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あの日の告白をもう一度  作者: 提灯鮟鱇
第1章 俺とオレ
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交差する思惑

 勉強会が終わり明くる月曜日。オレはいつものように学校へ向かう。

 いつものようにあの長い階段を上り、いつものようにドアを開ける。

 いつものようにいつものメンバーに声を......。


「おい、真夏。どうしたんだよ、その髪!」

「っっ! え、えと。前髪! 長かったので、切っちゃいました......。もしかして、似合ってなかったですか?」

「似合ってる、似合ってるがどうして急に」

「すこしだけ勇気、出しちゃいました」


 照れながらそう答える彼女はとても可愛らしかった。

 じゃなくて、もしかしてオレのせいか......? あんなカッコつけたこと言ってしまったから、場の雰囲気に流されちゃったのか?


「前髪切って正解だよ~! 真夏ちゃん、ほんっとにかわいいんだもん!」

「えぇ、ますます可愛いらしくなったわよね」

「というか、むしろなんでいままで前髪なんか伸ばしt」


 瞬間。ゴリッという鈍い音と共に身体がくの字になる(まさや)。流石は加奈だ、幼い頃からおじいさんに護身術と空手を習っているというだけある。


「すまないね、このバカは体調が優れないようだから保健室へ連れていくよ」


 そう言い残し(まさや)を軽々一人で担ぎ教室を出ていく加奈。

 その場にいたクラスの男子が、あいつだけは怒らせてはならないという共通認識をした歴史的瞬間だった。気絶した自分を運ばれていくのを見ているのはなんだかムズムズするな。

 この事件以降1-Aのクラス出身の男子はデリカシーに長けた人材を多く輩出したのはまた別の話。

 美人で勉強も出来て腕力も引けを取らない、まさに完璧超人だった。


「お前ら~席に着け~HRを始めるぞ」

「あ、先生ー! 雅也君が体調悪いからって保健室に行きました! その付き添いで加奈ちゃんも行きました!」と大声を出して報告する春恋。

「なに? 朝から保健室とは良いご身分だな。ったく......」


 ぼやきながらも仕方なく出席を取り始める永嶋。

 その後もHRは順調に進み、最後に明後日の水曜日から始まる宿泊研修のしおりが配られ終了した。

 ちなみに加奈は既に戻ってきており、(まさや)の方はと言うと3時間目まで気絶していた。

 本人は授業をサボれたと喜んでいた。そういうとこだぞ、ほんとに。

 4時間目が終わると昼休み、みんなの話題はもちろん朝配られたしおりであり、それはオレ達も例外ではなかった。


「なぁ、バスどこに座るよ?俺窓側でいいか?」


 バスの座席は班ごとに横一列となっており、5人班は後ろの方で通路に追加で椅子を設置する形だ。

 横一列ということは、通路側に座った場合に三分の一の確率で春恋と隣になれるということだ。もし会話が無くとも意識することになるのは間違いないだろう。

 となると、オレがここですべき戦略は......。


「いや、オレも窓側がいいな。絶対に譲らん」

「なんだと、それは困ったな。じゃんけんで決めるか」

「ダメだ。実はオレは酔いやすい体質でな、窓側でないとリバース大魔神になるのだ。隣はお前だから100%巻き込まれるだろうな」

「くっ、確かにそれは困るな」


 とっさの言い訳とはいえ、リバース大魔神ってなんだと思ったが上手く誤魔化せたようだ。

 しかし、思わぬところから伏兵が現れる。


「それなら酔い止めの薬でも飲む?実は私も酔いやすくてね、当日分けてあげよう」

「っ!?」

「流石加奈だな、もしや天才か?ふふ、じゃあ仕方ない。ここはじゃんけんだな!」

「い、いや、待て。そうだ! それなら交代制にしよう!行きと帰りで交代だ、それならいいだろう」

「まぁ、それならいいか......。あ、でもどっちが先に窓かじゃんけんを...」

「お前、もうじゃんけんやりたいだけだろう」


 くそう、なんてこった。(まさや)が春恋の隣になる確率が著しく下がってしまった。加奈め、余計なことを......。

 しかし、このアホはほんとに高校生なのか?中学生でも少し怪しいぞ。

 じゃんけんの結果、行きはオレが窓際になった。


「私たちはどうする?誰かが通路席に座らなければいけないが通路席は普通席に比べて少し狭いだろうな、あまりおススメはできないと思うが」

「あ......じゃあ、私帰りに通路席でいいですよ。みんな嫌ですよね、通路席。それに帰りはみんな疲れてるだろうし」

「嫌ってほどじゃあないけど、いいの?真夏ちゃん」

「全然大丈夫です!むしろ、通路席がいいっていうか...」

「あはは! 変なの、でも確かになんかお誕生日席みたいで特別な感じがしていいかもね~。じゃあ私も通路席にしようかな!」

「二人がいいなら私は構わないけれど...じゃあ、せめて窓側は二人に譲るわね」


 おぉ!ナイスだ真夏。上手く春恋を乗せられたみたいだ。

 でもなぜ(まさや)の隣を空けてくれたんだろう。そういう打ち合わせとかしてないのに......。さてはオレの熱い視線で察してくれたんだな、なんて気の利くいい子なんだ!

 そんな都合のいい解釈をしていると、真夏がこちらを見て微笑んだ気がした。

 本当に考えが読まれてるんじゃないかと心配になった。



 深夜、真夏宅。


 はぁ......まだ眠れない。


 今日の私、変じゃなかったかな?みんなは大丈夫って言ってくれたけどやっぱり心配です。

 でもでも、今日は大きく一歩が踏み出せた気がします! 勇気を出して自然に翔君の隣の席を確保できたし! それに......翔君が、真夏って呼んでくれたし。


 布団にくるまっていたせいか、なんだか顔が熱くなってきた。ぷはぁ、と顔を出し新鮮な空気を吸い落ち着きを取り戻そうとする。

 

 大丈夫......ですよね? 最後つい目が合っちゃったけど、作戦だって気づかれてませんよね?そいうえばこころなしか私が帰りの通路席を選んだ時に嬉しそうにしてた気がするけれど、あれってもしかして......。

 いやいやいや! 偶然か私の考えすぎに決まってます! それに今はまだ、隣にいるだけでいいですから。一緒に過ごせるだけで十分幸せですから、これ以上なんて考えたらバチが当たっちゃいます!


 どうか楽しい合宿になりますように。

 ささやかな願いを胸に先程まで眠れなかったことが嘘のように深い眠りについた。

 次回、『ミステリアス?な彼女』


 なんとか策を練り席を操作することに成功した翔。

 二人の仲を取り持つ作戦は成功するのか......!?

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― 新着の感想 ―
[一言] これ学園ものに見せかけた推理ものっすか?
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