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十三話 幽霊

評価をお願い致します。

 あうう~~と痛みを堪える化け猫を見下ろす自分。

 何か色々ぶち壊しだ。

 さっき迄の異様な雰囲気が台無しである。

 其れが良いのか悪いのかは兎も角。


「痛いいいいっ! 何するのっ!」


 涙目ながら振り返り自分に抗議する化け猫。


「何をやってる?」


 冷淡な声が出たことに自分ながら驚くが先ずは目の前の現実だ。


「あ」

 

 自分の顔を見て硬直する化け猫。

 ギッギィ~~と首を横に向ける。

 まるで油を差してない機械のようだ。

 何やら嫌な汗が化け猫から出ている。


「な・に・を・やってる」


 此方を見ないのでワザワザ化け猫の目線に合わせるように移動する。

 

「あ~~」


 覗き込む自分の目から更に視線を逸らす化け猫。

 その頬からは更に嫌な汗が流れてる。


「何をやってるかと聞いてるんだが?」

「あ~~御昼件夕飯を貰ってます」


 観念したのか渋々話す化け猫。


「御婆さんが野良猫に上げてる餌を横取りしてか?」

「そうともいう~~」


 視線を泳がしながら答える化け猫。

 ほう。

 携帯を取り出して番号を打ち込む。


「あのう~~どこに御電話をしてるんですか?」

 

 冷汗を流しながら訪ねる化け猫。


「保健所」


 ボソリと呟く自分。

 まあ~~目の前の化け猫を捕まえられるかどうかは分からないがね。

 嫌がらせぐらいにはなるだろう。

 化け猫にとって。


「やめてええええええっ!」


 悲鳴を上げながら縋りつき携帯を奪おうとする。

 甘いはっ!

 身長差を考えろ。

 というか此の様子だと普通に保健所でも捕まえられそうだな。

 化け猫が。

 見える相手が居るんだろう。


「止めてっ! 御飯を貰ってるだけじゃない貴方に迷惑を掛けて無いでしょうがっ!」

「五月蠅いっ! 良い年した奴が野良猫の餌を横取りしてんじゃねえええっ!」

「殺生なっ! 元はと言えば貴方が養ってくれないからでしょうがっ!」

「図々しいにも程が有るッ! 一度死んで人間に生まれ変わって自分の食い扶持を稼げやっ!」

「残念でしたっ! 私や、あの座敷童は一度死んで神になってるのっ! 人間には暫く転生できないわっ!」

「なら転生出来るまで何度でも見つけて保健所に連れててッてやるわっ!」

「いやあああっ! 此の殺人鬼っ! じゃなくて殺猫鬼っ! 誰か助けてえええっ!」

 

 最早カオスで有る。

 第三者が見れば極悪非道と罵られそうな光景だ。

 但し化け猫が見える者が居たとしても普通の猫にしか見えない。

 その猫が野良猫の餌を横取りするという暴挙を止めるためだ。

 保健所に捕まえてもらうのは仕方ない。

 うん。

 正当な理由だ。


 だから此れは別に非道ではない。

 合法なのだ。


 何処が?


 ——等と言ってはいけない。

 

 近所迷惑を掛ける化け猫を始末するだけという大義名分があるのだ。

 だから此の化け猫は始末した方が世の為人の為。

 ましては猫の為だ。


「何処がよおおおおっ!」

「あっ……心で思ってたことが漏れていた」


 まあ良いか。

 聞かれても問題ないし。

 

「漏れてたって……そんな恐ろしいことを考えてたのっ!?」

「後は有言実行有るのみ」

「実行しないでええええっ!」

「断るっ!」

「いやああっ!」


 等と化け猫と言い合うこと暫し。


『あの……』

「「何っ!?」」


 殺気立ってる自分達に恐る恐る声をかける老婆。

 あっ……忘れていた。

 というか今までその存在を忘れていた。

 この老婆は恐らく幽霊。

 今までの出来事を見た自分の考えが正しければの話しだが。

 恐らくだが……。


 物を触れられない。

 それによく見れば老婆自身が透けて見える。

 後ろにある公園の木が見えるから確実だ。

 初めて見る幽霊。

 今まで見たことが無いのに何で?

 しかしその前に問題が有る。

 此奴が悪霊なのか、そうでないのか?

 悪霊でないなら其れでもいい。

 害が無いならサッサと此の場を離れれば良いから。

 問題は悪霊だったらだ。

 下手すれば悪さをするかもしれない。

 最悪なのは憑かれるかもしれない事だ。

 どんな影響が有るか分からない。

 悪霊に取りつかれた事が無いからだ。

 だが映画なので見たことが有るので想像がつく。

 一番最悪な展開は憑かれて衰弱死してしまうとか。

 或いは狐憑きみたいな感じで精神病に入れられてしまうか。

 考えるだけ恐ろしい。

 何とか隙を伺い逃げる算段を考えなければっ!


