十九話 貧血
後は完結迄二話の予定
「いやああ死にたくないのっ!」
「失敬な~~死なないさ」
暴れまわる化け猫に優しい笑顔を向ける自分。
「嘘だあああっ!」
「本当さ御前を飼ってくれる奇特な飼い主が居ればな」
「いやああっ! 居ないもんっ! 私みたいなニートを養ってくれる奇特な人は」
分かってるじゃないか。
「御前自分で言ってて虚しくない?」
「うん」
其処は素直に頷くな情けない。
「あのう~~流石に野良とはいえ目の前で保健所に連れて行くのは止めて欲しいんですが……」
「あ……」
此方を恐る恐る見ながら懇願する少女。
そういえば野良猫に餌をやってる人の目の前で話す内容ではないな。
◇
自分の説明に納得する少女。
自分がした言い訳は次の通り。
猫が家に無断侵入して食べ物を勝手に漁って暴れ回ったという事だ。
完全に嘘ではないが本当でもない。
何しろ猫ではなく化け猫だし。
その話で野良猫に無体な事をする不審者のを見る目から同情に塗れた顔になる少女。
嘘をあっさり信じたぞ……この子。
頭は大丈夫か?
まあ家に無断侵入されたことは本当だし。
餌もかってに取られたことも本当なので全部が嘘ではないが……。
「そうなんですか~~御兄さんの所に図々しく此の野良猫が餌を強奪してるんですか」
『あったわね~~』
御婆さん~~相槌を打っても御孫さんには分からないよ~~。
「そうなんです。もう~~ハッキリ言って何度捕まえて折檻しようかと思いまして」
「ひっ!?」
自分が猫掴みしてる化け猫を見て笑う少女。
というか此の子も化け猫が見えるのか……。
しかも野良猫として。
意外に多いな見える人。
『あらあら~~』
なのに御婆さんは見えないのか?
まあ~~自分には関係ないけど。
「ちょっとおおおっ! 私そんな事をしてないんですけどっ!」
はっはっは~~。
ニャアア~~ニャアア~~五月蠅いぞ~~。
化け猫。
人の言葉を喋れ。
まあ~~無視してるだけだが。
「わかります」
「はい?」
何か深く同意してくれる。
その様子に首を傾げる。
「その気持ち凄く分かります」
「はあ?」
うんうんと、頷く少女に戸惑う。
「以前餌を上げてたら家の自動車の上に粗相されて嫌な思いをしたんです猫に」
「はい?」
「ボンネットの上に糞とかオシッコとかされて本当に頭にきたんですっ!」
「お……おう……」
ま……まあ~~それは普通の野良猫だろう。
化け猫は関係ないよな?
そう思い化け猫を見る。
「……」
ダラダラ。
嫌な汗を流しながら目を逸らしていた。
マジですか……。
御前……猫神と言ってなかったか?
神としての誇りはどうした。
「そういえば此処での野良猫の餌は貴方が?」
「あ~~実は最近までは御祖母ちゃんが面倒を見ていたんです」
「へえ~~あのう~~失礼ですが御婆さんは?」
自分の言葉に悲しそうな顔で俯く。
「ひき逃げで……」
「あ~~」
その言葉と共にジワリと涙が出てくる。
「そのまま病院で息を引きとりました」
「すみません」
「いえ」
その言葉に幽霊の御婆さんが寂しそうな顔をする。
「ひき逃げ犯は捕まってないんですか?」
「はい」
シクシクと泣く少女に言葉を掛けられない。
家族を失う気持ちは分かる。
自分もそうだったから。
『御免ね五月ちゃん……』
まただ。
また悪寒がする。
『貴女も向こうに着いていく?』
その時だった御婆さんんが少女の頭に触れたのは。
無論触れられるという訳では無い。
素通りする。
先程と同じように。
しかし不可解な光景を見る羽目に成った。
触れる御婆さんの体から黒い靄が溢れ出す。
それは何となく良くないものと感じられた。
嫌な汗が流れる。
「不味いな~~予想より進み具合が速いな~~」
何か化け猫がブツブツ言ってるが聞き流しておく。
それよりもだ。
御婆さんが触れた場所から何か光る物が漏れだす。
何かが。
光る何か。
それは明らかに無くなってはいけない物と言うのが本能的に理解できた。
「う……」
顔を青ざめる御孫さん。
なんだったんだ?
