異世界に転移したが、何の能力も貰えなかった紅の老人は己の能力だけで異世界を無双する~異世界でも子供を笑顔にしたいんじゃ~
「では、今日もよろしく頼むよ」
その老人はトナカイにそりを引かせ、空を駆ける。
ズドーン!
突然彼に雷が落ちた。
「すみません、こちらの不手際であなたを殺してしまいました」
「ほっほっほ。人間そんなこともある」
「いえ、私は神ですが……」
「とりあえず、あなたをお詫びとして異世界に転生させます」
「ほう?」
「前世の記憶や身体能力はおまけで持ち越しできるようにしますね」
「本当はだめなんですけど、まあ人間の能力なんてたかが知れてるでしょ」
「今度はいい人生を~」
「『人生』もなにも、わし、そもそも妖精なんじゃが……」
「なんの能力も持っておらんじゃないか! この無能め!」
そう言って、彼は王宮から追い出された。
「そうじゃのう」
老人はスキル欄を見るが、そこには何も表示されていない。
しかし、彼のパラメーターはカンストしていた。
なぜかって?
異世界人のあなたは彼が一夜にして地球(これは彼がいた世界の星の名前だ)を回る神話をご存じないのだろう。
「召喚術?」
彼がそれを使うと目の前に得体の知れない角の生えた動物が現れた。
「新種のモンスターか?」
「いやいや、彼ははわしの相棒じゃよ」
彼はそう言うと、その動物の引くそりに乗り、空中を飛んでいった。
のちに、人々はその動物が神獣「トナカイ」だと知る。
「いくら奴と言えども、これだけ強い毒ガスが充満している部屋に閉じ込めれば、死んでいるころだろう」
盗賊の頭がガスマスクをして、部屋のドアを慎重に開ける。
「ふ~、気が済んだかの?」
「な、なに!?」
盗賊は最近WHO(世界保健機関、彼が前にいた世界での組織)がその老人はウイルスに対して免疫を持っていると発表したことを知る由もないだろう。もちろん、彼が耐性があるのは最近話題のコロなんとかだけではない。世界中を回るゆえに、あらゆる毒や疫病に耐性があるのだ。
そんな彼の夢は異世界中の子供たちを笑顔にすることだ。
魔王が世界を絶望のどん底に陥れようとしている以上、それはかなわないことをその老人はすぐに理解するだろう。
彼が魔王と死闘を繰り広げ、その衣がさらに赤く染まる日は近い。
ノリで書きました。(反省)