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あの日の告白をもう一度  作者: 提灯鮟鱇
第1章 俺とオレ
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代償と対価と得る未来

「それにしても、さっきはよく二人とも同じ答えを同時に言えたね!」

「だからさっきも言ったろ、偶然なんとなく同じことを思ったんだろう。意外とオレ達は似た者同士なのかもな」

「俺達が......。まぁ、確かにそう思う時があるな」

「どうした、そんなにオレと一緒が嫌か?」


 冗談交じりに言うが、俺の表情は少し暗くなっていた。あとで部屋に戻った時にそれとなく聞いてみたほうがいいかもしれないな。


「次のチェックポイントはどこだ?」

「えーと、これはナイフとフォークのマークだから飲食店のマークだよね......?この辺りで食べ物屋さんなんてあったかな」はてと首をかしげる真夏。

「うーん、レストランみたいなのはあるけど結構遠そうだね~」


 地図を広げる春恋。それを少し覗いてみる。


「あ、でもこの先にお土産売ってるところがあるからそこかもしれないな」

「なるほど!お土産屋さんか~流石翔君だね」

「いや、たまたまだよ」


 たまたま十年前に行ったのを覚えていただけだ、心の中で一人呟く。順調に次のポイントに辿り着いた。


「よし!とうちゃーく!すみませーん!」


 春恋が店主を呼ぶと、背中の曲がったおばあちゃんが奥から出てきたので、クイズのことを聞いてみる。


「あぁ、聞いておる。ちょっと、待ってておくれ」


 また店の奥に戻ると何枚かの紙を持ってくる、恐らく問題やらヒントやらが載っているのだろう。こうして店の奥から出てきたということはオレ達が初めての挑戦者なのだろうか。


「えー、では問題じゃ。いわゆる庶民と呼ばれた人も旅に出ることが珍しくなかった江戸時代のお話じゃな。当時から様々なお土産、つまりその土地の名産品のことじゃが、特に持ち帰って喜ばれたとされるお土産とは?」

「えー!そんなのわかんないよ~!」

「制限時間は5分、ペナルティは20分の待機じゃ」

「地味にさっきより増えてやがる......」


 頭を抱える雅也だったが、これの答えはオレが覚えている。あまりすぐに言うと不自然に思われるかもしれないので少し時間を使い、みんなと同じく悩んだフリをして答えよう。


「ん~、どこかで聞いたことがあるような気がするんだけどなぁ」

「えっ!翔君ほんとに!?」

「が、がんばって!翔君!」

「くそ~俺だって!」

「残り1分じゃ」


 この辺りが限界か。


「はっ!確か......薬じゃないか?」

「......正解じゃ。良く知っておったのう」


 ほれと店の奥の方を指すおばあちゃん。よく見ると靴がたくさん並んでいた、見えているだけで2班くらいはあるがまさか......。


「ノーヒントで、しかも一発クリアは君たちが初めてじゃ。おめでとう」

「ありがとうございます」

「翔君すごーい!」

「翔君さすがです!」

「くそ~先越されたぁ~!」

「これは諸説あるが、旅の目玉は神社や宿場町だったそうでな。そこでしか手に入らん薬やお守りが多くあったそうなんじゃ」

「「へー!」」


 しっかりとお土産屋のスタンプを押してもらうと、早速次の目的地へ向かうことにした。


「春恋、次はどんなマークなんだ?」

「えっ?あ、あぁ、次はね~これは......神社、かな?」

「ちょっと遠そうだな~」

「大丈夫だよ!翔君のおかげでかなり時間の短縮になったと思うし!」


 そうして神社へ向かう、大きな鳥居を潜ると長い参道を抜けた先の境内はかなり広く、おみくじを売っているところやお参りする場所もしっかりとあった。

 しかし、誰かが待っているようなチェックポイントらしき場所が見当たらない。


「ん~、ここのはずだけどチェックポイントらしいところが見当たらないな」

「あ、そういえば!」


 (まさや)が何か思いついたのか、トトトと走り出す。

 向かう先はおみくじやお守りを売っている場所だった。そんな場所がチェックポイントな訳がないだろうがと思いながら歩み寄る。

 なにやら巫女さんと話をしているようだった。


「おーい、あったぞ!チェックポイント!」


 やっぱりな、オレもあそこが怪しいと思ってたんだ。

 すぐにそちらへ向かうと(まさや)が手をブンブン振っていた、ちくしょう。


「すごーい!雅也君どうして分かったの!?」

「へへっ、さっきのお婆さんが言ってたろ? 旅の目玉は神社の薬やお守りだったって、それによく考えたら最初の給水所でも飲食物がどうのって言ってたろ。もしかして何か繋がりがあるんじゃないかと思ってそしたらさ、『欲しいものは何ですか』って聞かれたからイチかバチが『薬かお守りはありますか』って聞いたんだ、そしたら巫女さんが笑ってさ『では問題を持ってきますね』って!」


 よほど嬉しいのか興奮気味に話す(まさや)

 そこに気づくとは中々やるじゃないか、今回はお前に花を持たせてやろう。

 などと負け惜しみをしていると、巫女さんが出てきてこちらに着いてきてくださいと社の中にある会議室のような場所に案内してくれた。


「この場所に気づくなんてすごいですね。正しく欲しいものを聞かないと問題を出してはいけないと言われていたので心配だったのですが......」

「あざっす! それで、問題ってのは?」

「では読み上げます。問題、神社で働く神主さん。実は役職に『職階』と呼ばれる階級があるのはご存知でしょうか?一番高い階級は『宮司』と呼ばれており、各神職や巫女さんを纏める偉い人です。さて、この階級は全部でいくつあるでしょうか?①3階級②4階級③5階級④6階級⑤それ以外。ちなみに見習い等は含みません」

