん。思い出し笑いだ」

「今の話で思い出し笑いする所あった??」

何事も無かったかのように言い訳をする俺を見て涼夏が訝しげな表情をしている。

「いやなんだその、親父のキャラ崩壊を思い出しちまってな」

「あははっ、まさか大和さんが本当は悠くんたちを溺愛してるなんて予想がつかないよねえ」

察しの良い涼夏でも親父の本性には気付いてなかったのか。涼夏が親父の事を最後に見たのは小学生の頃だから気付きようがないか。


「えぐいぞ。嫌われてると思ってた相手が抱きしめて愛してるって言ってくんだぞ。鳥肌ものだよ」


「確かに大和さんがそんなこと言ってたら私も頭の中真っ白になっちゃうかも……」


「だろ?俺だってどうしていいかわかんなくなったぜ」

「でもよかったんじゃないかなっ、大和さんが不器用で素直じゃないって知れて。似たもの同士少しは分かり合えたんじゃない?」

「うるせえよ。そりゃあほんのちょっと、もしかしたら、砂漠の砂一粒くらいは嬉しく感じた事もなくもねえよ?でも。今更すぎてどう接して良いのかわかんねえよ」

「素直じゃないなあ。それこそ大和さんの胸に飛び込んで本音をぶちまけてみたらいいんじゃないかな」


「やだよ。ガキじゃあるまいし、飛び込むなら親父より姉ちゃんの方がいい」

「うわぁ……相変わらずのシスコン度合いだ、これはまだまだ姉離れできないねえ」

果たして姉離れする必要があるのか?否、そんなものは必要ない。

いつでも俺を甘やかしてくれる。俺の話を聞いてくれるし、俺を守ってくれた。

高校を卒業したら菜月姉ちゃんに楽をさせてやる為にも姉離れなんて必要ないんだ。


「菜月姉ちゃんはやらん」


「どこからその発言が出て来たの!?これは……菜月さん貰い手が無くなっちゃうね」


「雪兄って言う良い嫁ぎ先があるぞ。性格はデリカシーがないところだけ目を瞑れば気がきくし稼ぎも悪くない。顔も良いし優良物件だと思うんだが」

「なっちゃんと雪人さんはお似合いだけど悠くんは雪人さんが義兄さんになるけど良いの?」


「それは考慮してなかった」

今とそんなに変わらねえけど兄としての立場を利用して遠慮なく抱きしめて来そうだな。

こんな見た目でも、男に抱きしめられるのは勘弁だ。

必要以上に世話を焼いて来そうだ、男版麗奈になりそうな予感も……姉ちゃんの旦那だろうが。姉ちゃんだけ見てろよ。


「やっぱあれは無しだ。姉ちゃんには他の優良物件を探そう」


「手のひらくるっくるだね、雪人さんが聞いたら泣いちゃうよ?」

「雪兄はメンタルもつえーから平気だ。ほっときゃ治る」

俺は信じてる。


『1年C組の春日悠太くん。昼休みに職員室まで――――』

突然、校内放送が鳴った。

え?俺なんかした?身に覚えはないけど。


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