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エンド・マトリックス  作者: むら猫
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第1章:日常生活

皆の案と期待を裏切り怪文書と化した小説



梧桐浩二は幸せな家庭をもつ普通のおっさん!

世間はなんだかおかしいけれど

今日もタイヘンなお仕事頑張ります☆

戦争、それは遠い所の出来事

少なくとも私達は戦争には関係ない人間だ。



私の名前は 梧桐(ごとう) 浩二(こうじ)

どこにでも居るような30近い男。

趣味と呼べるような趣味は無く、

仕事も見栄を張れる大企業に務めている訳でもない。

しかし…






『---午前七時をお知らせいたします』


カーテンが閉まった薄暗い部屋の中に

電子音を鳴らしながら時刻を言うロボットと

ベットの上で布団にくるまった男がいた。




「…朝か…」


寝返りをうちつつ顔を拭う

あと数分だけでも寝たかったが

それを許す物はないようで、

ロボットは電子音を鳴り響かせる。


布団を払い立ち上がる。

既に隣のベットには妻の姿は無く、

あるのは時刻を知らせる家庭用ロボットだけだ


私が起きたのを見たロボットは水が入った

コップを差し出して来る、

水を飲み、カーテンを開けると、

太陽はその顔を覗かせ、朝が始まっていた。






「「いただきます!」」


元気な掛け声と共に食卓が始まった

私と妻と娘の3人での楽しい朝食である。


『…帝国での内戦は活発する動きを見せており合衆国は本格的な介入を…』


ニュースキャスターが大袈裟に伝える

テレビのニュースを流し見しながら

朝食を掻き込んでいると

娘が人参を皿の隅に寄せながら言ってきた。


「パパー!アニメみたーい!」


苦笑しつつチャンネルを回しつつ話す。


「わかったわかった…だけど野菜も食べないと大きくなれないぞ?」


「むー…でもニンジン美味しくないもん…」


頬を膨らませ、ささやかな抵抗をする娘を見ながら妻が笑う


「ふふふ…葵ったら」



梧桐 葵、それが娘の名前だった。

時は西暦2114年、

人類の増加とテクノロジーの発展は

美しかった自然を破壊し、

今や自然と呼べる自然は保護された区域しか

存在しないものになっていた。





私は小さい頃から自然が好きで休みの日には

毎回植物園や自然公園へと行く程に好きだった


アスファルトに咲く雑草でも無く

店に並べられた綺麗な造花でも無い

ありのままのみずみずしく生き生きした草木、

そして花がとても好きだった。


それは歳を重ねても変わらず

アルバイトの小遣いまでもをそういった場所へ

行くために使う程だったのだ。


暇だった時も何かの記念日にも

悲しかった時や辛かった時にも

そしてデートの時も…




『---浩二さん…この花は?』


『これは…花縮砂…ジンジャーリリーだね』


『ジンジャーリリー…素敵な香りね…』


『この花の花言葉は…慕われる愛…そして…

豊かな心…豊美さんにぴったりだよ』


『まあ… 浩二さんったら…』



今思い出してもとても甘い日々だったと思う。



『あら?この隣の木は…』


『これは…アオギリ?おかしいな…

生息していた気候は近いけどもうちょっと温度が低い場所にあるはずだけども…』


『植物園の人が間違えたのかしら?』


『そうかもしれないね…』



特に強烈に覚えているのは本来亜熱帯に生息していたアオギリが熱帯の植物エリアに植えられていた事だ。



『なんだかこのジンジャーとアオギリ…

寄り添いあってるみたい』


『ああ、そう見えるね』


『そういえば浩二さんの名字もアオギリ、って読めないかしら?そしたらこのジンジャーと

一緒のアオギリ…私たちみたいね』



そう囁いた彼女の頬はいつもより赤く見えた。




そして新婚旅行でも勿論世界最大の自然公園へと二人…いや……三人で出かけたのだった。



一通り海外と自然を満喫した最終日


『---とても楽しかったわね…』


『…ああ、また来よう、何時でも何度でも』


『ふふふ…次はこの子にも見せてあげれるわね…』



