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あの日の告白をもう一度  作者: 提灯鮟鱇
第1章 俺とオレ
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ありがとうの約束

「勉強会をしましょう!」


 週始まりの昼休み、いつものように4人で集まり昼食を取っていると春恋がそんなことを言った。


「ははっ、面白い冗談ですね高崎さん」

「冗談ではありません! 二人ともこの点数はなんですか!?」


 突き付けてくるのは、学力テストの結果。


「あー...。確かにこれは酷い点数だね」

「まぁ、俺にしてはよくできたほうなんじゃないか?」

「今、酷いって言われたの聞こえてなかったのか?」

「うるせぇ! お前も同類だろうが!」

「ごがつ君と一緒にはされたくねぇ!」

「気持ちは分かるが、田崎君。君の結果も芳しくないのは事実だ」

「くそぅ、金沢に言われるとなんもいえねぇ...」


 宣言通り数字が堅かった加奈は無事平均90点後半をマーク、ダントツでクラスのトップの成績だったのだ。

 こいつってこんなに成績良かったっけか?1年の最初の話だし忘れててもしょうがないか。


「はい! じゃあ今週末に集まりたいんだけど予定空いてるかな?」

「あ~、俺その日は用事が...」

「そうなの? 雅也にしては珍しいね」

「お前さっき休み時間の時、週末に連続睡眠チャレンジするっていってたじゃねぇか」

「なんだいその頭の悪そうな遊びは」

「2度寝したら気持ちいいだろ? だったら、限界まで繰り返しねることによってどこまで気持ちよくなるのかなと思ってよ」


 真面目な顔で言うアホ。

 勉強会が決定した。ちなみに場所は(まさや)の家だ、曰く、寝坊されたらたまらないからだそうな。確かに図書館なんかでやろうものなら間違いなくうるさくしちゃうだろうしなぁ。

 そうだ、当日オレが加奈に勉強を見てもらえば自然にあいつらを二人にできるかもしれないな。

 とはいえまずは自力を上げるところからだな...。と意気込んでみたが5,6時間目は総合の時間だった。


「そういえば今日の午後って何するんだっけ」

「おいおい、朝言われてたろ?オレでも聞いてたぜ」

「今日は来週ある宿泊研修の説明と班決めだよ」

「あー、そうだったか。すまんすまん」


 確か新入生同士の交流を深めて仲良くするのが目的なんだったな。この学校は5月末に体育祭があるから少しでも団結力を磨けってことで。

 そして、ここで俺はあいつに初めてちゃんと出会ったんだよな。


「えー、というわけで班決めを行う。4、5人で固まってくれ、集まり次第届けるように」


「お、ちょうどいいじゃん。4人で決まりだな!」

「異議なーし!」

「すぐに決まったわね」


 まぁ、当然こうなるよな...。

 とりあえずオレ達はすぐに決まったので適当に雑談していた。

 他のクラスメイトは班を組むべく席を立ちあちらこちらへ歩きまわっていた。

 暫くして、ある程度班が決まってきた頃、コソコソと話声が聞こえてきた。


「おい、だれかあいつ入れてやれよ」

「やだよ、おれ達もう4人でいいじゃんか」

「うちらも入れてあげたいけど5人で決まっちゃったし~」

「......」


 教室の後ろでポツンと1人、美空真夏という生徒が立ったまま座れずにいた。

 表情は長い前髪と腰まで伸びた綺麗な黒髪。猫背になっていてよく見えないが、よく見ると少し震えているような気がした。


「ちょっと、可哀そうだね...」


 春恋がぽつりと呟くと、(まさや)が席を立つ...はずだった。


「おい、お前らの班に入れろよ」

「男子だけの中に入れたらそれこそ可哀そうだろ」

「おれ達だってバランスがちょうどいいんだよ」

「なんだよバランスって」


 おかしい。オレの記憶ではここで(まさや)が席を立って真夏を班に誘うはずなんだが。


「おーい、まだ決まらないのか? 早くきめろ~」

「うっ...うっ...」


 真夏が少し涙目になってきている。

 痺れを切らしたオレはガマンの限界だった。


「なぁ、オレ達の班でよかったら、一緒にどうだ?」

「え、あっあの...私でも、良いんですか...?」

「バカだな、悪かったら誘わねーよ」

「...はい!」

「バカって言われてるのに喜んでるやつ、初めて見たよ」

「せんせー! さっきの紙訂正するのでくださーい!」


 春恋が少し嬉しそうに紙を取りに行く。


「田崎君、中々いいところあるじゃない」

「あぁ、中々できることじゃねーよ。見直した」


 こうして少し予定とは違ったが、無事に真夏を班に迎えることができた。


「すみません、仲良しのみなさんのなかに入れて頂いて」

「気にしないで、それにしてもこんなかわいい子を除け者にするなんてみんな酷いわね」



 泣きそうだった真夏を優しく微笑みながら加奈がなだめる。

 ビシッと指を指す元気っ子がいた。


「真夏ちゃん!」

「っ、は...はい!」

「こういう時は、すみませんよりありがとうの方がお互いに気持ちいいと思うよ!」

「あっ、す、すみませ...じゃなくて、ありがとう」

「そう! ほら、胸のあたりが暖かくならない?今度から簡単に謝っちゃダメだよ! 約束!」

「はい...ありがとうございます。高崎さん...あ、でもなんで私の名前」

「クラスメイトなら当然だよ! それと私のことは、春ちゃんとか春恋とかでいいよ! みんなも下の名前でいいからね!」

「じゃあオレも」

「俺も名前でいいからな」

「同じ班だし、苗字だとよそよそしいしね。折角仲良くなるためのイベントだから」

「じゃ、じゃあ...春ちゃん」

「はーい!」

「雅也君」

「おう」

「加奈ちゃん」

「なぁに?」

「しょ...翔君」

「よし!」


 こうして、新たに真夏を迎えた5人で班を組むことになった。ついでに週末の勉強会にも参加することになった。

 そして、やっとオレも自然に春恋のことを名前で呼べるようになった。苗字は呼びなれてなくて息が詰まるんだよなぁ。



 春恋がクラスメイトなら名前は知ってて当然みたいなこと言ってますけど、彼女だからできることです。


 次回、『あの日の感謝をもう一度』

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