いや今は此の子だ。
「大丈夫か?」
「すみません貧血みたいです」
倒れそうになった彼女を支える自分。
驚くほど軽い。
見た目の割に異常なまでに軽い。
顔を覗き込むと先程と違い青ざめた表情をしていた。
生気が感じられない。
顔が青ざめてるのを通り越して土気色だ。
ゾワリ。
その時だった。
悪寒が再び感じられたのは。
「え?」
先程まで感じる事の無かった異常な寒気。
確かに肌寒さこそまだ感じる此の季節。
寒く無いと言えば嘘になる。
しかし此れはそれらとちがう種類の物だ。
風邪と違う不快な寒気。
骨の髄まで凍り付く様な此の感覚。
今まで感じた事が無い物だ。
重度のインフルエンザに罹った事が有る。
だが今回は其の比ではない。
まるで工場の凍結庫の数倍有る寒い場所に連れてこられた感じだ。
発生源を確認した。
いや正確には違う。
最初からそれに見ていたはずなのだ。
それを見ていながら信じられず心の中で否定していたのだ。
その存在を。
其れは彼女の背後に現れた。
いいや違う。
先ほど言ったが見ていながら否定していたのだ。
その存在を。
『……あ~~痛い~~』
黒い。
どす黒い何かに成り果てた。
御婆さんを。
崩れて原型を留めない物体。
まるで腐り崩れた果物のような存在に。
『あ~~~あ~~~死にたくなかった~~』
動くたびに御婆さんの体がグズグズと崩れる。
其れはまるで
明らかに異常な姿だった。
黒い靄が全身を覆い緩慢な仕草で体が揺れていた。
あ。
ああ。
あああ。
あああああああああ。
怖い。
怖い。
怖い。
ガチガチと気が付いたら歯が音を立てる。
何の音かと思っていた。
自分の歯の音だ。
恐怖で音が鳴っていた。
それは本能的な恐怖を呼び起こす何か。
『痛い』
此れは。
此れは何だ?
此れは何だ?
人ではない。
此れは。
此れは何なんだ?
怖い。
怖い。
何だ此れは?
ズルズルと崩れた体を引きずる御婆さん。
最早人の形を留めてない。
『あ~~』
それは未だに原型を留めている指を此方に向け招く仕草をする。
体が動かない。
恐怖で動けないのだ。
不味い。
不味い。
此奴に捕まったら何かが終わる。
そう感じた。
恐らく御婆さんは何らかの原因で悪霊と化したのではないか?
ふとその考えが思いついた。
それは恐らく正解だ。
眼前の光景を見れば分かる。
御孫さんが倒れたのは恐らく生気を吸われのが原因だろう。
何故御婆さんが御孫さんを襲ったのか分からない。
だが襲われたのは事実。
目の前の現実を受け入れるしかない。
それはゆっくりと近づき自分の足を掴もうとした。
——筈だった。
「ヴニャアアアアアンっ!」
バシュ!
何か呆気なく悪霊と化した御婆さんが金色の光で消え去った。
「は?」
目を点にして固まる自分。
何が?
そう問いたい。
「う~~ん。やっぱり悪霊化したか~~浄化できたし」
そして此の状況を成し遂げたのは化け猫みたいだ。
雰囲気ぶち壊しである。
シリアスを返せと言いたい。
「何をやった?」
「え? 御仕事だけど……面倒だけどね」
此方を不思議そうに見る化け猫。
「仕事って?」
睨みながら訪ねる。
「え~~と無念の思いで死んだ人が四十五日内で成仏出来ないと悪霊になるの」
「それで?」
「そういった悪霊は生きた人間に災いをもたらすから浄化するのが御仕事」
「御前~~今まで仕事を嫌がってたじゃないのか?」
「うん悪霊て醜い上に汚いし神力を使うと物凄く疲れるから嫌なのよ」
「……だから仕事をしたく無いと」
「うん出来れば遊んで暮らしたい」
それは最初から分かってた。
頭痛い。
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