表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの日の告白をもう一度  作者: 提灯鮟鱇
第1章 俺とオレ
10/17

オレにしかできないこと

 程なくして休憩が終わり、中教室にA・C/B・Dの2クラスずつで別れ最初のオリエンテーションが始まった。

 自己紹介ゲーム。

 ルールは簡単、自己紹介シートを作成し、全員立ち上がり目が合った人に次々に自己紹介をしお互いの知り合いシートに自分の名前を書き込んでいく。その数が多ければ多いほど成績がよくなるというコミュ障には地獄のようなゲームである。実際オレの記憶では真夏がかなり苦戦していた。


「よし、書けた!」


 早速立ち上がり色んな人に次々声を掛けていく。そういえばこんなやついたなぁとかこいつ一年はC組だったんだなとか思いながら周りにも目を向けてみる。

 春恋は持ち前の明るさと分け隔てなく接することのできる優しさで、異常なまでのペースで名前を埋めていた。

 (まさや)はというと、春恋と自己紹介したいのか後ろから追いかけていたが春恋が捌いた人に声を掛けられて春恋と自己紹介できずにいた。

 加奈は意外とあまり積極的に自己紹介している様子はなく、寄ってくる男子から仕方なくといった対応で自己紹介していた。

 真夏はというと春恋や加奈といつも喋っているお陰か女子を中心に多くの人と交流できているようだった。しかし、男子とはまだぎこちない話し方になっていた。

 やはり心配だ、せっかくだからここはオレが練習台になってやろう。


「よう、どうだ自己紹介。うまくいってるか」

「あ、翔君......。女の子とは前に比べたら自然に話せるようになったんですけどね」

「男子はまだまだってことか」

「うん、私身長大きい方じゃないし。男の子はみんな大きく感じちゃって少し怖いんです」

「オレはどうだ。背は真夏より高いが、怖いか?」

「いえ、翔君は特別です」

「え?」

「あ! 違くて! 別に変な意味じゃなくて...いつもお話してますし! 遊んでますし! そういう意味で」

「あぁ、大丈夫! 分かってるから、じゃあ早速自己紹介しようか。オレは田崎翔、好きな食べ物はカレー嫌いなものは掃除と洗濯。自分の長所は一度やると決めたことは絶対に諦めないこと。短所は、忘れっぽいところかな」

「ふふっ、カレーが好きだなんて意外と子供っぽいところがあるんですね」


 上目遣いにこちらを見る。なんとなく直視していたら危ない類いの視線なきがしたので目を逸らしながら話を聞くことにする。


 「では......」


コホンと、咳払いをひとつとペコリと可愛らしくお辞儀をする。


「私の名前は美空真夏です。真夏の美し空と書いて、美空真夏です。好きな食べ物は麻婆豆腐で嫌いなものは大きい音と大きい虫。長所は慎重な性格で、短所は臆病で引っ込み思案ななところです。改めて、よろしくです」

「臆病か......。でも、人間なら誰だって怖いものくらいあるさ」

「翔君でもですか?」

「もちろん、加奈とか怒らせるとめちゃめちゃ怖いしな」

「加奈ちゃんが怒ると怖いですけど、それは加奈ちゃんなりの理由があってのことですから!」

「まぁ、それは冗談としてさ。もし何かあったら絶対オレ達に相談しろよ」

「はい、ありがとうございます」


 その後オレも数人の男女と自己紹介を交わし自己紹介ゲームが終了、結果発表となった。

 なんとなく分かってはいたが、春恋が優勝していた。自己紹介を交わした人数なんと脅威の62人、1クラス約40人なので4分の3以上もの人間があの陽気さにあてられたようだ。今の時間で恐らく世界で一番自己紹介したんじゃないだろうか、ギネスの人でも呼んでおけばよかった。

 20分の休憩時間が与えられ、一人机に突っ伏して目を閉じる。目を閉じているとつい色々と考えてしまう。

 そうして考える中で一つ思ったことがある。オレがなぜ高校の2年からのやり直しではなかったのかだ、実は心当たりがあるのだ。

 無論、時間をかけることで(まさや)の告白の成功率は上がるだろう。だが、それだけではなかった。


 この真夏という絶賛心の成長期である彼女。オレの記憶では1年の体育祭の後から1学期が終了する少し前まで陰湿な『いやがらせ』を受けていた。そして真夏は俺達を巻き込んでしまうと思ったのか、最後までそのことを俺達に打ち明けられずにいた。

 結局、具体的な理由や原因等は分からずじまいで明るみに出るまで『いやがらせ』はエスカレートし、それが発覚した頃には真夏は登校を拒否するようになり、両親は2学期が始まる前に転校を決めてしまっていた。

 転校の知らせを聞いた俺達は急いで彼女の自宅へ向かったが、彼女はただただごめんなさいと咽び泣きながら謝るだけで、それ以上何も言うことはなかった。俺達は彼女に『ありがとうの約束』を破らせてしまったんだ。

 俺が、俺達がもっと早くそのことに気づいてやれたら何か変わっていたのかもしれない。

 もしかしたら、あの日の告白だって真夏がいた日常があれば何か変わっていたのかもしれない。


 少なくとも今言えるのは、あの日告白に失敗した時に真夏はいなかったし、真夏の転校はオレの__オレ達の望むところではないということだ。

 オレにできることがあるのならなんだってやってやる。きっとそのために今オレがいるんだ、この過去を変えるのはオレにしかできないことなんだ。

 考えれば考えるほどに深みにハマっていく、これはオレに与えられた達成するべき使命であり試練なのだと信じて疑わなかった。

 明かされた真夏ちゃんの暗い過去。しかしそれを知るのはオレだけ__。

 私も真夏ちゃんが虐められるのは見たくないので翔君を応援します!(自分が虐めるのはいいゴミ)


 次回、『男女の友情は成立するか?』

 

 一般論では成立しないらしいですね←。でも、それだけが全てではないということだけは誤解なきよう。

 私も百合が無くなったり否定されたら悲しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