「かーっ、わっかんねぇ!」

「どうします?ちなみに制限時間は10分それまでに回答かリタイアか決めてくださいね。ペナルティは次に『お薬かお守り』を欲しがる人が現れるまで、です!よーいスタート!」

「なっ!?」


 このペナルティは非常に重い、なぜならここに来るだけなら簡単だがあの合言葉を言うやつが果たしてどれだけいるだろう。実際この巫女さんはとてもびっくりしていた、それくらい条件が厳しいと分かっているんだろう。

 しかし......。


「でもよ、ここまでするってことは正解した時のリターンがデカいってことだよな。それにあのばあちゃんも言ってたしな、ここでしか手に入らないお守りや薬があってそれをお土産にすると喜ばれるってさ」

「あの問題がどこまで示唆しているのは分からないが、確かにそうだな。こうしていても時間が無駄に過ぎるだけだし」

「ちなみに知ってる人~!」


 春恋が元気よく手を挙げるが、シーン......と静まり返る。加奈だけはつまらなさそうに出されたお茶をすすっている。


「もしかして、加奈は分かるのか?」

「さぁ、どうかしらね」

「頼むっ!教えてくれ!」


 頭を下げてみるが不敵に微笑むだけでなにもしない。

 くそ、こうなればオレにだって策はある。


「ほんとは知らないんじゃないのか?」


 ピクリと眉が動く。いけるか......?


「実は知らないけど、頭良いキャラだから知ったふうにしてるんじゃないのか?」

「そんな挑発には乗らないわ」

「頼むよ~本当に詰まったら教えてくれるんだろ?」

「だってヒントも使ってないじゃない」

「いやぁ、だってこれヒント貰っても二択か三択になるだけだろう? 確実に正解しないと詰む可能性があるんだ、そんな賭けはできない」

「全く、仕方ないわね。じゃあ本当に知りたいのなら対価をよこしなさい」

「対価?」

「えぇ、今度何でも言う事を聞いてちょうだい。それなら回答してあげるわ」

「えぇ!?そ、そんなのだめだよ加奈ちゃん!」

「どうして真夏ちゃんが反応するのかしら、私は翔君に言ってるのよ」

「私じゃだめかな? 何でもやるよ!」

「春恋でもだめよ、翔君でなきゃ。最初に言いだしたのは彼だもの」

「くっ......」


 どうする、時間が無くなってきた。もしこれが4択のクイズならヒントを使えば2択にまで絞られるか、そうなるようなヒントが貰えるはずだ。でも5択からなら3択残る可能性が捨てきれない、そうなれば加奈に頼らざるを得なくなりヒントが無駄になる。

 ここまでペナルティが重いと1択になるヒントは考えにくい。いや、でも逆に重すぎるから簡単になるヒントが貰えるのか......?でも選択のクイズで簡単になるヒントってなんだよ......。


「考えてもキリがねぇな、分かった加奈。オレが言う事を聞く、それでいいな?」

「翔君!?」

「真夏、大丈夫。こいつも悪魔じゃあない(はずだ)。そこまでヤバイ命令なんてしないだろ」

「では、契約成立ね」


 真夏は止めたがっていたが、オレなんとしてもクラスの優勝を手にしなければならない。


 「答えは②の4階級」と一言だけ告げる。


 これまで悩んでいたオレ達をあざ笑うかのようにあっさりと正解してしまった。


「すごいね!加奈ちゃんどうして分かったの!?」

「実は私の身内が神職をやっていてね。私からしたらラッキー問題だったのよ」


 長い付き合いだったが、初めて知った......。じゃあ加奈も手伝いなんかで巫女服をきるのだろうか? なんて加奈の巫女姿を思い浮かべていると。「翔君、なんか変な事考えてない?」と真夏に注意された。そんなに顔に出ていただろうか?

 ちなみにこの後いいスポットがあったのでみんなで神社や山から見える町を背景に写真を撮ったりした。


 その後も順調に進んでいき、時にオレの自由を対価に加奈大先生のお力を拝借して先へ先へと進みゴール、オレは何度言う事を聞けばいいのか途中から数えることをやめていたので半ばヤケクソになっていたということもあり結局ヒントは使わなかった、ちなみにポイントはぶっちぎりで1位だった。

 特にヒントカードは持ったままゴールすると1枚につきポイントが1.2倍になるという特典があったのと、あの神社のポイントがかなり大きかったらしく2位の班とのポイント差は4倍もついてしまった。


「では、ポイントの総合1位であるA組の特典を発表する。それは、今夜の天体観測をこの要山で行える権利だ!」


 通常は宿泊施設の広場で行われるが、このポイント戦を制したクラスはさらに広々とした範囲でよりキレイな星空を眺めることができるのだ。きっと夜はロマンチックな雰囲気にあてられてあいつらの中も進展すること間違いなしだな!......オレには人権がないが。

 こうしてオレ達はこのオサレ空間での天体観測が約束されたのだった。

 次回、『ずっと、ずっと待ってます』

 

 苦労の末に掴んだ天体観測イベント、果たして翔は有効活用することができるのか。

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