十五話 忠告
本日二話目
『それでは御元気で』
透けて見える御婆さんに手を振りながら、その場を離れたのは更に二十分後の事だった。
遅くなった……。
祥子への言い訳どうしょう?
「ええ~~また」
あの後更に追加で御説教を受けたが暫くしたら許してくれた。
人間真摯に謝れば通じない相手など居ない。
幽霊だけど。
人間ではなく幽霊だけど。
「ねえ?」
「何だよ化け猫」
「……もういいわ化け猫で」
何か諦めた顔で溜息を付く化け猫。
素直だな。
今までの事が有って、はっきり言って気持ち悪い。
「大の大人が土下座ってみっともないんだけど」
「ゲフンッ! ゲホゲホッ……」
変な所に唾液が入って咽た。
うわ~~と、蔑んだ目で見る化け猫。
「し……仕方無いだろうが、あの御婆さんに猫を保健所に連れて行くって言ってしまったんだし」
「ふう~~ん」
目を細める化け猫に怯む。
「何だよ、その目は」
「別に~~私以外の猫には優しいんだね」
嫉妬しちゃうぐらい羨ましい。
そんな風に言ってるようにも聞こえる。
いや化け猫が何を言ってるんだろうかと言いたい。
「普通の猫ならな」
「私は?」
指を自分の顔に差す化け猫。
「化け猫」
「もういいです」
深々と溜息を付く化け猫。
「そうかい」
「ねえ?」
「何だよ」
「もうあの公園には近づかないで」
「はあ?」
化け猫の言葉に思わず首を傾げる。
「良いから」
「やだよ~~あそこは家への近道何だぞ」
「そう」
「そうだよ……うんで何でそんな事を言ってるのさ」
「別に~~嫌だけど~~御仕事をしなければいけないから」
「はあ? 御前……仕事をしたく無いと言ってただろうに」
「そうなんだけどね~~気が変ったの」
「何でまた?」
「あの御婆さんも為……いや……違うかな……義務かな?」
「義務?」
「四十五日何事も無ければ良いんだけどね……」
「なんの事だ?」
「貴方は知らなくていい」
貴方ね……。
妙に突き放した言い方だね。
先程までグイグイ来ていた癖に。
雰囲気も少し違うな。
何か先程とは違い冷たい感じだな。
「其処まで言っておいて何だよそれ?」
「あ~~説明出来ないのよ分かってよ~~」
「はあ?」
「貴方はどうも此方側に足を踏み入れつつあるの」
「此方側?」
「逢魔が時、怪異、神霊。呼び方は色々有るけど本来は目に見えない世界の事」
「はあ?」
「貴方は何が原因か分からないけど波長が合い此方の世界に足を入れつつあるの」
「だから何?」
「このままでは何か良くないことが貴方に起きるかもしれない」
「だから?」
「その前に本来は目に見えない存在との接触は避けた方が良いは」
「例えば私や幽霊の御婆さんとか座敷童とかね」
「祥子と別れろというのか?」
「可能ならね」
「何でまた?」
「深淵を覗くものは逆に見られる」
「はあ?」
「本来人ではない物と長く関わると怪異に出会いやすくなるの」
「意味が分からない」
「つまり祟られたくないなら本来目に見えない物とは接触をしないようにしろって言ってるの」
「何でまたそんなことを言う訳?」
「それを言う義務があるの元猫神として」
義務ね~~。
まあ奇しくも自分が祥子に似たようなことを言ったな。
確か此奴は良くない物だと。
それが化け猫からも言われるとはね~~。
「少なくとも化け猫は積極的に関わった気がするが?」
「……」
顔を背けやがった。
それはそうと此奴に似合わない言葉だ。
ダラダラと家で遊んでる姿しか思い浮かばないね此奴は。
「はあ? 意味が分からないんだけど」
「忠告はしたよ」
「はあ?」
「じゃあねもう二度と会う事も無いでしょう」
そのまま手をひらひらと振りながら化け猫は去っていく。
一人残された自分は茫然と見送るのだった。
颯爽と去る姿は今までの化け猫を感じさせない物である。
……何か強引にまとめやがった。
化け猫の癖に。
二十分後。
「御魚さん~~美味しいな~~♪」
ゴミ箱を漁る化け猫。
「……」
何も言えなかった。
アレだけもったいぶって別れたのに何だろう此の間抜けぶりは……。
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