七話 追いかけっこ
次は明日です。
ドタドタと、化け猫を追いかける。
此奴っ!
見た目は子供の様で足が速いっ!
この自分が追い付かないだとっ!
幾ら片付いているとはいえ本棚や炬燵にごみ箱など障害物が有る状態でこの速度っ!
尋常でないっ!
「ふふっ! 捕まえられるなやってみなっ!」
アッカンベー。
舌を出しながら馬鹿にする化け猫。
何かムカつく。
「言ったなっ! 化け猫」
「化け猫ではないっ!」
売り言葉に買い言葉言い返す化け猫。
凄いムカつく。
「御前なんか化け猫で十分だっ!」
「しゃあああああっ!」
逃げながら毛を逆立てて威嚇する化け猫。
「あのう~~薫さん?」
祥子が何か言ってたが後回しだ。
何か呆れていたような感じがするが気のせいだろう。
「薫さん~~」
祥子の声が聞こえるが気にしないでおく。
台所から居間。
居間から二階の階段へ。
ドタドタと走る。
くそっ!
このままでは近所迷惑だ。
というか化け猫は子供かっ!
二階への階段を上り正面から右の部屋に入る。
「甘いっ!そっちに行けば此方にしか……」
その部屋に入れば左の部屋に行くのは分かり切ってる。
なら自分は左の部屋の出口に行けばいい。
そこで捕まえれば良い。
――筈だった。
キュッ!
化け猫は体を沈めズザアアア——と、勢いを殺すと静止する。
まさかあの勢いを殺して止まったのかっ!
人間には出来ない芸当だぞっ!
しまったっ!
此奴は人間ではなかったっ!
「甘いのはどっちかな?」
ニヤリと笑う化け猫。
左の部屋に行こうとしたのはフェイント。
化け猫の視線の先に有るのは階段。
「ちっ!」
本命は階段の方か?
しまったっ!
「ふっ!」
ニイイ~~と、笑う化け猫。
体の向きを階段の方に変える。
そのまま跳躍っ!
およそ人では有り得ない跳躍力。
何という瞬発力にバランス感覚。
流石は化け猫っ!
完全に出し抜かれたっ!
敗因は此奴の外見に騙された事だ。
くそっ!
そのまま一階に戻り何処かに隠れるつもりか?
いや一階には祥子が居る。
潜伏場所は直ぐに分かる。
ならば人質?
いやあの細腕で出来るはずがない。
違う。
馬鹿か自分は。
相手は化け猫。
人外の存在だ。
見た目道理とは言えない筈。
しかし祥子も座敷童。
同じ人外だ。
タダでは捕まらない筈。
となるとそのまま外に逃げて再起を図る気か?
しかし目的が分からない。
何の為に侵入したか分からない。
いや待て。
そう言えば寄生したいと言ってたな?
なら万が一祥子が捕まっても交渉次第では何とかなるか?
いや待て。
待て待て。
おかしいだろう。
何で化け猫が人質を取ることが前提になる。
————混乱していてるな自分……。
外に逃げるかもしれないし。
分からない。
まさか唯の物取りか?
正直に答えてくれるとは思わないが聞いてみるか。
「化け猫何をしに来た!?」
「御飯を盗み食いしにきました」
ツルッ!
此方に顔を向けた瞬間、足を滑らせる化け猫。
そのまま一回転する化け猫。
「「あ……」」
ゴス。
階段の角に頭をぶつける。
「えっ?」
ゴロゴロ~~。
「あああああっ!」
ガンッ!
化け猫は階段を踏み外して転び頭を床に叩き付けた。
自分の目にはそう見えた。
「キュウ~~」
グッタリと力なく倒れる化け猫。
「……」
ヒョイ。
伸びていた化け猫を猫掴みする。
顔を覗くと本当に目を回してるみたいだ。
勝った。
という事だろうか?
何だろう此の虚しさは……。
釈然としないんだが……。
というか盗み食いする為に不法侵入したのか此奴は?
どうやって侵入したのやら……。
「だが勝ちは俺だ悪く思うな」
「何やってるんですか~~薫さん~~勝ちって?」
そこへ現れる祥子。
呆れた目で自分を見る。
「ひっ! し……祥子? 違うんだ此れは……」
「良い年した男が何をやってるんですか」
「いや……はい」
冷静になったら何か恥ずかしかった。
きゅう~~と、目を回してる化け猫を床に転がして反省するのだった。
では明日。