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あの日の告白をもう一度  作者: 提灯鮟鱇
第1章 俺とオレ
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積み重なった結果の先にある未来

 短い練習の時間も終わりを迎え、全てのクラスが運動場に集合する。その表情は緊張で強張る者が多く見受けられた。

 特に褒賞が与えられる訳ではないものの、これに勝ったクラスは注目されることになるだろう。

 整列が終わると学年主任でもある我らが担任の永嶋先生が軽い挨拶と進行をする。


「では、まずは大繩からだな。各クラス担任ではない先生についてもらい、クラス全員で声を出して跳んだ回数をカウントしてもらう引っかかったら勿論0からのカウントからだ。15分という制限時間の中、連続で多く跳んだクラスが優勝だ! 優勝しても何もやれないが、積み重ねた練習の先にある未来がなんなのかを考えながら取り組んで欲しい。最後にくれぐれも怪我に気を付けるように、健闘を祈る」


 全てのクラスが互いに充分な距離を保ち準備に入る。ウォーミングアップもそこそこに本番を告げるホイッスル鳴り響いた。

 渡辺君が音頭を取り、皆で一斉に跳ぶ構えを取る。


「A組行くぞ~!いーーーち!」

「「「「いーーーち」」」」


 パシンッっと縄が地面を打つ気持ちの良い音が聞こえる。

 縄跳びというのは最初のタイミングさえ掴んでしまえばこっちのものだ、あとは跳んでいる人数が多いことから接触事故や縄の位置の把握ミス等をしなければ体力の続く限り跳び続けられるだろう。


「痛っ! みんなごめん!」

「大丈夫、まだ取り返せるさ!」


 ウチのクラスが20回を越えたあたりで他のクラスの誰かが引っかかったようだ。

 朝からずっと運動しっぱなしだったこともあり、30回を越えた辺りで少し疲れが見えてきた。


「あっ! ごめんね......」

「大丈夫!大丈夫!」


 渡辺君が気を掛けてくれる、意外といいヤツなのかもしれないな。

 37回で真夏が引っかかってしまった! だが正直もっと早く引っかかると思っていた、実際練習で30回を越えたことは無かったからよく頑張った方だ。

 引っかかってしまったことよりも、記録更新に喜ぶオレ達はすぐに立て直し、再び渡辺君の音頭で跳び始める。


「せーーーのっ!いーーーーち!」

「「「「「いーーーーち!!!」」」」」


 他のクラスがどのくらいで引っかかったのかは分からなくなったが、ただ跳ぶという単純な動作の繰り返しは15分という時間を長く感じるのに充分な調味料だった。

 オレ達はその後も記録を更新し、42回が最大となった。しかしその後は皆疲れてしまったようで10回もまとも跳ぶことが出来なくなってしまった。春恋も1回、真夏に至っては計3回引っかかってしまっていた。

 15分の休憩後結果発表となった。


「では、結果を発表する......。まず、第4位____23回のC組!」

「うわーーー! まじかよ! 絶対優勝だと思ったのに!!!」

「そんな訳ねーだろ! バカ!」

「「「あははは」」」


 クラスのお調子者らしき人がここぞとばかりに目立とうとしていた、恐らく最下位が分かっていたのだろう。暗い雰囲気になることを避けたかったのか、ただのバカなのかは不明だがなんだかんだ良いクラスではあるのだろう。


「次に3位」


 騒がしかったC組がフッと静まり返る。


「さんじゅう__ 」よし、2位確定だ!「__はち回のB組!」


 C組とは違いなんとなく暗い空気になるが、落ち込み過ぎてもいないようだ。真剣にやった生徒がすくなかったのだろうか。


「では、最後に1位と2位を発表する。私は勿体つけるのが好きなので、回数の後に順位を発表する」


 永嶋先生の悪い癖だ。昔に自身を最後に好きな物を残すタイプと胸を張っていたことがあるのを思い出した。


「A組......42回、2位!!」

「「「「おっしゃあああああ」」」」


 歓声が上がったのは、惜しくもA組からではなかった。


「お前ら惜しかったなぁ、D組は43回だったからもう少しだったんだがなぁ。ということで、D組のみんなはおめでとう、お疲れ様! 他のクラスのみんなもよく頑張った! あともし体調が優れない奴が居れば言うように。ところで先生はな、本番でみんなが一生懸命だったのは知っている。今回はただ仕方なく順位をつけなくてはならなかっただけで皆朝から積み重ねてきた練習の結果をこの15分間でしっかりやり遂げたことに意味があるんだ、この後のリレーや体育祭でも同じこと。順位は副産物でしかない、皆で協力して準備し本番に臨むことがなにより大切なんだ。ところで協力して本番に臨むと言えば、先生が若い頃はな......」


 先生は熱く語り、語り倒した。話はどんどん長くなり他の先生に止められるまで語りまくっていた。

 途中までは良い話の雰囲気だったのにいつの間にか先生の若い頃の話、愛犬の話や生徒の将来の話へとどんどん飛躍し、もはや何の話をしているのかわからなかった。

 次のリレーが終われば長かったこの宿泊研修もようやく終わりを迎える、閉会式をやって帰るだけだ。

 今日は一日中運動しっぱなしで汗も大量に掻いたし本当に疲れた。帰ってすぐに風呂入って寝たい、晩御飯は何を食べようか。

 なんて楽観していたオレは、本当に大馬鹿野郎だったと後に痛感することになる。

次で宿泊研修終わる予定です。

よろしくお願いします。


9月25日は更新できません。申し訳ありません。

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