バカとテストと神の謎
みんなと別れ、帰宅した。
この年齢でただいまと言っても返事がない環境というのはどうなんだろうか。
想像するが、キリがないのでやめた。
学習机に今日貰った教材を整理していると、引出の中に封筒がありその中には綺麗な石が入っていた。
『どうも、自称神です。そちらの世界は順調ですか?おせっかいかとはおもいますが、ここに魔法を込めた石を同封しました。2回だけ、本当に叶えたいと思う願いごとを叶える力が込められています。どうしてもだめな時、強い想いを込めると使えるよ。
P.S 代償として、使うと君の記憶が消えるので安易に使わないこと!!』
「なんだよ、これ...」
もし仮にこれで俺と加奈が結ばれたとして、それは本当に幸せなのだろうか?いや、幸せなはずはない。
しかもオレの記憶が代償だなんてありえない。
1回でも使ったらあいつらのキューピットどころかオレがお荷物になってしまう可能性があるってことだろ?そんなの恋愛している場合ではない、完全に事件だしトラウマにでもなったらどうするんだ。
でも、2回までってことは1回だけなら......。
「いや、そんなの絶対にだめだ。これは使えないな」
あの自称神は本当にわかっているのだろうか、オレがやろうとしていることを。
というか、そもそもどうしてオレにこんなチャンスをくれたんだ。
考えてもキリがないことは百も承知だったが、ふとした瞬間に考えられずにはいられなかった。
「教科書でも見て気を紛らわすか......」
最初につかんだ数学の教科書をランダムにペラペラと捲ってみたが、何となく聞き覚えがあるというだけで全く覚えていない。
簡単な因数分解なら出来るが、その先の定理やらはちんぷんかんぷんだ。
これは......先が思いやられるなぁ。
今日は始業式の後聞いていたとおり、一日を使って男女別で学力テストとスポーツテストを平行してやるようだ。
男子は午前中は学力、午後はスポーツといった具合で始まったのだが割と自信のあった数学がボロボロだった。
定理やら法則を使って角度を求めたり、証明をするのだがこれがびっくりするほど覚えていない。
代わりに現代国語(現国)は概ねできたほうだと思う...。出来てるよな?
午前が終了し、昼休み。
特になにも約束はしていなかったが、もう既に集まって食べるようになった。
「オレよくこの学校入学できたよなぁ」
「何言ってんだよ、この学校偏差値低いからバカでも受かるんだぜ?」
「あぁ、定員割れしたって噂になってたね」
「じゃあどうしてこんな学校に入ったんだよ」
「それりゃあ____「「「「家が近いから!」」」」
なんて、他愛もない会話をしながら、昼食を過ごした。
ちなみに身体は貧弱になっており、スポーツテストの記録も散々な結果となった。
対して俺は運動は得意だったのでそれなりの成績を修めていた。
「でさぁ、翔のやつソフトボール投げなのに地面に向かって投げてやんの(笑)」
「おぉい、それは言わない約束じゃなかったかぁ???」
「んだよ、いいじゃんかこのくらいよぉ」
「そうだよ、今私たちはうら若き高校生!これからでどうにでもなるよ!」
「じゃあお前現国の読みで五月雨をごがつあめって書いてたことばらすぞ!」
「お前それもうばらしてるだろうが!」
「ごっ、ごがつあめ......」
加奈が一生懸命笑いを堪え震えていたが、春恋があはははと笑っていたため加奈の奮戦虚しく不機嫌になる俺。
「うるせぇな、お前らはどうだったんだよ」
「私は自信あるよ~」
「私もだ、自己採点で90点はかたいだろうな」
「は?かたいってなんだよ。柔らかい数字でもあんのかよ」
「そうだな、お前の数字は柔らかそうだな」
オレが皮肉を効かせてみる。
「んだよ、褒めんなって!」
「あはは、雅也はほんとにバカだね~」
「バカっていう方がバカなんだぞ! 知らないのか?」
「お前は小学生か」
多分頭が柔らかいと混同しているのだろう。南無......。
というか、加奈はわざと誘導してないかこれ。
今のところ、オレが介入しなくてもなんとかなりそうな雰囲気だが。
一体何があったっていうんだ。
暖かい空気の中、オレだけが素直に馴染めないでいた。
次回、『ありがとうの約束』
新キャラ出ます。