 

『あ~~』



 ビクリッ。

 思わず体が震え硬直する。

 嫌な汗が出る。

 視線だけ化け猫を見ると平然としていた。

 此奴も神(笑)という超常の存在だからか余裕な感じだ。

 保健所に電話すると言っただけで泣きを入れていた癖に。

 

 どうする?

 

 嫌な汗は背筋から流れっぱなしだ。

 

「おやおや~~震えちやって~~どうしたの?」

「……」


 自分の様子に気が付いた化け猫が自分を嘲笑う。

 

 ピシッ。


 自分の中の何かが切れた感じがした。


「もしかして初めて見た幽霊が怖くて黙ってるのかな~~」

「……」

「プ~~クスクス散々私を貶しておいて幽霊に遭った程度で此の体たらく笑える~~」


 ピシ。

 ピシ。


「仕方無いな~~此処は元神様でも有る私が助けてあげようかな~~」

「……」


 ピシ。

 ピシ。

 ピシ。


「でもタダでは嫌ね~~御礼に養ってくれたら……」

「保健所に通報するか」

「いやあああああああっ! 何でえええっ! 命が惜しくないのっ!」


 自分の言葉に絶叫する化け猫。

 

「死なずば諸共という言葉があるよな?」

「ひいいいいいいいっ!」


 ニイイ~と我ながら良い笑みを浮かべたと思う。

 自分の言葉に恐怖の声を上げる化け猫。

 どこぞの絵画の様な表情だ。


「待ってっ!」

「いいやっ! 待たない」

「それだけは待ってっ! そうだ通報しなかったらたタダで助けてあげるっ! どう!?」

「こんな化け猫の世話になる位なら死んだ方がましだっ!」

「いやあああああああっ! 此の人間本当に携帯を掛けてるっ!」

「ハッハッハッ! 覚悟しろっ!」

「いやあああ止めてっ!」


 さて後は最後のボタンを押せば通報できる。



 ゾクリ。


 何か冷たい物で肩を掴まれた感触がした。

 その拍子に指が止まってしまう。


 恐る恐る見ると幽霊の御婆さんに捕まれていた。


 

『ア~~』



 ヤバイ。

 ヤバイ。

 ヤバイ。


 改めて見ると予想以上に怖い。

 皮膚が裂けて肉が見えているという訳では無い。

 骨が折れ突き出しているという訳では無い。

 唯透けてみえる。

 それだけの存在。


 幽霊。


 

 異形。

 異常にして異質。

 不自然にして超常の存在。


 祥子は良い。

 座敷童とは言え人にしか見えない。


 化け猫は良い。

 猫耳と尻尾が見えるが間抜けな感じだし。


 だが目の前の幽霊は違う。


 冷たく生きた心地のしない感触。

 生物に見えない外観。


 それが生理的な嫌悪感を滲み出させる。


 それとも原始的な感情を呼び起こすと言うべきか?

 

『貴方たち……』



 その時だった。

 肩を掴まれたのは。

 生気が抜かれるような感覚がした。

 何だ此れは?


 此れは何だ?

 思考が追い付かない。


「フシュウウッ!」


 唸り声がしたのでその方を見ると化け猫が御婆さんを威嚇していた。

 目の色を変化させて。 

 黒から黄金へと変化している。

 それは神秘的な何か。

 其れだけを見れば本当に神だというのに納得できる。


 神々しい何かが溢れている。

 それは周囲に満ちていた。

 神々しい何かの正体は分からない。

 しかし目的は分かる。

 御婆さんだ。

 化け猫が看過出来ない何かに(・・・)変化した為にこうなったんだろう。

 それは恐らく化け猫は此の後、御婆さんを襲うだろう。

 恐らく何かに成ることを恐れて。

 それは次の瞬間の出来事だ。

 それは実行される。


「しゃあああああっ!」


 そして……。


















 


『近所迷惑何ですが静かにしてください』

「「すみませんでした」」


 御婆さんんの至極最もな事を言われました。

 二人して正座してからの土下座です。

 土下座。

 神と人の土下座。

 シュールだ。

 

「化け猫~~先程までの神々しさはなんだったんだ?」

「いや何となく威嚇したほうが良いかな~~と、習慣かな?」


 自分に聞いてどうする。

 知らんがな。


『そこっ!? 何を話してるのっ!』

「「済みませんっ!」」

『声が大きいっ!』

「「はい~~」」


 へへ~~と土下座する自分達だった。

 

 

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