その時の妻のお腹には小さな命が宿っていた。



『自然が好きになってくれるといいな…』


『……ねえ、この子の名前…まだ決めないの?』


『うっ…』



私には一つだけ重大な欠点がある


それは重要な事を後回しにしてしまう

困った癖があるのだ



『私ずっと考えてたの…自然を愛せるような…

自然に愛して貰えるような名前が良いって』


『自然…』


『葵…って名前はどうかしら』


『葵…とってもいい名前だ…』


妻のお腹に手を当てて囁く


『葵…自然は大切だ…自然無しでは人間は生きてはいけない、自然と共に生きて自然と共に歩まねばならない、今の自然が減りゆく世界でも葵ならきっと…』


『浩二さん?』



難しい話はダメですよ、と優しく諭された





そんな事を思い出しながら更にご飯に手を付けているとロボットが電子音を鳴らす。


『御主人様、そろそろ出発のお時間となります。』


楽しい時間はあっという間だなと、

残りのご飯を口に詰め込み席を立った。



カバンを手に、玄関で振り返る


「それじゃあ、行ってくるよ。」

「パパ!早く帰ってきてね!」

「行ってらっしゃい、あなた。」


辛い仕事への1歩は非常に軽やかな物となった





駅に着き、改札へ入ろうとすると、

拡声器による大きな音が飛び込んで来る。


『今の政府は戦争への道を走っています!世界が一触即発の状態だというのに軍備を進めているのが紛れも無い事実なのです!今こそ我々の党の…』


…どうやら次の選挙に向けた街頭演説だったようで、道行く人々は見向きもせず己の目的地へと向かって行く。


(なにが戦争だ…馬鹿馬鹿しい…)


浩二はそう思いながら周囲の人々と同じ様に改札へと吸い込まれていった。





「おはようございます。」

「ああ、おはよう、梧桐さん、

いきなりなんだけど今朝のニュース見ました?」


会社に着き、社交辞令な挨拶を済ませた所で

上司が世間話をふってくる。


「ニュース? えっと…記録的な猛暑が~

って所ですか?」


「いや、そこじゃなくて…帝国の内戦の奴、

情勢が不安定になって来てたけど合衆国がこうも大々的に入ってくるとはねぇ」


「は、はぁ…」


上司の口から飛び出すのはあまり平和的とは言えない内容だった。


なになに派が云々だとかあれあれの出来事が~

だとかよく分からない話だ。

とりあえず相槌を打ちつつも内容は頭を通り過ぎていった。


「……とまぁ 梧桐さんもこの事についてはよく勉強しておくといいよ、もしかしたら無関係ではいられなくなるかもしれないし」


「…分かりました、時間がある時などに調べたりします…」


じゃあ、と去っていく上司を見つつ席に座る。


(…書類整理しなくては…)


残念ながら世間話は仕事に入らないので

過ぎた時間を取り戻す様にやり始める。

そうしているうちに、浩二の頭から

先程の事は消えてゆくのだった。




空が黒く、街が明るくなり始めた頃、

浩二は約半日ぶりの我が家の玄関に立つ。


鍵を開けドアを開けると-


「パパ!」


とたとたと元気な声と可愛い娘がお出迎えして来る。


「ただいま」


にっこり笑うと素敵な笑顔が話す。


「おかえりなさい!」



「今日は幼稚園でねー」


「ハハハ リビングで話そうか、

きっとママも聞きたいだろうからね」


リビングで待っている妻の元へと向かう


忙しない日常だが確実にここには幸せがある。

そしてこの幸せはずっとずっと続いていくのだ




『…合衆国は帝国に対して宣戦を布告、

正式な戦争へと発展しました…』




そう、何があっても私達は…




『…連邦は帝国側に付くことを発表、

合衆国への攻撃を開始しました

情勢は悪化の道を辿っており、我が国は

合衆国に対する人道的支援及びに…』




私達はずっと…




『我が国は合衆国側に付き、帝国側陣営との戦争を終結させる事を発表、戦闘状態に入ります、国民の皆様は直ちに政府より公表される国営放送をお聞きください。繰り返します…』



私…達は…




旅始まってないやん

どうしてくれんのこれ?


A.前書きみたいなものやし…(震え声)

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