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十一話 勘

四話目

 居間に着いた自分は時計を見る。

何時もの出勤時間までニ十分ある。


「後二十分か」

「あ~~薫さん」

「何だ?」

「昨日遅番だったんで又寝ますね」

「……」


 思わず沈黙した。

 いや会話としては普通なんだが……。

 あれ程の事が有ったのに平常だ。

 化け猫の件はアレまで。

 そう考えてるんだろ。

 

「おう~~すまんなワザワザ自分の朝食に合わせて起きてくれたんだろう?」

「いえ……まあ~~」


 目が泳いでる。

 違ったのか?


「まあ良い自分も話が有ったし良いだろう」

「話って?」


 自分の言葉に目を丸くする祥子。


「あ~~言うべきか迷よったが言った方が良いかもしれないな」

「何がです?」

「あの猫の事だ」

「猫神様の事ですね」

「あれは猫だ」

「はい?」

「猫だ」

「……もう猫で良いです」

「そうか」

 

 頭痛を堪える祥子を見ながら頷く。


「信じるかどうか分かりませんがアレは良くない物だ」

「良くない物ですか?」

「ああ」

「根拠は?」

「勘」


 目を丸くする祥子。


「……さて新聞でも見るかな……」

「祥子無視するのは酷いと思う」


 あからさまに此方を無視する祥子に非難する自分。


「信じてますよ恋人だし」

「信じてないじゃないかっ! 新聞何か読んでっ!」

「ははは~~うん?」

 

 半笑いの祥子。

 良い性格をしている。


「どうしたんだ?」

「新聞に赤丸がしてあるな~~江戸さんがしました?」

「いや」

「なら……あの猫神様か」

「ふむ見せてくれ」

「はい」


 内容はどれも交通事故とかだな。

 此れは近くだな。

 まさか……。


「え~~と」

「何処に行くんですか?」

「古新聞を入れた段ボール箱を見に行く」

「何でまた?」

「少し気になった事が有るんだ」


 そう言って自分は台所の隅に有る古新聞を入れた段ボールを漁る。


「此れも、此れもだ、それに此れも」

「どうしたんですか? 薫さん」


 自分の発言に戸惑いの言葉を向ける祥子。


「いやあの猫……交通事故の記事や不審死、保険金目当てに死亡した人の奴に赤丸をしてるんだ」

「それはまたどうして?」

「いや~~分からない……そういえば……あいつ朝起きた時にニュースを見ていたな」

「それがどうしたんです?」

「あ~~いや自分でも何言って良いか分からない」

「はあ~~大体ですね~~」


 何か祥子が言っていたが頭に入らなかった。

 あの化け猫の事が気になる。

 そういえば化け猫が少し気になることを言ってたな。

 仕事をしないで遊んでたから最高神様に置き捨てられ棄て(・・・・・・・・)られたと。

 ホームレスみたいな今の状況を不満に思うなら仕事をする筈。

 なのにしていない。

 それほど嫌な仕事なのか?

 遊びに夢中になる位?

 いや違う。

 現実逃避していたんだ。

 遊びで。

 それ位キツイ仕事だったという事か?

 現実逃避したくなる位の仕事。

 現実逃避するぐらいしたく無い仕事。

 生活苦になってもしたく無い仕事。


 何の仕事(・・・・)をしていた?

 この新聞……テレビのニュースを見ていたのも仕事の一環?

 正確に言えば仕事をしていた時の癖。

 習慣なのか?


 ——まさかね……。


「薫さん一応は身の回りは気を付けていてくださいね」


 祥子の言葉に現実に戻る。

 あっヤバイ。

 話しを聞いてなかった。

適当に話を合わせるか。


「何で?」

「あの猫神の所為です」

「何でまた?」

 

 眉を顰める。

 おかしい。

 先程までそれなりに敬意を払ってたのに一変。

 僅かだが嫌悪感を抱いている。


「私の勘です」


 明らかに嘘だと分かる。

 一時期長い時間同棲していたんだ。

 祥子が嘘を付く時の癖は分かる。

 何か隠している。

 だけど聞かないようにするか。

 自分の事を思っての事だろう。


「勘っていい加減だな~~」

「先程同じことを言った人が目の前に居るんですけど……」


 はい済みません。

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